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 屋敷の案内人が来るまで、俺は裕哉とともに城内を回って配置を覚えていた。


「聞いたことない城だったが、結構堀も深いししっかりしてんだな」

「まぁ防衛の観点から堀は深くないといけないしな。前線ということではないけど、信濃辺りから攻められるとここが清州と那古野の防衛前線になるしな。そういう事も考えてるんだろ」


 前線じゃないからと言って防衛設備を怠ってはいけないってことか。

 なるほど勉強になる。


「そういやMMOと言えばギルドとかの集まりが定番だけど、このゲームはそういうのはないのか?」

「そういや説明してなかったな。ちょっと机があるところに行くか」


 俺は裕哉に机が置いてある部屋に案内してもらい、裕也はその机の上にアイテムボックスから取り出した地図を広げた。

 地図には旧日本各国の地名が書いており、一目でどこがどこの領土か判断できた。


「すげえな。勢力図までわかるのか」

「すげえだろ。俺が手に入れたレア物の地図だぜ。まぁ国に入ってきた情報で更新されるっつーもんだけどな」

「それでも十分だろ。一目で勢力図がわかるんだから」


 どこがどこの領土ってわかるのはすげえと思うわ。

 この時代地形把握するだけでもかなりの価値あるしな。


「そういやギルドについての説明で出したんだったな」

「あぁ。んでこの地図と何か関係があんのか?」

「まぁ地図見ての方が説明しやすいしな」


 裕哉はまず東北を指差して説明を始めた。


「大小かなりのギルドがいるが、今回は大規模なギルドだけ説明するわ。まぁこの世界じゃギルドじゃなくて衆っていうんだけどな」

「衆?」

「有名どころで説明すりゃ風魔衆とか川並衆とかだな。それをギルドと同様の意味で利用している」

「作り方とかはあるのか?」

「まぁ条件はいくつかあるが、まず城持ちか領地持ちってとこだな。後は二名以上で且つ国に申請して許可される事で結成できる。正直城持ち領土持ちの方が難しいんだけどな」


 まぁこの世界にはそういう共同施設とかなさそうだしな。

 でも国に申請って……。

 場合によっては却下される事もあんのか……。


「じゃあまずは東北からだな。東北は伊達家に所属している政宗衆と小十郎衆だ」

「二つあるのか」

「まぁ所謂歴女とか腐女子が所属している。正直俺は関わりたくねえ……」


 そりゃ自分からそっち方面の女性たちに近づきたくねえわな。

 何が地雷になるかわかんねえしな。


「次に越後の護法四天衆だ。こいつらは四つの組織に分かれてるかなり規模が大きいところだ。ただ、越後は内乱が多い国だからあまり外には出ていない」

「越後も大変だったらしいしなぁ……」


 あそこは晴景や政景たちによる家督相続事件があるからなぁ。

 そういうのでゴタゴタなんだろう。


「えーっと次は関東方面にしとくか。北条側の相模衆と佐竹側の北関東衆がお互いに争っているな」

「まぁ北条の相模衆はわかるが、佐竹の北関東衆ってどういうことだよ……」

「たんに東京神奈川からディスられてる恨みで付けてんじゃね?」

「ただの偏見じゃねえか!」


 全く……そんな名前でプレイして後悔しないのかよ……。


「続けるぞー。次は甲斐だ。ここは諏訪衆と八坂衆の二つを合わせて守矢衆っていう少し変わったのがいる」

「別に元々一つのでそこから分けりゃよかったんじゃね?」

「さぁな。細かいことはわかんね。んで次は徳川と尾張だな。お互い中規模がいくつもある形で、これっていう衆は決まってないのが現状だ」


 まぁ最終的な勝者の徳川か、時代の覇者の織田かってことで人も多いんだろう。

 その分人がばらけたため、一大組織ということにはなっていないんだろう。


「あとこっからは近畿はあんまり目立つところはなくて、毛利と長宗我部ぐらいだな」

「尼子とかはありそうだと思ったんだけどな」


 結構人気ありそうだし。


「あるっちゃあるがまぁ中規模程度だな。いかんせん大規模とは言えん。それで毛利には三矢衆、長宗我部には鬼ヶ島衆ってのがいる」

「三本の矢に鬼の住む島って……まぁわかりやすいけどな」

「まぁそんなところだな」

「ん? 九州はないのか?」


 俺が問うと、裕哉は渋い顔をする。

 何か言いたくない事でもあるのだろうか。


「九州はまぁ正直関わりないだろうし説明はいいかなって思ったんだが……聞きたいか?」

「まぁ……そりゃ一応……」


 裕哉はため息を付きつつ頭を掻いて説明をし始めた。


「九州には大友、竜造寺、島津の三つにそれぞれ大規模なところがある。大友には西国衆。竜造寺には天草衆がいる」

「それで、島津は?」

「まぁ正確に言えば島津に所属しているところは大規模じゃねえんだよ」

「どういう意味だ?」

「島津には三本刀って呼ばれてる軍事、内政、諜報担当に分かれた三人組のプレイヤーがいるんだが、その内の一人が率いているのが首狩り衆っていうところだ。規模で言えば中規模ぐらいか」

「お前が説明を渋ってるその首狩り衆になんかあんのか?」

「まぁ特殊っちゃ特殊なんだよ。首狩り衆は忍の集団なんだよ」


 それなら風魔衆とかと変わらなくないか?


