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第4話 親友

 日暮レナ

 実際に会ったことも話したこともないけど、噂では聞いたことがあった。隣のクラスに手錠が標準装備の頭おかしい子がいると。間違いなくこいつだろう。


「いや、困ってんのはどう見てもそっちだろ……、何で校内で手錠かけられてんだよ。罪状はなんだ?」


 鳴海が皮肉交じりに言う。


「大丈夫、自前の手錠だから」


「いや、何が大丈夫なのかわからんが……」


 なぜだろう?

 最近、変質者のエンカウント率が異常に高い気がする。


「白井さんのパンツが欲しいでしょ?」


「ああ、そうだ」


「私が手伝ってあげる」


「何!? それは本当か?」


 考えづらいが、こいつは白井の友達なのだろうか?

 もし、そうなら友達伝いにパンツを入手することができるかもしれない。


「うん、ただし条件が一つある」


「何だ?」


「私と友達になってください」


「オーケー、お安いご用だ。ところで成功率はどのくらいなんだ?」


 日暮は「やった」と小さく飛び跳ねた後、鳴海の前に手を向けて両手でパーを作り、


「100パーセント」


 と自信ありげに答えた。


「素晴らしい! 今日から俺たちは親友だ」


 ただのおかしい奴だと思っていたが、なんて優秀なんだ!


「親友……、やった! 私たち親友だね!」


 日暮は目をキラキラと輝かせ飛び跳ねる。そんなに嬉しいか?


「おう、そうだな。それでさっそくなんだがプランを教えてくれ」


「ねぇ、親友この後、一緒に出かけようよ!」


 話聞けよ


「ん、まあいいけど」


 まぁここで話すのもなんだし焦る必要はない。鳴海は日暮と一緒に学校を出た。


「みんな私のこと変だから、一緒に歩くの恥ずかしいって言って避けるの。ひどいよねー」


 まあ、そりゃ手錠かけてる女の子と歩くのは恥ずかしいだろう。


「鳴海は私と一緒に歩いていて恥ずかしくないの?」


「別にそんな気にならないな」


 少し前の自分なら恥ずかしがっていたかもしれない。だが、鳴海は目的を達成するために大事なものを色々と捨ててきた。今さら、この程度のことで動じることはない。


「さすが、親友」


 日暮はさっきから嬉しそうに同じフレーズを何度も繰り返している。よほど親友と言う響きが気に入ったらしい。


 雑談をしながら歩いていると目的の店に辿り着いた。レンガ造りのレトロな雰囲気の店だった。日暮いわくスイーツが有名な店らしい。


 落ち着いた雰囲気の良い店だ。

 客層はほとんど若い女性で、鳴海と同じ高校の生徒、他校の生徒も大勢いた。案内された席に着くと、日暮が興奮した様子で店内を見回している。


「実は友達と一緒に学校の帰り道にこういうおしゃれな店寄るのが夢だったんだよね」


「そうか、それは良かったな」


 鳴海はメニュー開き目を通す。

 焼きたてふわふわパンケーキ、濃厚クリームチーズケーキ、彩りフルーツの欲張りパフェ


 さて、どれにしようか悩んでいると、


「ねぇねぇ、これ頼もうよ! 鳴海!」


 日暮がはしゃいでメニューに書かれている写真を指さした。

 ミレニアムジャンボパフェ、30分以内に食べきれば無料。写真で見るだけで、明らかに10人前くらいはありそうなボリュームだった。


「馬鹿、やめとけ、こんなに食えるわけないだろ」


「やってみないとわからないじゃん。参加人数は3人までだから2人で頑張ってみようよ」


「いやいや、3人どころか5人で挑戦しても無理だろう」


「えー、やろうよ」


「奢ってやるから、別のにしろよ」


「本当に! さすが親友」


「ああ、お前には大きな借りを作るから事になるからな」


 頼んだものが運ばれて来る間、2人で話していると、遠くの席が賑わっていることに気づいた。

 聞き耳を立てると、どうやら高校生3人組みがミレニアムジャンボパフェを完食したらしい。初の達成者らしく記念撮影をしている。


「いいなぁ。私も伝説を残したかったなぁ」


 日暮がテーブルに突っ伏し不満を漏らす。


「いや、何で成功する前提で話をしてるんだよ」


 注文してから15分ほどすると頼んだものが運ばれてきた。鳴海はパンケーキ、日暮は普通サイズのパフェだ。


「ん〜、美味しい」


 日暮は美味しそうにパフェを食べている。それにしても、手錠をかけられた状態でよく器用に食べれるもんだ。


「そういや、何で俺なんかと友達になろうとしたんだ? 自分で言うのもなんだが女子のパンツを必死に手に入れようとしてるゴミグズ野郎だぞ?」


 もし自分の立場だったとしたら、絶対に友達になろうと思わない。嫌われることはあっても、好意的に来られるのは少し予想外だった。


「んー? 鳴海のSっ気ある目つきと女の子パンツを金の力で手に入れようとする鬼畜さに感銘を受けたからかな」


 日暮が無邪気にパフェを食べながら答える。

 オゥ、クレイジー


「あー、なるほどねー」


 深く追求しても面倒くさいことになりそうなので、鳴海は適当に流すことにした。


「ここだけの話、実は私ドMなの」


 日暮が周りをチラチラと見た後、小さな声でそう言った。


「うん、おおよそ見当はついてたかな」


「さすが親友」


 いや、誰でも察しがつくわ


「てか、そろそろ例の物をどうやって手に入れるのか教えてくれないか?」


「薬を飲まして、昏睡状態にさせた後にパンツを強奪しよう」


「ごっほ、ごっほ!」


 まずい、気管にメロンソーダーが!


「なーんて嘘、嘘! 冗談に決まってるじゃん。それは私の願望だってば」


 笑顔で何言ってるんだこいつ?


「私には鳴海以外にもう一人だけ友達がいて、その子の力を借りようと思うの」


「あ、お前が手助けするわけじゃないんだ」


 自信満々に言っといて、他力本願かよ。


「少し変わった子だけど、きっと鳴海なら仲良くやっていけるよ」


 いや、日暮が言う変わった子とか心配しかないんだけど……

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