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【電子書籍1〜2巻発売中】ダジャレ好きのおっさん、勇者扱いされる~昔の教え子たちが慕ってくれるけど、そんなに強くないですよ?~  作者: 歩く魚
おっさんと戦い

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考察

 ルーエたちと別れ、俺は全速力でケンフォードの王都へ戻っていた。

 同じ国に属していると言っても、フォックスデンから王都まではかなり距離がある。

 やろうと思えばテレポートのような魔術を使うこともできるが、あれは座標の位置を少しでも間違えてしまうと空間に悪影響を及ぼす危険性がある。

 まだ猶予はあるはずだから、リスクを考えて向かうことにした。


「ジオさんからフォックスデンの土地の匂いがしたものですから」


 ロジャーの言葉を思い出す。

 その後の会話の通り、土地の匂いが俺についている可能性はある。

 だが、もしそうならロジャーは俺に反応しなかったのではないだろうか。

 マルノーチに滞在していたよりも長くフォックスデンで時を過ごしているし、彼の言葉は間違っていない。

 俺の仮説はこうだ。

 ロジャーは俺の匂いに反応したのではない。

 フォックスデンの匂いに反応したわけでもない。

 ……フォックスデンの村に出現した魔物の匂いに反応したのだ。

 彼には邪悪な気配を察知する力のようなものがある。

 おそらく、それがこの後起こされるであろう事態に反応したのだ。

 ……この後起こされる事態とは?

 足は止めず、脳内で状況を整理する。

 フォックスデンに現れた強い匂いを放つ魔物とは?


「血の魔術! そんなこともできるのか!」


 そう、ブラッドウルフだろう。

 ホワイトウルフの放つ獣の匂いだけではない。

 他種族を多く喰らうことで身体にこびりついた血の匂い。

 一度嗅げば脳裏に刻まれるような強烈なそれに、ロジャーは反応してくれたのだ。

 ……でも、撃破したはずのブラッドウルフの匂いがどうして?

 

「やっと倒れてくれましたな」


 牧師であるトマスの言葉を思い出す。

 無意識のうちか彼は「やっと」と口に出していた。

 引っ掛かることがいくつかある。

 まず、ブラッドウルフの存在を事前に知っていたのかもしれないということだ。

 しかし、ネームドモンスターはその強さから、対面すればまず命を奪われてしまうだろう。

 それなのに存在を認知しているというのは何故か。


「これは私が処理しておきますので」


 ……本当に?

 その後ブラッドウルフがどうなったのか、俺は一切聞かされていない。

 王都のパーティに出た際に評判が伝わっていたことから、秘密裏に処理されたということでもないようだ。

 もしかしたら、ブラッドウルフは王都に運び込まれたのではないか?

 そして、誰か目撃者がいたのかもしれない。

 疑念は疑念でしかない。

 だとしても、急いでエドワード王のもとへ戻らなければならない気がする。


 ・


「はぁ……はぁ……なんとか、逃げ切れたようだな……」


 息があがりながらも、どうにか教会の地下まで戻ってくることができた。

 あの方にいただいた魔物召喚の符もあることだし、どうせならロジャーをここで始末しておきたかったが仕方ない。

 それよりも、あの厄介な男が王都へ向かったのが良くない。

 可能性は薄いだろうが、彼が計画を狂わせないとも言えないからだ。

 だからこそ、私は少しばかり予定を早めて計画を実行することにした。

 王都にいるあの方も同じことをするだろうし、私が罰せられることはない。

 地下に書いておいた魔法陣の上に魔物の符を置く。

 普通に使ってもAランク級の強さがある魔物を召喚できるが、魔法陣の上でならさらに凶暴な個体が呼び出せる。

 村の守りが手薄になった今なら、村人を全滅させることも容易い。

 そして、彼らを贄とすることで魔物の力をさらに増幅させ、王都に襲撃をかける。


「さぁ、今こそ姿を現せ! 古より伝わる悪魔よ!」


 魔法陣が緑色に輝き始め、眩い光が地下室を覆い尽くす。

 あたりにだんだんと闇が戻っていき、反対に空間の重みがます。

 ……召喚は成功だ。

 安心して目を開けると――。


「……え?」


 私に手を伸ばす「悪魔」の姿があった。

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