第6話 プロジェクトD
作戦当日
約束の期限まで残り僅かのため絶対に失敗は許されない。万が一失敗するようなことがあれば鳴海は絶命し故郷が滅びる。広大な土地と何万という生き物が犠牲になる。
その悲劇の結末を回避する唯一の方法。それはたった1枚のパンツを手に入れること。馬鹿げた話だが、常軌を逸したパンティーの神様なら本当にやりかねない。
計画発動は放課後だ。鳴海は昼休みの時間に屋上へと向かった。協力者であるゼロに計画の詳細を教えてもらい準備するためだ。
「来たか、鳴海」
「ああ、さっそくだが計画の内容を教えてくれ」
鳴海が手短に要件を伝える。
「わかった。まずはお前のスマホを貸してくれ」
「ああ、わかった」
鳴海は素直にスマホを手渡した。目的を達成するために一体スマホがどう役に立つのだろう?
ゼロはスマホを受け取ると、カバンからノートパソコンを取り出した。そしてUSBケーブルのようなもの取り出しパソコンとスマホを繋ぐ。パソコンをカタカタと動かすこと数分……
「よし、とりあえずは準備完了だ」
ゼロが鳴海にスマホを返す。スマホには見慣れないアプリがダウンロードされていた。
「じゃあ、さっそくそのアプリを起動してくれ」
「ああ」
ゼロに言われたとおりアプリを起動する。
すると、突然画面が真っ暗になった。画面下側には「上昇」「下降」「前進」「右」「左」「リターン」「アーム」と文字が表示されている。
「なんだこれ?」
「そのアプリを使えばこいつを操縦できる」
ゼロはカバンから何かを取り出した。
それは小型のドローンだった。
「お前、まさかドローンでパンツを盗もうってのか!?」
「ん、そうだが?」
「ん、そうだが? じゃねぇわ! 普通に犯罪じゃねぇか! てかこんなのすぐバレるだろ」
「いいか、鳴海? 犯罪はバレなきゃ犯罪じゃない」
「んなわけあるか! 任せろって言うからもっとスマートな方法で手に入れるかと思ったらこんなアグレッシブな計画立てやがって」
「安心しろ。すでに白井の家は特定してある。5階建てマンションの3階の1番左端の部屋に住んでいる。洗濯物を干す曜日、時間帯も把握済みだ」
「怖い、怖い、なんでそんなこと知ってんの!? てか他に方法はないのかよ!」
「この方法が最も成功率が高い」
「いやでも……」
「鳴海、お前に迷っている時間などないはずだ。リスク0で何かを得れるほど世の中は甘くない。人生の中で時にはすべてを失う覚悟で挑戦しなければならない壁が訪れることがある。それは今なんじゃないのか?」
「まあ、たしかに俺にはもう後がないけど……」
「大丈夫だ、必ず成功する。僕を信じろ。それにこれはただのドローンじゃない」
「そうなのか?」
どこからどう見てもだだのドローンにしか見えないが
「ためしにそいつを起動して、上昇させてみろ」
「ああ、わかったよ」
鳴海はゼロに言われたとおり、ドローンを起動し上昇させる。
「は!? 何だこれ!?」
ありえない出来事を目の前にして鳴海は驚いた。
信じられないことに上昇したドローンが突如、鳴海の視界から姿を消したのだ。
「――光学迷彩」
ゼロが呟く。
「そのドローンは僕のお手製でな。特別な細工がしてある。見ての通り周囲の景色と同化し姿を消すことができるんだ」
「……すげぇ」
鳴海は素直に感心した。とても高校生の技術力とは思えない。
「どうだ? 僕のプロジェクトDは」
ゼロが自信に満ち溢れている声で言った。
「これなら、行けるかもしれない……」
最初は乗り気ではなかったが、いつの間にか鳴海はその計画を受け入れつつあった。