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シドの国  作者: ×90
釁神社
166/284

165話 感謝と啓蒙と脅迫

 診堂クリニックにてニクジマとの賭博勝負。臓器ギャンブル“ダークネス・ポーカー”を終えたシスター・ハピネス・ラプーの3名は、ディーラーを務めていたレシャロワークと共に拉致(らち)された。その犯人は、存在しない村こと“(ちぬる)神社”を拠点とする使奴“ヒスイ”だった。


(ちぬる)神社 中層 社務所 (シスター・ハピネス・ラプーサイド)〜


 簀巻きにした上で頭部もタオル4枚でぐるぐる巻きにされたハピネスを担ぎ、ヒスイはリビングへ繋がる戸を開いて跪く。


「“ノーマ様”、客人が目を覚ましました」

「うん。ありがとう、ヒスイ」


 リビングのソファに座っていたのは、琥珀色の髪をした使奴ともうひとり。使奴と同じく白い肌をした、これまた白い髪の青年であった。


「初めまして。僕の名前は“ノーマ”。形だけだけど、一応この(ちぬる)神社では神主ってことになってる。よろしくね」


 色彩を持たない肌と、肩までかかるウェーブした白髪。幼い顔立ちとは対照的に低い声、浅葱(あさぎ)色のローブのせいで体つきは分かりづらいが、体格は決して恵まれている方ではない。そして何よりも目を引くのは、不気味な黒に染まる両目。よく見れば微かに球体らしきものが眼窩(がんか)(はま)ってはいるのだが、意識しない限りは両目に穴が空いているようにしか見えない。


 遅れて部屋に入ってきたシスターが、その異様な外見に言及しようかと思ったその時。それを察してか知らずかノーマの隣に立つ琥珀色の髪の使奴が口を開く。


「ボクは“コハク”。話は“ヒスイ”から聞いてるかな? よろしくね」

「あっ、私はシスターと申します。彼女はハピネス。よろしくお願いします」

「シスター君。紹介の前に縄解いてくれる?」

「結構です」


 シスターはノーマのジェスチャーに従い対面に腰掛けると、その隣にヒスイが威圧するように力強く腰を落とした。


「……警戒するなら、私ではなくハピネスさんじゃないんですか?」

「レシャロワークからギャンブルの一部始終を聞いた。貴様も充分“狂人”だ」

「……そうですか」


 シスターは少し不満そうに息を吐き、ノーマの方へ視線を戻す。


「早速本題に移りたいところだけど、まずはこの(ちぬる)神社の内情を知っておいてもらおうかな。色々と厄介な事だから」


 そう言ってノーマは(ちぬる)神社の事情を説明した。コハクの異能のこと。下層にいる化け物のこと。ここで暮らした人間は、簡単には外へ出られなくなること。


「――――と言うわけなんだ。後で身代わり人形も作ってもらうね」

「分かりました」

「……意外と冷静なんだね。ヒスイから聞いた通りの豪胆さだ」

「自覚はないんですけどね。それに、どちらかと言うと自分の命を軽んじる節があると言った方が適切かもしれません」

「シスターくーん。私も犠牲になってるんだけどー」

「サンゴさん。ハピネスさんの口に何か詰めておいてください」

「え、あ、はい」

「シスターくーん!!」


 2人のやりとりを見てノーマが小さく笑うと、シスターは気恥ずかしそうに目を伏せた。そして、隣に腰掛けるヒスイの方を流し見る。


「……ノーマさんのお話の前に、ヒスイさん。ひとつお聞きしてもいいですか?」

「事による」

「ヒスイさんは、何故私達を襲ったんですか?」

「……チッ。大体はあの馬鹿のせいだ」


 そう言って、ヒスイが後ろの方でゲームをしているレシャロワークを指差す。


「えぇ〜。ヒスイさんが勝手に勘違いしたんじゃあないですかぁ〜」

「あの馬鹿が自分とこの部下使ってニクジマをイビってると思ったんだよ。ま、事実はもうちょいキショかったけどな」

「しませんよそんなことぉ〜」

「じゃあ何故ギャンブルの立ち合いなんかやっていた!!」

「割と儲かるからですねぇ〜。あのバイト、コスパ鬼なんですよぉ」

「非番だったんだから大人しくしておけよ……!!」

「大人しくバイトしてただけなんだけどなぁ……」


 レシャロワークがしょぼくれて再びゲーム機に視線を落とす。すると、ヒスイは残った鬱憤を吐き出すように鼻を鳴らす。しかし、シスターはヒスイの言葉尻を取って問い詰めるように言う。


