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不死の村(ショートショート)

作者: さきら天悟
掲載日:2018/11/23

2027年、ある村が注目を集めた。

G県にある 山深い村だった。

人口は千人以下、主だった産業もない、

いわゆる過疎の村だった。

確かにそれまで人口は減り続けていたが、

ここ数年増えている。

この噂を聞きつけた老人が来るのだった。

そのおかげか、村の税制は黒字になったという。

だが、移住者は老人のみで、若者なく、

所得税の増収はなかったのだが。

それに、老人ならば医療費、介護費が発生するはずなのだが・・・



2023年のことだった。

25歳のAが、この村の村長に立候補した。

「1年でこの村の財政を黒字にします。

それまでは、既定の報酬はいりません。

300万円で結構です。

ただし、黒字になったら、それに見合った報酬をいただきます」

800万円の村長の報酬はいらないということが話題になり、

彼は村長に当選した。

でも、村人は、IT社長の彼が若い人を村に呼び込んでくれることを期待の一面もあった。

だが、彼がAI開発者の中で、異端児と眉をひそめられていることは知らなかった。

それは人間の脳を人工知能(AI)に移植するという・・・





2025年、Aは宣言した。


「変わらない意志を持つAIに人権を認める」


彼は一つ間を作った。


「そんなAIは我々の村民である」


『変わらない意志』とは生前の人という意味であり、

まったく新たに作り出された、意志を持つAIに対してではなかった。

人間の意志を移植したAIということだった。

もちろん、厳正な審査をすると彼は付け加えた。



村人は信じなかった。

しかし、移住者が後をたたず、

しかも、病院や介護施設も建設されたのだった。





3年後、彼の村長報酬は3千万円を超えていた。

それでも税収は黒字で、村民にも30万円相当の商品券が配られた。

ただし、AI村民には支給されなかった。

しかし、AI村民からは不公平だという不満不平は出なかった。

厳正な村役人の審査のタマモノともいえた。







今も、厳正な審査が続けられている。


「あなたは山田太郎さんですよね」

審査官が質問する。


『はい』

山田太郎さんAIは端末から答える。


「職業は農業でしたか」


『はい』


数十分後、審査官は最後の質問をした。


「あなたは今幸せですか」


『はい』


と山田太郎さんAIは答えた。

これにより、AIへの意志の移植が認定されたのだった。


『はい』としか答えていないって?

というあるメディアの質問に対し、


「村人はシャイだから」

と村長のAは答えた。


「隣の山田太郎さんに間違いない」

87歳の老婆も証言していた。




村人は、すでにAのカラクリを知っていた。

死んだ人を生きていたことにすれば、

年金が支給され、住民税が村に入る。

それに人口も確保されれば国からの補助金も入る。

そして、死ねば医療費も介護費をかからないから財政に負担をかけない。

村人はAの『不死の村』という真意を理解していた。

『人が死なない』とう意味ではなかった。

『村を死なせない』という。






彼は、離婚した両親の元を離れ、祖母の過疎の村で育っていた。


「過疎の村を放置した国のツケだな」


と呟いた。

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