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【電子書籍1〜2巻発売中】ダジャレ好きのおっさん、勇者扱いされる~昔の教え子たちが慕ってくれるけど、そんなに強くないですよ?~  作者: 歩く魚
おっさん、村へ行く

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村長

国王→貴族 

国王→貴族→(貴族の一部含めて)領主→村長(or町長)という地位の順で考えています

牧師の影響力は領主〜村長くらいです

 フォックスデンは、美しさや活気ではどうしても城下に見劣りしてしまうが、かと言って本当に田舎なわけでもなく、中心部はそれなりに整備されていた。


「ここが村長の家になります。すでに話は通してあるのでお入りください」


 シャーロットに促されるままに馬を降りる。

 村長の住んでいるそれは教会と同じく木造で、他の家と比べて部屋の三つか四つ分大きかった。

 玄関をノックし、挨拶しながら入ると、優しい木の匂いが緊張をほぐしてくれた。


「ようこそおいでくださいました。お疲れでしょう。ささ、お食事のご用意がありますので、奥へどうぞ」

「ありがとうございます」


 ウォリック伯爵の接客のような柔らかさではなく、村長は心から来客に喜んでいるように見える。

 食事まで用意してくれているなんて、手ぶらできてしまったことに少し罪悪感を覚えてしまう。


「それでは、私は領主の方へ到着の挨拶をしてきます。食事の後にエドガー宅へ伺ってください」

「わかった。俺たちは一緒に行かなくて大丈夫なの?」

「えぇ。この地域の領主はあまり他人に興味がなく、近頃は何か夢中なものがあるとか。私一人で十分なので、先生は腰を休めていてください」

「は、はは……ありがとう」


 腰に気を遣われて自分の歳を再確認する。

 落ち込むのは程々に、村長の奥さんが用意してくれた料理をいただくことにした。

 食卓にはパイをはじめとして多くの料理が並んでいる。


「お好きなだけいただいてください。まぁ、村長と言っても貴族の方たちのような豪勢はできず、ジャガイモ料理が多いのですが……」

「いえ、とても美味しいです。私も故郷ではよく食べていましたから」

「そうでしたか。ジオ殿は世界的な英雄だそうですが、そんな方でも同じような料理を食べるのですね。少し親近感が湧きます」


 確実に世界的な英雄ではないのだが……それに触れるとややこしくなりそうだから苦笑いで返しておいた。


「……これは美味いな。素朴な味わいだが飽きずに食べられる。あとでレシピを教えてもらえないか?」

「あらあら、もちろんですよ!」


 ルーエは奥さんに料理の作り方を聞いている。

 同じ味がまた食べられるなら俺も嬉しい。


「そういえば、来る時に教会で言い争いが聞こえたんですけど、何かあったんですか?」

「あぁ、またですか……」


 ふと思い出したことを聞いてみると、村長は禿げ上がった頭を撫でながら天を仰いだ。


「この村の牧師と副牧師はその……あまり相性が良くないのです」

「相性?」

「はい。副牧師のほうは人当たりも良く、私たちのことをよく考えてくれているのですが、牧師のほうは出身が出身なこともあって、現状の維持を第一に考えているのです」

「ははぁ……そういうことでしたか」


 牧師は家督を継げなかった貴族がなることの多い職業だと、いつだったかシャーロットに聞いたのを思い出した。

 しかも、農民出身でも同じような職に就くことはできるが、一定以上の血縁がないと副牧師から上へは上がれないらしい。

 貴族がエドガーの小説を好む理由の中に現状維持の安心感があるとすれば、牧師は貴族の出で、反対に副牧師は農民の出なのだろう。

 どちらが正しいという話ではない。

 今までの流れを守るのも正しく、新しい文化や行動を取り入れるのもまた正しい。

 しかし、これは部外者である俺の意見だ。

 フォックスデンの人々がどちらの意見に共感を覚えているかは……村長の反応を見れば一目瞭然だろう。


「エドガーさんはどういう方なんですか? 私は小説家ということ以外何も聞いていなくて……」


 困り顔だった村長の顔がパッと明るくなる。


「彼は一言で言えば、不思議な人です。あまり人前にも姿を見せませんが、信念を持っているようで私は好きですよ」

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