「“大体は”あの馬鹿のせい……。では、残りは?」

「あ?」

「貴方個人のせいではないのでしょう。信頼しているであろうノーマさんへの謝罪がありませんでしたから」

「……推理ゲームの探偵気取りか?」

「おっ。“逆探審判”の話ですかぁ? やっぱ自分は最新作の大逆探1&2が傑作だと思いますねぇ」

「静かにしてろレシャロワーク」

「はぁい」


 ヒスイは鬱陶しさに眉を顰めるが、やがて諦めて溜め息を吐いた。


「貴様のツレのせいだ」

「ツレ? ハピネスさんがまた何かしましたか?」

「いや、あのデブだ」

「え……」


 そう言ってヒスイが顎をしゃくって部屋の隅を指す。そこには、何事もなかったかのようにぺたんと座り込むラプーの姿があった。


「ラプーさん! よかった! 無事だったんですね!」

「んあ」

「そのデブが「自分達はキャンディボックス所属だ」と言うから信じた。まさか貴様等を助けるための方便だったなんてな」

「ラプーさん……」


 シスターがラプーに深く頭を下げる。そして、シスターは再びノーマに顔を向けて頭を下げる。


「ひとまずは、私達の治療ありがとうございました。お陰で助かりました」

「僕は何もしてないよ。凄いのはヒスイ達だ」

「はい。ヒスイさん、コハクさん、サンゴさん。ありがとうございます」

「それで、助けてあげたお礼ってわけじゃないんだけど、君達に一つ頼みがあるんだ」

「頼み?」

「うん。君達には、“工場の国”に行ってきてもらいたいんだ」

「“工場の国”……。“三本腕連合軍”ですか?」


 三本腕連合軍。工場の国と呼ばれる産業大国で、主に3つの地域からなる帝政国家。金属工業や化学工業を中心に扱う”黒雪崩(くろなだれ)騎士団“。機械工業やコンピューター科学を中心に扱う”東(あざみ)農園“。そして、繊維工業やその他の工業、組み立てや輸出入その他諸々を管理し、商工会としての側面も持つ首都。”鳳島(おおとりじま)輸送“。


「このうち、”黒雪崩騎士団“の”ステインシギル工場長“は僕達にとても良くしてくれてるんだ。この社務所の設備も全部ステインさんが手配してくれたんだよ。でも、ここ数年は音沙汰がなくて。ちょっと不安なんだ。それを、君達にはレシャロワークと一緒に見てきて欲しい。出来れば助けになってあげて欲しいんだ」

「自分帰って鎧核4やりたいんですけどぉ……」

「……それは良いんですが、その。ヒスイさんは透明になれる異能を持っているんですよね? 私達人間より、彼女の方が適任かと思いますが……」

「うーん……。三本腕連合軍が酷い悪魔差別の国だとか、単独で潜入させたくないとか、色々問題があるんだけど……。とにかく、僕らが行くことは出来ないんだ」

「そう、ですか」

「それに、さっきも言ったように(ちぬる)神社の下層には化け物がいる。シスターさん達をここに長くいさせることも出来ない」

「分かりました。ただ一つだけお願いがあります」

「ん? 何かな」

「恐らくは、ここへ私を探しに仲間が来ると思います。その方達にも、今と同じ説明をして頂けますか?」

「ここへ? それは無理じゃないかな。ホウゴウさんが口を滑らせるとは思えないし、ヒスイも痕跡を残してない。ヒントは皆無だよ」

「それなら大丈夫です。だって―――」


 ほんの僅か、シスターは言葉を詰まらせる。しかし、意を決して思い浮かんでいた言葉を吐き出した。


「貴方は“素体のメインギア”でしょう?」


 ノーマが一瞬呼吸を止める。直後、大きく叫んだ。


「ダメだヒスイ!!!」


 その言葉で、ヒスイの手刀はシスターの首を半分裂いたところで止まった。引き裂かれたシスターの首からは大量の血が吹き出し、彼の真っ白なローブを深紅に染める。しかし、彼は痛みに顔を歪めつつも口角を上げた。


