001・発芽
久しぶりの新作になります。
もしよかったら、読んでもらえたら嬉しいです♪
どうぞ、よろしくお願いします。
目の前は、真っ赤な炎に包まれていた。
僕の育った村やお父さん、お母さん、村の人たちみんなを飲み込んで、真っ赤な炎が世界に広がっていた。
大きな黒い獣。
突然やって来たソイツが、口から火を噴いて、村のみんなを襲ったんだ。
誰も動かなくなると、ソイツはいなくなった。
僕は1人で地面に倒れていた。
「……寒い」
小さく呟く。
炎は熱いのに、身体は寒くて堪らない。
すぐそばの地面には、千切れてしまった僕の右腕が転がっていた。
身体の下に、血だまりが広がっていく。
(……痛い……寒い)
そして、眠い。
そのまま眠ってしまいそうになっていると、夜の空が光り輝いた。
……?
顔をあげる。
お星様がいっぱいの空から、黄金色にキラキラと輝く女の人がゆっくり落ちてきていた。
背中にたくさんの翼が生えている。
ヒラヒラした白い服を着た女の人は、地面にふんわり降りた。
とっても綺麗な人だ。
「…………」
その人は周囲を見回して、それから悲しそうな顔で瞳を伏せる。
しゃがんで、光る手が僕の頬に触れた。
……あれ?
痛みと寒さが消えていく
その人は優しく微笑んで、
「……生き残った、その生命に祝福を」
真っ赤な血の流れる僕の右肩に、光る指で摘まんだ小さな丸い粒をギュッ……と押し込んだ。
メキッ
そこから、真っ白な枝が生えた。
メキメキ……ッ
それは、あっという間に成長して、絡まりながら長く伸びていく。気がついたら、真っ白な枝たちは腕になり、先端は5つに分かれて指になっていた。
ぼんやり、それを見つめる。
「…………」
女の人は僕へと優しく微笑むと、頭を撫でてくれた。
そのまま立ち上がる。
その人が瞳を閉じると、その姿は強く光り輝き、たくさんの黄金色の光に砕けてキラキラしながら空へと消えてしまった。
残された世界は、ただ真っ赤な炎に包まれていた。
(……眠いよ)
僕は目を閉じる。
閉じる寸前、生えてきた白い木の腕が淡く輝いていて、それがとっても綺麗だなぁ……と思った。
そうして僕は、そのまま眠ってしまった。