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ゾートロープ

作者: 春風 月葉

父の転勤で都内に越してきたばかりの頃、私は空に届きそうなほど高い多くの高層ビルに目を輝かせ、街を歩くスーツ姿のサラリーマンに憧れた。我ながら田舎者だったと思う。あの頃は目に映る全てが新しくて、毎日が冒険だった。

住めば都だが慣れてしまえば都会ほど面白くないものもないのかもしれない。都会の空気はタバコやガソリンで濁ってる。ボーッと空を見上げても、目に入る高層ビルが私を現実に引き戻す。今日も出勤だ。

かわり映えのない毎日だ。同じ時間に起きて、歯を磨き顔を洗う。一杯のコーヒーを口に流し込み、さっさとスーツに着替える。ネクタイの柄もいつからか気にしなくなった。駅まで歩き、改札を通って、電車に乗る。黙々と仕事をして、その日のノルマが終われば同じように帰る。そしてまた次の朝を待つ。

良くも悪くも都会は安全だ。高いビルは外界から私たちを守ってくれる。しかし私にはその高いビルの壁が私たちを囲う鳥籠のように見える。

田舎に移り住もうか。そんなことを考えたこともあった。しかし、働きさえすれば手元を離れることのない安定がそれを拒む。慣れてしまった環境の外へ出ることを恐れてしまっているのだ。どうしようかと悩むがそんな時間を時計のアラームは許さない。ピピピッ、ピピピッ。次の仕事だ。

今日こそは食事を摂る、今日こそは風呂に入る。今日こそは、今日こそはと用意した予定に手をつけることもなく疲れた身体は今日もベッドの手前に沈む。

カチ、カチ、カチ、時計の音に苛立ちを覚える。ピピピッ、ピピピッ。また同じ朝が来る。

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― 新着の感想 ―
[一言] 社畜と言う言葉がでてくるほど、それが日常とかしてしまえば逃げるのは簡単じゃない。 ふと、そんな現実的なことを考えさせられる小説でした。(((・・;)
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