「ぐ……か、構いません。予想は、してました……」

「ノーマ様!! 殺害の許可を!!」

「ダメだ!! サンゴ!! シスターさんの治療を!!」

「は、はい!!」


 サンゴがヒスイを押し除けてシスターの首筋に手を(かざ)し、回復魔法で傷口を塞ぐ。シスターは喉に残った血を吐き出し、呼吸を荒くして微笑む。


「ありがとうございます……サンゴさん。ノーマさん。今ヒスイさんが私を殺そうとしたということは、推測は当たっているんですね?」


 ノーマは眉間に皺を寄せ、息を呑んで目を見開いた。


「まさか、ハッタリ……!?」

「いえ、ちゃんと根拠のある確信です」


 シスターは首の傷が塞がると、数回咳をしてからヒスイに目を向ける。


「そして、そのヒントの殆どは貴方がくれたものですよ」

「何……!?」

「これは忠告です。護るべき人がいるなら、甘えたことは言ってられません。”元人間の使奴“ならば、使奴との交流を増やすことをお勧めします」


 ヒスイは言葉を失う。何せ、出会って1日も経たぬうちに、高々20歳そこらの現代人などに正体を見破られた。目に見えて狼狽(うろた)えるヒスイの反応を見て、シスターは気の毒そうに息を吐く。


「…………いつだか聞きました。使奴の強さの秘訣は、身体能力よりも頭脳にあると。貴方がた(ちぬる)神社は、レシャロワークさんの所属するキャンディボックスという団体と協力関係にある。なのに、ヒスイさんは私とハピネスさんとラプーさんを、キャンディボックス所属だと信じてしまった……。使奴であれば、協力関係にある組織のメンバーなど1人残らず把握している(はず)ですよ」

「ぐっ……!」


 ヒスイは歯を食い縛り、眼光を鋭く輝かせ今にも飛びかかりそうな形相でシスターを睨む。しかし、シスターはまるで子供の強がりを一蹴するかのように説教を続けた。


「これでヒスイさんが他の使奴よりも劣っているということが分かりました。それを指摘しなかったところを見るに、コハクさんとサンゴさんも同様でしょう。他の使奴より劣っているということは、恐らくは記憶のメインギアや洗脳のメインギアによる調整を受けていない“未洗脳個体”……。しかし、先ほどコハクさんが仰った(ちぬる)神社の成り立ちが本当なら、皆さんは使奴研究所を出てからすぐに世間と隔離されている筈です。にも(かかわ)らず、皆さんは当時の人達と円滑にコミュニケーションが取れていました。ということは、未洗脳でありながら基礎的な知識を有していた……。ゼロから生み出された魔導ゴーレムではない。使奴になる前から知識を有していた元人間である可能性が高い」


 シスターが立ち上がって振り返ると、後ろに立っていたサンゴがビクッと身体を震わせて慌てて目を逸らした。その瞳は、ヒスイやコハク、そしてバリアやカガチと同じく綺麗な赤色をしていた。


「……確か、赤い瞳は第一世代の証だそうですね。初期に作られた元人間の使奴が、洗脳をされていないにも拘らず、黒痣ひとつなく存在していられる理由……。もしかして、皆さんは”加速劣化試験用モデル“だったんじゃないんですか?」


