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【電子書籍1〜2巻発売中】ダジャレ好きのおっさん、勇者扱いされる~昔の教え子たちが慕ってくれるけど、そんなに強くないですよ?~  作者: 歩く魚
おっさんと3人の冒険者

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3人の冒険者

今章から「ダンジョン」に潜ります!


おっさんがまともに戦うと全て瞬殺になってしまうので、できるだけ彼以外に戦闘を担当してもらうか、正拳突き以外の攻略を行っています


もしジオが普通に戦っていたら…というのを考えていただいても面白いかもしれません

 翌日はレイセさんに呼ばれてギルドへ向かうことになった。

 なんでも、実際に冒険者を連れて依頼に向かってほしいらしい。


「はぁ……若い子の助けになれるのは嬉しいけど、やっぱり気が重いよね……」

「まったくだ。依頼と言っても、昨日お前が戦ったとかいうネームドモンスターではなくもっと下級のものを相手にするのだろう? まだ武器なり宝石に魔力を込めている方が有意義というものだ」


 ルーエが「毎日寝ているわけにもいくまい。なに、お前と一緒ならどこでもいいさ」とかキメ顔で言っていたのは5分前の話だ。


「面倒なら観光してて良いんだぞ。どうせルーエは戦わせられないし」


 闇魔法を悠々と操る姿を見て変な噂を立てられても厄介だし、その噂はおそらく真実だろうし。

 まだ知り合ったばかりのルーエだが、彼女がこれから退屈するのは手に取るようにわかった。


「いや、いい。観光はお前と行きたいからな。その、山ではやる事があまりなかっただろう? やっと恋人らしい事ができるとあって、楽しみにしているんだ」

「……恋人?」


 俺の人生に恋人という枠ができた事がないんだが。

 これが今流行りの肉食系女子というやつか?


「お前が何を考えているかはわかるが、その言葉はもう古い」

「え、そうなの!?」


 通りでキャスやランドと雑談している時に苦笑いが多かったわけだ。

 若者に会話を合わせるつもりで話を振っていたが、それでも時に追いついていなかったらしい。


「そもそもお前のジョークも……まぁいい。ともかく、今日は私は後方支援……見学させてもらうことにするよ。ジオが人に何かを教える姿が気になるしな」

「いや、はは……俺に教えられることなんてほとんどないと思うけどね」


 腰を痛めた時の誤魔化し方とか、体調が悪い時はとりあえず深呼吸するとかくらいだ。


 

 予定時刻の5分前に到着したが、すでにギルドの前でレイセさんが待っていた。


「おはようございます、レイセさん」

「おはようございます。お昼前に呼び出してしまって申し訳ありません」

「あぁ、まったくだ。せっかくの食事が――あたっ」


 開口一番失礼なルーエを肘で小突いて黙らせる。


「大丈夫ですよ。歳をとると起きる時間が早くなって……むしろ私の方こそ、宿を用意していただいたのに申し訳ないです」

「お気になさらず! 宿屋の主人も安心で胸を撫で下ろしてましたから。サービスがお気に召さなかったら大変だって」


 一体どんな凶暴な男だと思われているのだろう。

 乾いた笑いを返すことしかできなかった。


「それで、今日は具体的には何を? 冒険者の依頼を手伝ってほしいとは聞いているのですが……」

「あぁ、ちょっと呼んできますね!」


 そう言ってレイセさんはギルドに入っていったが、1分と経たないうちに再び姿を現す。


「連れてきました! ほら、みんな挨拶して」


 小声で指示を出されて、彼女の後からついてきた3人の冒険者がそれぞれ口を開く。


「び、ビギンです! Dランク冒険者です! よろしくお願いします!」


 ビギンと名乗った青年は、身長は175くらいで体格もそこそこ。

 茶色い髪が眉の辺りまで下ろされていて優しい印象を受ける。

 背中には片手剣を装備しているし、戦士職だろう。


「トアです! Dランク冒険者で、えっと……魔術師です! 今日はよろしくお願いします!」


 トアは小柄な女の子だ。

 長めの金髪の先端を縛っていて、珍しい髪型だというのが第一印象だった。


「……なんで根元で髪を縛らないんだ?」

「知らん。お洒落ってやつなんじゃないか?」


 ルーエにも分からないようだ。

 新しい武器を試す時は気分が上がるし、そういうメンタル作りの一環かもしれないな。


「……ネンテンです。殺さないでください……」


 最後の一人はネンテン。

 背が高くひょろっとした男の子だが、異様にネガティブな波動を感じる。

 怯えきった目で俺を見ているし、怖がる必要はないと伝えなければ。

 そうだ、このシチュエーションにぴったりなジョークがあった気がする。


「そんな怖がらないでください。朝食を食べられなくて超ショックだった……って顔してますよ」

「朝食……超……ショック……?」


 これが素晴らしいジョークだと気付いたようで、ネンテンは一瞬顔を綻ばせたが、なぜかすぐに青ざめてしまう。


「な、なぁネンテン? やっぱりジオさんはお優しい方じゃないか」

「違う……僕たちのせいで朝食がとれなかったと暗に伝えているんだ…………殺されるんだ」


 ……あれ?

 あんまり伝わってないかな?


「お前の参考にしてる本だがな、あれは有用だからじゃなくて、くだらなさすぎるから禁書になったんだぞ」

「またまた。まだ表面的な事が面白い年なんだろう」


 ジョークもまた、芸術のように教養がなければ楽しめないものなのだろう。

 彼らの場合は人生経験かな。

 馬鹿にしているわけではなく、俺のように生活に飽きているわけではなく、きっと若者は毎日が未知なのだ。

 だからこそ、言葉の裏に潜むユーモアを理解する余裕がない。

 それでいい。世界への憧憬を持っているのは、それだけで幸せだからな。

 ……とはいえ、俺は芸術はわからないが。

 

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