第2話 同じ顔の女
翌朝
味噌汁がいい匂いだ…。はっ、俺は昨日魚の煮つけをリクエストしてしまった。
「「おはようございます!二代目‼」」今日もテンション高い。
というのも、杏が作ったカレーに舌鼓を打っていたからだ。
「姐さんはカレーもうまいっス」
「本当ですか?自分でスパイス調合したからちょっと自信なかったんですけど…」
「市販のルゥを使ってないところがニクいですねー。うまいっすよ」
ん?味噌汁?
「光輝さんは…はい、リクエストに応えて。魚の煮つけ。主な骨は取ってありますよ」
――俺用に味噌汁だったのか…
「魚…うまいな。味噌汁も」
「二代目が魚をまともに食べるの見たのは寿司と刺身以外で初めてかも」
「光輝さん、魚も食べましょう?頭悪くなりますよ?」
――もうそんな年齢は越えてるだろう?
「それより俺もカレー食べてみたい。昼飯にカレーうどんみたいのできるかな?」
「カレーが余れば…だけど、この勢いで余るかなぁ?」
――うまいなら、ガンガン食べたいよな。わかる…
「いやぁ、寸胴鍋でカレー作るってなんか定食屋さんになった気分♪」
「姐さんの味ならお金取れるっス」
「俺常連になる」
「「俺も」」
「お前ら妄想で盛り上がるな!朝飯中だろ?」
「このうち、使ってないのに無駄に広いっていうか…。掃除はしがいあるんですけどね!」
楽しそうに廊下を拭き掃除している。小学生の掃除当番のようだ。…楽しそうってのが違うか。
「洗濯物も多くて、し甲斐がある!晴れてるとサイコー‼」杏がキラキラしている。
「杏、そんなに家事が好きなのか?」俺は聞いてしまった。なにしろ組員の分もあるから。
「今までは自分の分だけだったし、部屋も狭くて掃除なんてすぐ終わってたから」
――うーん、女性の一人暮らしってもっと殺伐としたイメージ。俺は産まれた時から組員がいたけど
組員は言う。「姐さんは楽しそうに家事をしてるんで、格闘の稽古っていっても邪魔したくないんす」
――分かるけどなぁ
「家事してくれてるし、俺が教えるよ。もちろん手加減する。道場でな」
「「二代目…ウッス」」
――杏には思う存分家事を楽しんでもらおう。俺も助かるし
一人の組員が言う。
「姐さんが二代目の姐さんだったら…」
――それは俺も万々歳だ。武力は控えてほしいが、女子力はいい!…っもちろんそのままの杏でもいいけど。って俺は誰に言い訳してるんだろう?
「私にそっくりな女ですか?」
――うわぁー!どこから聞いてたんだ?
「いますよ」の杏の声で一同が「へ?」となった。
「その人は私より弱いし、女子力はほぼないですね。顔はそっくりだけど(笑)」
「杏、そんな人間いるのか?」俺は思わず杏に詰め寄ってしまった。
「私の双子の姉?妹?気が強いからわかんなくなるんです」杏は苦笑いをした。
「つまり、顔だけ姐さんですね。女子力が魅力なんですよ!姐さんは!」
「姐さんは加えて、武力も兼ね備えているところがニクイッス」
「杏…その妹(?)はここに来てくれるだろうか?見てみたい。…じゃなくて、会ってみたい」俺は思わず本音が出てしまった。というか、心の声漏れていないか心配だ…。
「「俺らも好奇心あるっス」」
「私の言うこと聞いてくれるかなぁ?」杏…もしや姉(?)のメンツ丸つぶれてる状態…?
「あ…着信拒否られてる…」
――杏の妹は性格が強いな…。
「光輝さん?一回実家に戻っていいですか?直接会うしかないかと思って」
――俺もそう思う
「やむを得ないだろう?着信拒否はなぁ…」