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ショートショート8月〜3回目

ぼくを食べてくれるひと、いませんか~!

作者: たかさば

ぼく、ごはんつぶ!!


ようちゃんのほっぺたについてたんだけど…アタマにきたから、たびにでることにした!


ようちゃん、ごはんを食べるのがへたっぴなんだ……。

ほっぺについたり、おちゃわんについたり、テーブルのうえにちらばったり、ゆかにおちることもあるんだよ?!

きょうだって、ずっとほっぺたにいるぼくにきがつかなくてさ!!


ぼく、ようちゃんにはうんざりしてるんだ!

だから、やさしくていねいに、おいしく食べてくれるだれかをさがしにいこうっておもったの!


ぽちゅぽちゅ、ぽっちゅぽちゅ……

食べてくれるだれかをさがして、あるいていくと……。


あ、あのリボンのついたポシェットをもってるおんなのこは…ようちゃんのおともだちの、リカちゃんだ!!


このこ、いつもすごくきれいにきゅうしょくを食べるんだよね!

ゆっくりだけど、ていねいにおさじですくって、おくちにいれてくれるんだ!


よーし、食べてもらおう!!!


「ねえねえリカちゃん、ぼくを食べてくれない? おいしくたきあがった、ピチピチのおこめだよ!」

「ヤダ~、リカ、パンがスキだもん、いらない!!」


リカちゃんは、二つにしばったかみをフサフサさせながら…こうえんのほうにいっちゃった。


あーあ、ざんねん!!

べつのひと、さがそーっと!!



ぽちゅぽちゅ、ぽっちゅぽちゅ……

食べてくれるだれかをさがして、あるいていくと……。


あ、あのはくいをきているめがねのおじさんは…ようちゃんをみてくれている、びょういんの先生だ!!


先生、いつもすごくやさしくしんさつをしてくれるんだよね!

のどもむねもおなかも、ていねいにみてくれるから…きっときちんと食べてくれるとおもうよ!


「ねえねえ先生、ぼくを食べてくれませんか! しんまいで、すごくおいしいんだよ!!」

「ごめんね、僕メタボだから…ご飯は決めた分しか食べないことにしているんだよ」


先生は、おおきなおなかをゆさゆさゆらしながら…びょういんのほうにいっちゃった。


あーあ、ざんねん!!

べつのひと、さーがそっと!!



ぽちゅぽちゅ、ぽっちゅぽちゅ……

食べてくれるだれかをさがして、あるいていくと……。


あ、あのあかいエプロンをしているのは…ようちゃんがダイスキなまーるいタコヤキを作っているおばちゃんだ!!


おばちゃん、いつもすごいスピードでタコヤキをやくんだよね!

たぶん、いそがしくてごはんを食べるヒマがないんじゃないのかな?


よーし、ぼくのこと、食べてもらおう!!!


「ねえねえおばちゃん、ぼくを食べてくれない? よーくとがれて、しんせんなおみずでたいてもらった、ホクホクのごはんつぶだよ!」

「あたしゃ売れ残りのタコ焼きを食べないといけないんだよ…また買いに来ておくれってママにいっといておくれ!」


おばちゃんは、あかいエプロンをパタパタさせながら…タコヤキやさんのほうにいっちゃった。


あーあ、ざんねん!!

べつのひと、さーがそっと!!



ぽちゅぽちゅ、ぽっちゅぽちゅ……

食べてくれるだれかをさがして、あるいていくと……。


あ、あのあおいくびわは…ようちゃんとなかよしの、すぎたさんちのムクだ!!


ムク、いつもすごいいきおいでゴハンを食べてるんだよね!

たぶん、いつもおなかがすいてるんじゃないのかな?


よーし、ぼくのこと、食べてもらおう!!!


「ねえねえムク、ぼくを食べてくれない?ようちゃんがだいすきな、とってもおいしいごはんつぶだよ!」

「ワンワン、ボクはご主人様のくれたドッグフードしか食べないよ!」


ムクは、ふさふさのしっぽをぶんぶんさせながら…すぎたさんちのほうにいっちゃった。


あーあ、ざんねん!!