 そこまで言うと、サンゴは分かりやすく体を震えさせ始めた。そこへ慌ててノーマが駆け寄り、(うずくま)る彼女を優しく抱き締める。


「サンゴ……! 大丈夫、大丈夫だよ」

「うっ……うっ……! ノ、ノーマ、様……」

「ごめん、シスターさん。その話はやめてくれるかな」


 サンゴを抱き締めたまま、ノーマが若干の敵意が籠った口調で言い放つ。しかし、シスターはそれを冷たく見下ろしながら静かに首を横に振る。


「熱、光、風、湿度や放射線に波導風、(あら)ゆる過酷な状況を再現して、圧縮魔法を併用し擬似的に長期の経年劣化を与える耐久試験のひとつ。一般的な工業製品に用いられるこの試験を、使奴研究所は当然自社の“製品”にも行った。だから皆さんには、黒痣がない。使奴の肉体は頑丈だから、経年劣化程度ではビクともしなかった」

「シスターさん。やめて下さい」

「その頃にはまだ、使奴の発注は行なっていなかったのでしょう。サンゴさんの角は、よく見れば左右で質感が違う。ヒスイさんの獣の耳も左右で生物種が異なっている。コハクさんも(はかま)の下に隠してはいますが、どの生物種にも当てはまらない尻尾のようなものを持っている。まだこれらの動物的要素は実験段階だった」

「シスターさん!!」

「となれば、この3人は必然的に“素体のメインギアの存在を覚えている”可能性が高い!! 元人間ということがバレるだけで、その後の使奴研究所内での記憶を持っているとバレるだけで、ノーマさんの存在を知られてしまうかもしれないんですよ!!!」


 ノーマの声をシスターが遮って吼える。


「素体のメインギア……使奴を構成する使奴細胞を生み出す異能者……! 自殺を(こいねが)う使奴達、使奴を抹殺したい者達は、貴方を血眼になって探しています……!! 貴方さえどうにか出来れば、世界情勢は簡単にひっくり返る……!! 貴方達もそれを知っているからここに隠れているのでしょう……!! でも!! こんな生半可な青二才でさえも、この結論に辿り着けてしまうんです!!!」


 ノーマが目の色を変える。今までの嫌悪と敵意を塗り潰すように、今度は不安と恐怖が滲み始める。それはサンゴやヒスイやコハクも同じようで、額に汗を浮かべ視線を落としている。


「何より、気付いていますか? ヒスイさん」

「…………ああ? 何にだ」


 突然話題を振られたヒスイが、苛立(いらだ)ちを露わにしてシスターを睨む。


「今までの流れの全てを、“ハピネスさんが仕組んでいた”ということに」

「……っ!?」


 ヒスイがバッと振り返る。部屋の隅で簀巻(すま)きにされたハピネスは、頭にタオルを巻かれ口にタオルを詰め込まれたまま、頬だけを持ち上げて不気味に笑って見せた。


「アイツが……!?」

「ヒスイさん。貴方の異能は透明化ではない。そうですね?」


 ヒスイは顔に出ないよう跳ね上がる心臓を押さえつけるが、シスターはまたしても気の毒そうに目を伏せる。


「レシャロワークさんから私の異能の詳細は聞いていたのでしょう? 接触をトリガーとする記憶操作の異能……。それを知っていたにしては、さっきから“私に近づき過ぎ”です」


 ヒスイはハッとしてその場から飛び退く。それを見て、シスターは少し叱るように語気を強めた。


「もし記憶の全消去などされたら? そこへ私の記憶を移植しようものなら、ヒスイさんの肉体を私が乗っ取るも同義です。更に言えば、私がレシャロワークさんに話した異能の条件が本当に正しいと言う確証は? 接触ではなく接近や応答がトリガーだったら? でも、ヒスイさんはそのことに気付いていなかった……。いや、気付いていなかったと言うよりは、“気にする必要を感じていない”ように思えました」


 ヒスイの頬を汗が伝う。シスターが口を開くよりも早く、己の失態に気が付いた。


「コハクさんが創世の異能者なら、恐らくはサンゴさんが透明化の異能者……。そしてヒスイさんは、多分ですが“異能を無効化する異能者”。だからハピネスさんの思念体が見えたし、私にも無防備に近づけた。でも、あくまで異能の無効化は受動的な性能であって、何かしらを対象に発動する異能じゃない」

