もみじの木の枝
秋が来る、少しずつ布団の厚みが増してくる。
夏が行く、半袖の出番は徐々に減っていく。
スマートフォンの写真ばかりが増えていく。
脳みそにあった記憶たちは無情に消えていく。
舌が感じた特別な味も、
きっと本当は忘れている、覚えているつもりでも。
私以外、読むはずのない文章
私は今日も書いている、何かに縛られている。
私を縛る紐の先は、他の誰でもない、
私の右手が握っている。力はまだある。
左手にははさみがあって、それでも切らず、
ほどきもせず、まだ縛りつづけている。
無意味だ、とってもとっても無意味だ。
わかっているけれどやめられない。
麻薬みたいだ、でも無害な罪だ。
無害だからやめられない、終わりがない。
美化された思い出だけが残っている。
都合のいいように、脳は働き続ける。
また違う秋の訪れに、心は戸惑ったまま。