べつのひと、さーがそっと!!



ぽちゅぽちゅ、ぽっちゅぽちゅ……

食べてくれるだれかをさがして、あるいていくと……。


あ、あのほそながいしっぽは…ようちゃんのうちのゆかしたにいるネズミさんだ!!


ネズミさん、いつも食べものをさがしてはしりまわっているんだよね!

たぶん、ごはんが食べたくてたまらないんじゃないのかな?


よーし、ぼくの事、食べてもらおう!


「ねえねえネズミさん、僕を食べてくれない? ようちゃんのおかあさんがたいた、おいしいごはんつぶだよ!」

「ちゅー! あの奥さんが炊いた米?! まーたネズミ退治の毒でも入っているんだろう! そんなものを食べたら命が危ない! 絶対に食わんぞ! あっち行け!!」


ネズミさんは、長い前歯をガタガタさせながら…ゴミ捨て場にいっちゃった。


あーあ、ざんねん!!

べつのひと、さーがそっと!!



ぽちゅぽちゅ、ぽっちゅぽちゅ……

食べてくれるだれかをさがして、あるいていくと……。


あ、あそこにアリさんたちがいる!


なんだかとっても、忙しそう…なにしてるんだろ?


「ねえねえ、アリさんたち、僕を食べてくれない?」

「今忙しいんだ、あっち行け!!」

「お菓子を拾うのが先だよ!」

「甘いお砂糖いーっぱい!!」

「コメぇ? いらないよ!」


アリさんたちは、じめんにおちているおかしにむちゅうだ…。


ぼく、こんなにおいしいのに…だれにも食べて、もらえない。

なんだか、とっても…かなしくなってきた。


ポロリとひとつぶなみだがこぼれた、そのとき……。


「アーンアーン!! おなか、すいたよう!」


ようちゃんの、なくこえがきこえてきた!!

ぼくは、ぜんそくりょくで、ようちゃんのところにかけつけた!!


「ようちゃん、どうしたの?」

「あのね、おやつ、ぜんぶこぼしちゃったの。だから、もうないの。でも、おなかがすいたの」


ようちゃん、おなかがすいてるんだって。

ようちゃん、ぼくのこと、食べてくれるかも?


でも……。


「ぼく、ようちゃんのほっぺたについていた、ごはんつぶだよ」

「そうなの?」


「ようちゃんが食べてくれなかったから、ぼく、たびにでてたの」

「そうなの?」


「ようちゃんがきがつかなかったから、ぼく、かなしかった…」

「そうなの?」


「ようちゃんは…ぼくのこと、食べたい?」

「うん!」


「……ほんとうに?」

「うん!」


「これからは、ごはんつぶのこと、もっと・・・ていねいに食べてくれる?」

「うん、やくそくする!」


「じゃあ、ぼくのこと、食べていいよ!!」

「わーい!! いただきまーす!!」


にっこりわらう、ようちゃんのおくちのなかに…とびこんだ!!!


ぱっくん、むしゃむしゃ、……ごっくん!!


「ごはんつぶくん、おいしいよ!! たべさせてくれて、ありがとう!!」


おくちのなかにきこえてくる、ようちゃんのこえ。


「ぼく、これからはおちゃわんのごはんつぶ、のこさないでたべるね!」


のどのおくにきこえてくる、げんきなようちゃんのこえ。


「ぼく、ごはんつぶをこぼさないように、きをつけてたべるからね!」


いぶくろのなかにきこえてくる、だいすきなようちゃんのこえ。


「ごちそうさまでしたー!!!」


どういたしましてー!!!


ぼく、ごはんつぶにうまれて、よかった!

ようちゃんによろこんでもらえて、よかった!


じゃあ、いまから、ようちゃんのからだになるために、がんばってくるねー!!!


やくそく、たのんだよー!!!


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