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1-6

 俺はあれからダンジョンに二時間程潜り、出会ったモンスターを倒してお金と素材集めをしていた。

 ある程度の生活費の足しにはなっただろう。

 その後、稼いだお金を組の人に渡して俺はログアウトした。

 どうやらあちらの体感時間で一ヵ月程は、プレイヤーの姿は残らずに消えるというのは認知されているようだ。

 なので、俺がいない間の組の管理をお願いした。

 

 ログアウトした俺は、頭に被っていたヘルメット型のゲームギアを取り外す。

 どうやら時間としてはまだ深夜を回っておらず、ゲーム内では本当に時間が加速しているのだと実感した。

 さて、明日も仕事あるしそろそろ寝るとするか。



「ふぁーぁ……眠ぃ……」

「おい智哉、お前まさか……」

「察しがいいな。三時ぐらいまでやってたわ」

 

 こいつ……。

 やっぱり仕事舐めてるんじゃ……。

 すると俺と智哉のデスクにお茶が置かれた。


「あの……お茶……どうぞ……」

「あっ飯野さんありがとう」

「あんがとよ」

「いえっ……!」


 女性の同僚である飯野 紗希さんだ。

 物静かだが仕事はきっちりと熟し、部下の面倒もよく見ており人望もある。


「わざわざお茶入れてくれてありがとう」

「いえっ……私も喉が渇いていたので……」

「あーっお茶うめー!」

「よし柏木、目ぇ覚めたようだな。ならさっさと仕事しろ!」

「ひっ! 部長!? すぐやります!」


 おっと、部長の雷が落ちたようだ。

 その雷のおかげで、智哉が慌てて仕事に取り掛かった。

 さて、俺も仕事に戻るか。


「……」

「ん? 飯野さんどうかした?」

「! いえっ! なんでもありません……!」

「そう……?」


 飯野さんが俺の方を見ていたような気がするが……。

 もしや俺は彼女に何かしてしまったのだろうか……?

 それならそれで早めに謝った方がいいだろう。

 しかし、恨みなどそういった視線ではないと感じた。

 それならそれで一体何なのだろう……。

 でも……飯野さんと誰かが被る気がするんだよなぁ……。

 俺の気のせいだろうか?


 仕事も終わり、特に寄るところもないのでそのまま帰宅した俺は、飯と風呂を済ませてゲームギアを頭に装着する。


「ゲームスタート」


 やっぱりこのログイン時の感覚はまだ慣れないなぁ……。



 ログインした俺は、前回ログアウトした屋敷の前にいた。

 俺がログインした事に気づいた組の足軽が俺に声を掛けてきた。


「頭、戻って来たんですね」

「あぁ、留守にして悪かった」

「いえいえ、大丈夫です」


 どうやら俺がいない間も屋敷の管理をきちんとしていてくれたらしい。


「そうだ、時間があれば少し情報を集めてくれないか?」

「情報ですか?」

「俺はこっちに来たばっかりだからあんまり情勢がわからないんだ。だから合戦が起こりそうな雰囲気があるとか、その場所はどこかといった情報を集めてほしいんだ」

「わかりやした。頭が稼いできたお金のおかげで少しは余裕が出てますし、城の手伝いで稼がなくても一週間ぐらいなら大丈夫でさ」

「じゃあ情報収集に二、三人程出てもらえるか? 残りは屋敷の管理を頼む」

「わかりやした。じゃあ適当に声掛けて行ってきやす」


 さて、じゃあ俺は皆の稼ぎの分働くとするか。


 前日と同様、二時間ほどダンジョンに籠って素材を手に入れた俺は、今日は市場の方で素材を売ろうと考え市に来た。

 流石尾張の本城の清州といったところだろう。

 市は活気づいており、人もかなり多い。

 ダンジョンで手に入れた銅や青銅、更に鉄も手に入ったのでそれらを売れる店を探す。


「とはいえ、売れるとしたら鍛冶屋だろうし、そこをまず探さないとな」


 しばらく市を回っていると、屋根から煙が立っている工房っぽい家を見つけた。


「すいません、金属を売りたいんですが」

「あぁん!」


 ……何故ヤンキー座りしてるおっさんにメンチ切られたんだろう……。

 ヤンキー座りしていたおっさんは立ち上がり、俺の方に近づいてきた。


「テメェ……どの金属売りに来たんだ!」

「えっと……銅と青銅と鉄のインゴットですけど……」

「個数は!」

「銅が4、青銅2の鉄1ですが……」

「銅一つで5文、青銅一つで10文、鉄一つで30文ってとこだが、どうすんだ!」


 どうすんだって言われても物価がわからないから安いのか高いのかが……。

 まぁ今回は勉強という形で売らせてもらおう。


「わかりました。全部売ります」

「なら金属この机の上に出しやがれ!」


 俺は言われた通りに手持ちの金属を全部机の上に置く。

 おっさんは置かれた金属をじっと見る。


「ふん……大きさも意外にあるな。これなら銅一つ7文、青銅一つ12文、鉄35ってどこだろう」


 えっと、元々70文だったのが87文になったのか。

 結構上がったな。


「じゃあそれでお願いします」

「……お前さん外来人だろ?」

「そうですが……?」

「騙されてるとは思わんのか?」

「騙そうとしてる人はそうは言わないと思いますが?」

「……」


 おっさんが渋い顔をする。

 もしや何か琴線に触れてしまったか……?


「っく……ガハハハハハ!」

「えっ?」


 おっさんは怒るわけでもなく、突然笑いだした。

 俺は一体何が何だかわからず、ただ茫然としていた。


「おい若ぇの! 気に入った! 名前は何てんだ?」

「おっ俺は毛利スグルって言います」

「俺は権蔵だ。よろしくな! スグル!」

「よろしくお願いします」


 何故か俺は鍛冶師の権六と知り合いになった。


「まぁ金属売りたきゃ持ってこい。あと作ってほしいもんあるならな」

「どんなものまで作れるんですか?」

「武器はもちろん道具も作ってやるぞ」

「へー、色々作れるんだな……」

「まぁ今作りたいのは種子島だがな。材料がねえから作りたくても作れねえけどな」

「……はい?」


 今何かの聞き間違いかな?


「種子島だよ。外来人のスグルならわかんだろ?」

「えっと……種子島ってあの……凄い音が鳴って弓よりも飛距離が出る物ですよね?」

「おう、そうだが?」

「いやいやいやいや! 種子島作れる鍛冶屋って鉄砲鍛冶師じゃないの!?」

「一通り学んだからな。作ろうと思えば作れるぞ」

「何でも作れるって言って種子島まで作れるってどういうことだよ!?」


 あまりの衝撃につい相手が年上という事を忘れてタメ口で話してしまう。


「まぁ俺一人だからかなり時間は掛かるがな。だが孫六にも負けるつもりはねえぞ!」

「孫六って……?」

「あぁ、関の孫六だよ。二代目のな」


 関の孫六ってあの刀鍛冶で有名な……?


「権六……お前何者なんだよ……」

「何って……昔関で鍛冶を学び、その後種子島の作り方も知ったしがない鍛冶師だ」


 いやいや、しがないの領域越してるだろうが!

 むしろこんな鍛冶師がいたなんて聞いたことねえぞ!?

 創作か!? 創作上の人物なんだよな!?


「まぁ何かありゃ俺を頼れ。ある程度は許容してやるからな。ハッハッハ!」

「お……おう……」


 気が付いたら屋敷の前に到着していたが、あまりの衝撃に脳が追いつかない。

 種子島作れる鍛冶師がこんな近くにいるとは……。

 頭がいてぇ……。

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