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第2話 神の怒り

 自称神様が海に向けて手を差し出した。

 すると大量の海水が重力を無視して見えない力に引き込まれるように宙に浮いた。

 そして、海水が通常ではありえない動きをして巨大な船の形となった。


「どうだ、私の力は! そしてこの美的センス!」


 自称神様はニヤリと口角を上げて自慢げに鳴海を見た。


「マジかよ……」


 神様の存在など微塵も信じていなかった鳴海だが、これほどの超常現象を見せられてはこの自称神様がただの変態ではないと信じざるを得ない。


 神様が指をパチンとならすと、海水で出来た巨大な船は一瞬で形を失い海へと戻った。


「ところで、お前この私の楽しみを邪魔しようとしたな。あげくの果てにこの私の善意を断るとは万死に値する」


「いやいや、神様ともあろうお方がなぜそのような奇行に走ってるんですか?」


 鳴海は当然の疑問を口にした。


「奇行だと? お前にはこの私の崇高な趣味が理解できないのか?」


「ちょっと言ってる意味が分からないです」


「愚かだな、人間は」


「いや、人のパンツを盗んだ挙げ句、変態行為に及ぶほうが十分愚かだと思うんですけど……、法で裁かれるべき立派な犯罪行為ですよ」


 理不尽な言われように鳴海は思わず反論した。


「貴様……、この私を愚弄する気か?」


「いえいえ、滅相もございません。当然のことを言ったまでです」


「かっちーん、貴様のその舐めた態度。もう怒った。めちゃめちゃ怒ったわー、神の裁きを受けるがいい」


 神様が「えいっ」と鳴海に右手を向けて空中にある何かを握る動作をした。

 すると、鳴海の左胸にこれまで経験したこともない激しい痛みが襲いかかった。


「いだだだだっ! あぁぁ……、くっ……、死ぬ死ぬ! 息ができない」


 あまりの激痛に呼吸もままならず、鳴海は砂浜の上でのたうちまわった。


「さらばだ、少年よ」


「いだだだたっ! すみません神様、俺が悪かったです! 俺は神様の崇高な趣味を理解できない愚かな人間です。どうかお許しください世界一美しい女神様ぁぁ!」


 鳴海に落ち度は全くないが必死に謝った。

 すると、痛みがピタリと消失した。


「はぁ、はぁ、ありがとうございます……、神様」


 理不尽だ、理不尽すぎる

 間違ったこと一つも言ってないのに何でこんな目にあわなければならないんだ


「……1番最後になんて言った?」


 神様が頬を少し赤らめながら言った。


「えーと、世界一美しい女神様です」


 悔しいがその言葉だけは本心だった。


「中々見どころがあるではないか。頭の中身はぱっぱらーぱーだか」


「ありがとうございます」


 何とか助かった


「そんなお前にチャンスをやろう」


 えっ、これで終わりじゃないの?


「問おう。パンティーとはなんだ?」


「はい?」


 何言ってるんだこいつは?


「お前の答えによっては許してやらんでもない」


 鳴海は思考を巡らした。

 答えによっては死ぬ可能性もある。


 パンティーとは何か?

 そんなこと深く考えたこともない。

 あんなもの下半身に身につけるただの布だろう。

 普通の人ならそう答える。たが相手は普通ではない。


 くそ、何かヒントはないのか?

 ここで思い出す。神様は確か「崇高な趣味」と言っていた。

 はたから見れば異常者にしか見えない行為だか、神様にとっては気高く品のある物なのだ。


 鳴海は熟考し答えを絞り出した。


「……英知の結晶ですかね」


「何を言ってるんだお前は?  死ね」


「うわー、ちょっと待って!  そんな無慈悲な! どうかお許しください! 世界一美しい女神様! 何でもしますので!」


 くそっ、深読みしすぎたか


「何でもするんだな?」


 神様がジロリと鳴海を見た。


「はい、何でもします」


「いいだろう、お前に試練を与える」


「何でしょうか?」


「白井 花を知ってるな?」


「はい、知ってますけど……、それがどうかしたんですか?」


 白井 花

 鳴海と同じセントバーナード高校の女子生徒だ。

 同じクラスだがあまり接点はなくほとんど話したこともない。


「白井 花のパンティーを持ってくるんだ」


「いやいや、ちょっと待ってください。無理に決まってるじゃないですか!?」


「なんでもやると言ったではないか。それとも死にたいのか?」


「生きたいですけど、そんなことしたら俺が社会的に死んでしまいます! てか、神様ほどのお方なら簡単に手に入れることが可能なのではないですか?」


「確かに私の力を持ってすれば、白井 花のパンティーを手に入れることなど造作もない。ただ……」


「ただ?」


 鳴海は神様の答えを待つ。


「私はどうしても苦労して手に入れたパンツの味を知りたいのだ」


 マジで何言ってんのこいつ?

 バカなの?

 アホなの?

 主食はパンツなの?


「いや、それ苦労するの俺じゃないですか」


「期限は一週間だ」


 ちょっと話勝手に進めないで!

 実行するなんて一言も言ってないんだけど


「もし、期限までにパンツを手に入れれなかったら、どうなるんですか?」


 鳴海は念のためペナルティの確認をした。


「もしお前が試練を達成することができなければお前を滅却した後、お前の故郷を地獄の業火で焼き滅ぼす」


「そこまで!?」


 悪魔かよ

 天使のような見た目からは想像もつかない外道だった。

 というか、そんなおおごとになるほど悪いことした覚えはない。


「それでは、健闘を祈る少年よ」


 こうして鳴海の試練は始まった。

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