「んで、プレイヤーが作る衆ってのは、普通はプレイヤーで固まるのが当たり前なんだよ。それにも関わらず、NPCも所属してるんだよ。しかも自主的に」

「はいっ!?」


 雇うとかならともかく、自主的にってどういうことだよ!?


「しかもその三本刀、城持ちランキングでトップ張ってんだよ……」

「えっ? 中規模なのにトップ? なんでだ?」

「詳しい事はわからねえけど、所属の城が佐土原城なんだよ……伊藤家の本城だったところ……」


 ……おおっと。

 あまりの衝撃に一瞬フリーズしてしまった。

 って本城!? 普通に重要拠点だろそこ!?


「なっなぁ……普通プレイヤーって小さな城とか重要じゃない城任されるんだよな……?」

「あぁ。当時はチートだのなんだのといった事が飛び回ったが、運営がそれを否定してたからな。実力で手に入れたって事なんだろ」

「それにしても本城貰えるって……何したらそうなるんだ……?」

「ただ城代として所属してて、一国一城の主っていうわけじゃねえとは思うけどな。まぁ噂によると、初陣で敵左翼か右翼大将の首取ったらしいぞ。乱戦とかじゃなくて戦闘開始直後に奇襲で首切ったんだってよ。周りの兵ガン無視して」

「マジかよ……」


 種子島で狙ったとかじゃなくて、兵に守られてる大将の首取るって……。


「何もんだよそいつ……」

「しかもそいつ女だってよ」


 女で首取るってどういうことだよ!?

 違う意味で驚きだわ!


「まぁ、そんな事で非常識的なやつらの話はお前のためを思って話さないでおいたんだ。変な真似されても困るからな」

「誰もんな真似しねえよ……」

「まぁそんな感じでその三本刀は次々に活躍して本城貰ったんだろ」

「でもそんな情報聞いたら真似しようとしたやつもいるだろ?」

「だから言わなかったんだよ。真似しようとして大失敗して切腹……プレイヤーだからそこまではいかないが、足軽にされて更に出世が見込めないままのやつも結構数……」


 うわぁ……。

 欲をかいて自滅したやつらが多いんじゃ、裕哉も言いたくないのはわかるわ……。


「あとダンジョンあるだろ?」

「あぁ。ってまだ何かあるのかよ……」

「あのダンジョン、深層ダンジョンといったやつでな。深くなればなるほどレアな素材やアイテム、材料が手に入るようになってるんだよ」

「……まさか……」


 今までのとんでも話を聞いて俺は察する。


「察したようだな。そいつら……って言ってもその内の戦闘面の二人だけどな。結構深くまで潜ってるんだよ」

「つまり、その深層まで潜って手に入れた素材で更に強くなっていると……?」


 裕哉はゆっくりと頷いた。

 マジかよ……。

 俺も深層行けるぐらいに強くなりたいわ……。


「そのせいで鬼島津とは別に、その三本刀たちの集団の事を修羅島津とか呼んでいたりとかもあるとか……」

「もう完全に方面軍じゃねえか!」


 リリース一年で方面軍ってどういう事だよ!

 もうツッコミが追いつかねえよ!


「まっ、九州はほっておけ。どうせ関わりにはならん。……戦闘面では……」

「おい待て。今ぼそっと何言った」


 俺は聞き逃さなかったぞ。

 去ろうとした裕哉の肩をがしっと掴んで逃がさないようにする。


「いやぁ……その……。……実はその三本刀所属の交易船がたまーに尾張に交易を……」

「そういう重要な事は早く言え!」


 知らずに争ったら大変なことになるだろ!

 あっぶねえなぁ……。

 とりあえず裕哉にその交易船の旗印とかマークを聞いておいた。

 これでそこと間違っても争ったりすることはない……だろう……。


「でもダンジョンで手に入れたアイテムとかは交易で売ったりすることもあるから、結局はどっかしらで関わる事になると思うけどな。ハッハッハ」

「マジかよ……」


 あまり過激なところとは関わりたくないんだけどな……。

 しかも修羅島津だろ……?

 どれだけ殺人マシーン的なやつらがいることやら……。

 そしてトップを張ってる三本刀ってやつら……。

 その中でも首狩り衆っていう忍集団を率いている女って一体どんなやつなんだろうか……。

 首を平然と取る女なんて、どうせ暗い感じのヒステリー女なんだろう。

 ……すげえヤンデレ臭がするぞ……偏見だけど。

ギルド名を日本風に考えるのは難しい……(真顔

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