「……な、んで。そんなことがわかる」


 ヒスイの言葉はもう、相手を否定する強がりではなく、教えを乞う弱気なものになっていた。


「ハピネスさんの思念体は、物体を通り抜けることができます。なのでこうして……」


 シスターがソファから立ち上がる。すると、ヒスイの目にしか見えないが、ハピネスの思念体が“ソファの中からシスターに手を伸ばしている”のが見えた。


「床から地面に潜れば、当然ヒスイさんの目には映らない」


 ヒスイは数歩後退(あとずさ)って片手で顔を覆う。


「私は言いましたよね? 「警戒するなら、私ではなくハピネスさんじゃないんですか?」と。だって、使奴ならそうします。ハピネスさんの異能は、隠し事をしている者からすれば最も恐るべき異能です。もし私が使奴なら、ハピネスさんを真っ先に気絶させます。なのに、貴方は折角思念体が見えるのに、目先の脅威である私しか見ていなかった。それをハピネスさんは見逃さなかった。思念体で私と接触し、記憶、思考を共有し、(わざ)(おど)けて自らを拘束させ、安全地帯へと逃げ(おお)せた。……まあ、戯けているのはいつものことですが」


 ヒスイは全身から力が抜け、その場にぺたんと座り込んでしまう。命に代えても守ると誓ったノーマを、自分が一番危険に晒していた。彼女はこの事実が理解出来ないほど弱くはなかったが、すぐに受け入れられるほど強くもなかった。


「そ、そんな……。 そんな……!!」

「……ノーマさん。取引をしましょう」


 シスターはノーマの方へ体を向ける。


「今この場で私達2人を殺害するのも結構ですが……、私の仲間は必ず皆さんの正体に辿り着きます。そこで、私が仲間に口止めをします。ノーマさんの情報を口外しないで欲しい……と。いざとなれば異能で記憶を消しておきます。三本腕連合軍へのおつかいも(こな)しましょう。その代わり……私の仲間に手をあげないでください。特に、コハクさん」


 シスターが振り返ると、コハクはソファに座ったまま上目でシスターを睨む。


「……ボクかい?」

「貴方の創世の異能がどういうものか分かりませんが、もし”作ったばかりの何もない世界に誰かを閉じ込められるならば“、それは最早絶対に抜け出せない監獄になってしまう。”封印の異能“とも呼べる異能です。そんなことをされては、私の仲間はひとたまりもありません」

「そんなことを言われて、従えると思うのかな」

「従って頂きます」


 コハクは黙ったままシスターを睨み続ける。すると、ノーマが観念したように溜息を吐いた。


「分かった。従うよ」

「ありがとうございます」


 シスターはノーマに深く頭を下げる。ヒスイ、コハク、サンゴの3人も、何か言いたげではあったがノーマの決定には逆らえず沈黙したままであった。旅支度を整えるためにシスター、ハピネス、ラプー、レシャロワークの4名が部屋を出ていくと、ノーマは閉められた扉をじっと見つめてからポツリと溢した。


「まさか、本当にラプーさんの言った通りになるとは……」






(ちぬる)神社 中層 社務所(ハザクラ・ジャハル・ナハルサイド)


「まあ、というわけで……シスターさん達は今”工場の国“にいるよ」


 コハクが説明を終えると、ジャハルは口元に手を当てて静かに唸る。


「まさか、シスターがそういうことをする人間だったとは……。ウチの仲間がとんだご迷惑を」

「いやいや、言われた当初は頭に来たけど、冷静になってみれば彼の言う通りだったよ。ボク達だけじゃあ、とてもノーマ様を守りきれない。もっと早くに外へ助けを求めるべきだった。今までは運が良かっただけさ」

「安心してくれ。今後は我々も大いに力になろう。さて、そうと決まれば早速シスター達を追いかけなくては。……あれ? ナハル、ラデック達はどうした?」


 ジャハルが振り返ると、そこにはナハルだけがぽつんと椅子に腰掛けていた。


「……キッチンでたこ焼き作ってる。話の続きは後で私が伝えておこう」

「う。そうか……頼む」

「頼んだよ〜」

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