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ここがゲーム世界……か……?」
真っ白な空間で何もないが……本当に俺はログインしたのだろうか?
「ようこそ、虎嘯へ」
「うおっ!?」
急に背後から声を掛けられてびっくりして後ろを向く。
するとそこには、スーツ姿の女性が立っていた。
「ではまずはキャラ作成からお願いします」
女性が指をパチンと鳴らすと、俺の横に自分を鏡で見ているような姿が現れた。
「プライバシー保護のため、最低でも目の色や髪の長さ、もしくは色を変えてください」
目の色はともかく、髪の色か長さかぁ…。
現在髪の色は黒で長さはセミロングなのだが、戦国時代ということだし、あんまり髪の色は変えたくないところだが……。
とはいえ、少し変えればいいということなので、目の色を赤くして髪の長さをショートに変える。
あとは少し顔のパーツを変える。
鼻の高さとかをね。
こうすれば多少は見た目が変わるだろう。
「ありがとうございます。では次はキャラクター名を決めてください。重複している場合はお知らせ致します」
「キャラ名は漢字じゃないとダメとかありますか?」
「いえ、特に決まりはございませんが、漢字平仮名アルファベットのいずれかの組み合わせとなります。一応記号も使えますが、大名などに呼ばれる時にそのように呼ばれますのでご注意ください」
つまり、よくある†をつけるとそういう風に呼ばれたりするのか……。
戦国時代ということなので、漢字は使いたいなとは考えている。
まぁその辺は前々からよく使っていた『スグル』という名前と、被らないように川口を川と口を文字った『毛利』を付けて『毛利 スグル』にする。
「プレイヤ―名『毛利 スグル』様、でよろしいですか?」
「はい、大丈夫です」
女性は俺が決めた名前が重複していないかを確認しているようだ。
「……大丈夫です。重複はしておりません。では虎嘯について説明させていただきます。よろしいでしょうか?」
「お願いします」
女性は一度コホンと息を整えて説明に移る。
「この虎嘯では、プレイヤーの働きによって史実とは違った結果になることもあります。また、プレイヤーが城持ちや大名になることも可能です。そう、全てはプレイヤー様次第となります。ここまではよろしいでしょうか?」
「はい」
まぁここまでは智哉が言ってた事だから理解している。
「虎嘯ではレベルが無く、HPという概念もありません」
「そうすると弱い人でもうまくいけば上位の人を倒せるってことですか?」
「その通りです」
マジでリアル下剋上ができるのか。
まぁ強くなれば逆もありえるってことにもなるのか。
「また虎嘯では、時間の流れが一日で三日となります。そのため、現在は1566年となっております。そしてこのゲームでは、一定時間プレイすると自動的にプレイヤーのAIが作られます。そのため、AIが作られるまでは通常のゲーム同様アバターが消失します」
「確か不在時に自動で動いてくれるんですよね?」
「その通りです。どうしても合戦などで時間が取られてしまうため、このような措置となっております。ですが、基本的にはプレイヤーの活動や考えを元に行動するため、普段しないような行動は取らず、更にNPCも中身がいないと判断して普段とは異なる扱いをされる事もあるので、その点はご了承ください。なお、不在時の行動についてはログが残りますのでそちらでご確認ください」
確かに合戦って言っても何日も拘束されるものもあるしな。
その意味でAIができるようにされているのだろう。
でも自分の活動や考えを元に作成されるってのはちょっと怖いな……。
「そしてプレイヤーにはそれぞれスタイル――職業が存在します」
「それはつまり、RPGでいう戦士とか魔法使いってことですか?」
「簡単に言えばそうなります。そして職業には武士、武将、軍師、文官、忍、農民、職人、商人、僧、能楽師と分かれております。また、その職業によって上昇しやすいステータスも異なります。ステータスには統率、政治、知力、筋力、武力、敏捷、器用、運、魅力の9種類があります」
女性がそう言うと、職業とどのステータスが上昇しやすいかの一覧表と各ステータスの説明が現れた。
武士 筋力↑ 武力↑ 敏捷↑
武将 統率↑ 武力↑ 魅力↑
軍師 統率↑ 知力↑ 政治↑
文官 知力↑ 政治↑ 器用↑
忍 統率↑ 武力↑ 敏捷↑
農民 筋力↑ 器用↑ 運↑
職人 筋力↑ 器用↑ 魅力↑
商人 知力↑ 敏捷↑ 運↑
僧 武力↑ 政治↑ 魅力↑
能楽師 政治↑ 運↑ 魅力↑
統率:指揮等に影響。
政治:政治等に影響。
知力:作戦等に影響
筋力:重量等に影響。
武力:戦闘等に影響。
敏捷:移動速度等に影響。
器用:生産等に影響。
運:運に影響。
魅力:人望等に影響。
10職業に9ステータスか。
これは結構悩むかも。
って、結構アバウトだなこの説明文。
「ちなみに、知力や政治が低いとどんな事になるんですか?」
「簡単に言えば、大した知識もないのにその意見が採用されるのか、ということです。ただし、信頼されていれば知力や政治が低くても、意見が採用されることはあります」
「それは……御もっともです……」
確かに、ロクな考えもないのに採用されるとも思えないもんな。
ようは信用してほしければ頑張れってことだな。
と言っても、俺には軍師とか文官とかはできないし、サブ職業っぽい農民や職人、商人などは無理だから、どうしても武士、武将、忍の三択になるんだよな。
まぁ後々の事を考えて城持ちになるとすると、武将がいいのかねぇ?
結果的に一択となり、俺は武将を選んだ。
「では職業は武将でよろしいですね?」
「はい」
「では最後に所属する国となりますが……スグル様は紹介IDを使用されており、所属が織田家となっておりますがどうなされますか?」
「あっ、そのまま織田家でお願いします」
「かしこまりました。では開始地点は清州城下となります」
清州って確か織田家の本城だっけ?
智哉にどこに行くとか言ってないけど、スタート地点はわかってるだろうしたぶん来てくれるだろう。
「はい、大丈夫です」
「では、ご武運をお祈りいたします」
そう言って俺は真っ白な空間から飛ばされた。