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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

影鬼姫の気晴らし散歩

掲載日:2023/01/13

なんちゃて和風平安仕様です。

平安時代にないものや言葉が出てきますが、温かい目で見てください。

とある貴族の屋敷には、四つ子の姫がいる。一人を除いて、三人は母親に似て、穏やかで花があることで有名だった。貴族の間では三人のことを大輪の三華と呼ばれ、残り一人の父親にの姫のことを病気がちの影姫と呼ばれていた。年頃を迎えた三人には連日見合いの話が届き、彼らの屋敷は大忙しだ。もちろん、お見合い以外にも彼女らを妬むものから、呪いなどが送られてくる。


今宵もの見合い屋敷で開かれた見合いの席に座る三華の一人、アオカに黒い蛇の形をした呪詛が絡まろうとしていた。

しかし、それはできなかった。帷が降りた夜の屋敷の中庭から、女の影が出てきて、その蛇を踏んづけ、引きちぎる。 ちぎれた蛇は空気に溶けるように消えた。

「私のかわいい姉たち、妹様がしっかり、悪い奴らは排除するから、お見合い頑張るのよ。」

宵の見合いの部屋から離れた部屋の一つ、屋敷の離れに一人の女が笑っていた。

女の影の正体はお見合いの話が来ていない、影姫こと、エイカだった。エイカは美人な姉たちにたくさんの縁談が来ても僻むことはなかった。

「私は前の世界みたいに、綺麗な絵さえ眺めれればいい。かければいい。」

なぜなら、エイカは転生者。絵を描くことを愛し、みることを愛し、最後は洪水に流され掛けた美術品を守って死ぬと言う死に方。上流貴族と結婚してしまえてば、屋敷の取り仕切り、駆け引きとかで大忙し結婚すると言うことは、余程のことがない限り避けれない。

「男は好きでもないし、かと言って女の子も友達以上に好きにならなかった。」

エイカは無性愛者だった。

しばらく、気を張り、見合いの席を陰越しに見守る。

初めは笑顔で対応していたアオカ、突然顔を曇らせる。

しまいには見合いの席を立ち上がり、お見合いの部屋から去って行った。

「エイカ、聞いてください。あの男。あなたが結婚しないまま家にいる場合、いい尼寺があると言ってきたのよ。」

アオカは怒り心頭の顔をして、エイカの離れに来ていた。

「こんなにかわいいエイカが売れ残るわけないじゃない。」


姉たちに見合いの男達は大半は、寝てばかりのエイカのことをどこかの尼寺に預けようと言う話を持ってくる。そのせいでおじゃんになる。はやく結婚してもらわなければ、こちらに縁談が来て困るのに。


姉の見合いが散々な結果に終わり、夜が深まり、屋敷の皆が寝静まったとき、エイカは影で屋敷を抜け出した。エイカの目的は、忍び込める屋敷においてある美術品を見に行くことだ。

エイカは影に意識を移すことで、影を切り離し動くことができる。それに加えてさっきのように呪いを触り壊すことができる。

(あーもう、むかつく、私の処分方法なんて結婚した後に話せばいいのになんで、見合いの時に話すのよ。)

エイカは目につく呪いを片っ端から壊しまくる。

エイカは、目的の屋敷の一つに着くと門をすり抜け、美術品を見に行く。ここに置かれているのは綺麗な虎の屏風だ。美術品は見ていると癒される。見た後は家主の様子を見る。これがエイカの散歩の決まりだ。

家主は美術品の持ち主であることも多く、家主に何かあれば、美術品が損なわれてしまうかもしれないからだ。

(この爺さん、また呪いついてる)

高そうな布団で眠る老人の頭を食む大きめのイモムシの呪いを掴み潰す。

イモムシを取る前はうなされていた爺さんの顔が、安らいでいた。

(閲覧料はこれでチャラにしてね)

そう思い、その部屋を出ようとしたが、部屋から出れない。

出ようとした先には誰かが明かりを持って立っていた。

「何者だ!爺様を呪ったのは貴様か?」

障子が勢いよく開かれる。若い男の声が響く。エイカは急いて、老人の体の陰に隠れる。

「爺様の呪いが消えている」

男が呟くと、老人は目を覚ましたようで身じろぎをする。

「影武、ワシは生きているようだな。とても体が軽い。呪いを解くことができたのだね」

そして、身を起こす。

「そのようですね。ん?」

その拍子に、老人の不自然な影の形に男は気づく。

エイカが潜んでいたことがわかってしまった。

「貴様!」

男が何か、エイカに投げつける。

エイカそれを食らった。

焼けるような痛みを感じたが、捕まるわけには行かない。

影の姿で初めて痛みを感じたことに戸惑いつつ、エイカは屋敷を出て行った。


起きたエイカは散歩が散々な結果に終わり、イライラしていた。

そして、男が投げたものが当たった場所、左手の甲がが青あざになっていた。


(しばらくは、あの屋敷に近づかないでおこう。あの虎の絵、気に入ってたから見にいけないのは辛いけど)


それから数日後、エイカの元に縁談の話がくる。


両親、姉たちを含むエイカを除いた屋敷の者たちは狂喜乱舞していた。無理矢理、見合いの席を整えられ、エイカは美術品を餌に座らされた。

「初めまして、陽一と申します」

品のいい若い青年、陽一が微笑みを浮かべながら、エイカの前に座る。

「初めまして、陽一様、エイカと申します。本日はお越しいただきありがとうございます。」

とりあえず、当たり障りがない自己紹介から始まった。陽一は、内裏で仕事をするエリートだそうだ。

エイカはと言うと、和歌などの美術品を嗜む箱入り娘だと紹介した。

「エイカ姫は、美術品が好きなのですね」

何かを探るように、陽一はエイカを見る。

「そうです。」

エイカはその視線を気にしつつ、返事をする。

あまり、話が盛り上がらないように持っていき、さっさと見合いを終わらしたかった。

「私も美術品を嗜んでいるのですが、お気に入りの絵は、お祖父様の屋敷においている虎の絵が描かれた屏風ですね。」

虎の絵と聞いて、エイカの頭は血の気が引いた。

単の袖に隠れた痛む左手を気にする。

陽一は少し口角が上がった微笑みを浮かべていた。

「エイカ姫、私と結婚してくれたら、その絵がいつでもみれますよ」

「けれど私は有名な影姫、なぜ、娶りたいのですか?」

エイカは、状況の打破を考える。

「それはもちろん」

陽一は見合いの席を立ち、エイカに近づき、エイカの左手を両手で宝物のように包む。

「好きなあなたのことを知りたいから」

そう言って、左手の甲に口吸いした。

エイカの手から痛みが引いていく。


エイカと陽一を除いた見合いの場にいた者たちが、騒ぐなか、エイカは血の気が引いて、後ろに倒れかける。それを陽一が支える。

そして耳元で囁く。

「陽一は偽名です。本名を言えばあなたは逃げていたでしょう。」



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