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【電子書籍1〜2巻発売中】ダジャレ好きのおっさん、勇者扱いされる~昔の教え子たちが慕ってくれるけど、そんなに強くないですよ?~  作者: 歩く魚
おっさんと和の村

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行き先

新しい章に入りました!

 ケンフォード王国を出発してから数日が経過した。

 俺が山を出てから今までは何かと騒がしく、こうしてルーエと二人で旅をする機会は意外となく、寂しい気持ちと落ち着く気持ちが共存している。

 夜の暗さと焚き火の明かりが、それぞれ対応する感情を増長させているようだ。

 ただ、同じ気持ちを共有しているはずのルーエの様子は予想外というかなんというか。


「やはり肉はレアに限る。ジオもそう思わないか?」

「いや……うん、確かにそうかもしれないけどね?」


 とはいえ、最近はよく焼くほうが顎に良さそうで……じゃなくて。


「そろそろ目的地を決めてみても良くないかなって」

「ふむ……」


 ルーエは腕を組み、重たそうな胸を持ち上げながら考え始める。


「この数日間は、やっとジオを独り占めできて幸せだったんだが……」

「もちろん俺も楽しかったよ。足りないものをどう補うかとか、山で暮らしていた頃を思い出したし」


 流石に今の俺なら、大抵のことは魔術によってなんとかできてしまう。

 だが、あえて手間のかかる方法を探して試すことで、思ってもみなかった発見や学びがあるのだ。

 それがゆくゆくは新たな魔術のヒントになることも多かった。

 ルーエとの当てのない旅も十分楽しいけど。


「でも、ずっとこのままっていうのも味気なくない?」

「それは……私的には割とありなんだが」

「ありなの……」


 うんうん頷いているのを見て、会話の広げ方を間違えたかとガックリくる。


「だが、ジオがどこかへ行きたいと言うのなら合わせよう。なんだかんだ言って楽しいしな」

「そうそう! その言葉を待ってたのよ!」


 途中、雲行きが怪しかったが、どうにか意図した方向に話を持っていくことができた。


「……あ、でも行きたいところがあるわけじゃないんだよ。そもそもどこに何があるのかすら知らないからさ」


 マルノーチと王国の位置関係だってすでに怪しくなっているし、山に帰ることだってできないかもしれない。

 テレポートの魔術を使えば戻れないこともないが、現在地からの距離感が分かっていないと、思わぬ場所に移動してしまう可能性がある。

 死にはしないが、気づいたら木の中に埋まっていたなんて精神的に良くないだろう。

 まだ家が恋しくはなっていないから、そんな気持ちはサラサラないが。

 何が言いたいかというと、つまり俺は外の世界の地理には詳しくないし、次にどこに行くか、行けるかの知識もないわけだ。

 だから迷子状態ということで、こういう時に地理に詳しい、レイセさんのような人がいれば――。


「あぁ、それならいいものを持っているぞ」

「え?」

 

 呆けたような声を出してしまった俺を笑いながら、ルーエは懐から一冊の本を取り出す。

 いや、本というには薄いな。


「これはいつだったかに誰だかから貰った雑誌でな、ここら一帯の観光地が記してあるらしい」

「…………どうして言わなかったの?」

「すっかり忘れていてな。ほら、少しよれてしまっているだろう?」


 思わず顔が引き攣る。

 時期やくれた人まで忘れているのもそうだが、こんなに有益そうな情報を忘れているなんて……。


「ルーエ、三日間飯抜きな」

「なぜだ!?」


 抗議の声を無視しつつ、雑誌をめくってみる。

 おそらく著者はしっかり者なのだろう。

 マルノーチと王国の位置関係どころか、周辺の村・街・ダンジョンがしっかりと記されていた。

 残念ながら俺の故郷である山についての記載はなかったが、これで十分だ。

 一ページ一ページ目を通して惹かれる場所を見つけていく。

 最終的に3択にまで絞ることができたが、どうにもこの先に進まない。


「なぁルーエ」

「なんだ? 晩飯OKのお達しか?」

「あれは冗談だから。あのさ、1から3までで好きな数字を教えてくれる?」

「1だな。やはり魔族の頂点に立つ私には似合うのは――」

「よし、1と……」

「聞いてくれ!?」


 ということで、次に俺たちが向かうべき所が決まった。


「今から俺たちが向かうのは……カグヤノムラだ」

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