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第8話 親子

「えっ、鳴海?」


 日暮が驚いた顔で鳴海を見た。


「ん、なんだお前レナの知り合いか?」


 警察官が不思議そうな顔で鳴海を見る。


「えと、まあその友達です」


「パパ! 鳴海を離してよ! 大事な友達に酷いことしないで!」


 日暮が怒った様子で警察官に近づく。お前ら親子だったのか。

 なんたる偶然……


「いや、でもなレナ。こいつは巷で騒がれている伝説の下着泥棒でな。2度と過ちを起こさないようパパが粛清を……」


「どうして私のたった2人しかいない友達を傷つけるの? 酷いよ……、こんなパパ嫌い……」


 日暮が大粒の涙をボロボロと流す。

 すると、日暮パパはすぐに鳴海の拘束を解除した。

 さっきまでの威厳に満ちあふれた様子とは打って変わってひどく慌てふためいている。


「すまなかった! そうだよな!? これはパパの勘違いだよな!? いや、よく見たら正義の心に満ちあふれ顔つきをしている立派な少年だ! そんな男が悪の道に手を染めるわけないよな!? いやー、本当にすまん! だから泣かないでくれレナ! せっかくの可愛い顔が台無しだ!」


「本当? ……パパ大好き」


 日暮が満面の笑みで笑う。


「そうか、パパもレナのことを大好きぞ」


 今度は日暮パパが大粒の涙を流し泣き出した。


 何これ?

 一体何を見せられているんだろう?

 鳴海はあまりの超展開に困惑していた。


「少年よ! まさかレナの友達だったとはな! あっはっはっ! 約束を守る男は嫌いじゃないぞ!」


「あはははは……」


 鳴海は苦笑いをした。


「約束って何?」


 日暮が日暮パパに問う。


「ん? それは男同士の秘密ってやつだ。なぁ少年よ」


 日暮パパが鳴海の肩をバンバンと叩きながら言った。急に馴れ馴れしいなこいつ。


「えー、ずるい」


 日暮が不満げに頬を膨らました。

 それを見て日暮パパは「あっはっはっは 」と楽しそうに笑っている。


「あっ、そうだ! 鳴海せっかくだから家に遊びにおいでよ!」


「え、いいのか?」


「もちろん! ねぇ、いいでしょパパ?」


「ああ、もちろん! レナの友達なら大歓迎だ」


 日暮パパが笑顔で快諾する。


「やったー! ふっふぅん、パパ実はね。鳴海はただの友達じゃないんだ」


 日暮が突然、意味ありげな笑みを浮かべる。


「何!? それはどういう意味だ!?」


 日暮パパが深刻そうな顔をする。


「なんと実は親友なの! この間だって一緒にスイーツ食べに行ったんだよ」


 日暮が腕を組み自慢気に言うと、日暮パパは「何だと!」と驚いた後、膝から崩れ落ちまた泣き出した。

そして突然立ち上がり、鳴海の両肩をガッシリ掴むと、


「まさかレナに親友ができるとはな……、少年よ娘を頼んだぞ」


 と言った。


 いや、どういう意味それ?


「あはは……」


 返答に困った鳴海はとりあえず愛想笑いを浮かべた。


「もうパパったら」


 日暮が顔を赤らめながら言った。

 鳴海達が公園を出ようとしたとき突然、日暮が「あっ!」と声を上げ木を指さした。そして「零ちゃん!」と言った。


 鳴海は木に視線を移した。木に隠れこちらの様子を伺っていた零ちゃんと呼ばれた存在がビクッと体を揺らした。黒のレインコートに身を包みガスマスクをしている。


 ゼロお前そこに隠れていたのか。自分だけ逃げやがってこのやろう

 ゼロは木に半分身を隠し、こちらをしばらく見た後ゆっくりと歩み寄ってきた。


「レナ、偶然だな」


 ゼロが日暮の方を見て言った。

 次に鳴海の方を見てわざとらしく


「鳴海まで!? いやなんたる偶然!」


 鳴海はゼロに無言でチョップした。

 すると、ゼロは「あう」と小さな声を漏らした。


「まさか、レナの友達二人とも集まるとは! これは手厚く持てなさなくてはな!」


 日暮パパが感激した様子で言った。


「いや、僕は遠慮しておこうか……」


「いやぁ、レナの家行くの楽しみだな! なあゼロ!」


 鳴海はゼロの肩をガッシリと掴んだ。逃がさねぇぞ、こいつ


「いやだから、僕は……」


「うん! 賑やかで大変よろしい!」


 日暮パパが鳴海とゼロの肩をガッシリ掴み歩を進め出す。そういうわけで、ゼロも一緒に日暮の家に行くこととなった。


 何はともあれ助かった。鳴海が安心して公園から出ようとした時だった。


「それと、少年よ。そのポケットにしまった物はちゃんと元にあった場所に返そうか」


 日暮パパがニッコリと笑いながら言った。

 笑顔だが目の奥底は笑っていなかった。


 ですよねー

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