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第80話 書き換えられし真実

 俺たちはスザクからガルーダに乗り換え、マグレーディへと戻る。

 ツアーに満足したのか、村上の機嫌が良い。

 マグレーディに帰るまでの約30分間、俺とヤツは一度も喧嘩をしなかった。 

 5日前までは殺し合いに発展するぐらい仲が悪かったのに、人は変わるもんだね。

 もちろん、仲良く話をするなんてことは、なかったけど。

 

 マグレーディの港に到着し、すぐに村上を連れて城へと向かった。

 ヴィルモン王都の騒動がどうなったかで、村上をどのように人間界惑星へ返すかが変わってくる。

 そのため、ヤンに現状を聞く必要があるのだ。


「アイサカさんとロミーちゃん、ミードン、お帰りなさい」

「ただいま」

「ただいまです」

「ニャー」


 城の玄関には、すでにヤンが待っていてくれた。

 彼は俺たちとの挨拶を済ますと、すぐに村上に視線を向ける。


「ムラカミさん、魔界惑星はどうでしたか?」


 美少女な見た目で可愛らしい微笑みを浮かべ、質問するヤン。

 やっぱり男には見えない。

 お姉さんも女には見えなかったし、どんなDNAなんだろうか。


「いや〜超楽しかったわ〜、最高だったわ〜。もう一度行きてえぐらい」


 明らかにヤンに対してデレデレしながら、なんとも軽い調子の村上。

 ちょっと前まで、魔族は野蛮な下等生物とか言ってたんだがな、コイツ。

 ホントに単純なヤツだよ。

 リシャールや各国王様に利用されるのも頷ける。


「非常に興味深い旅であった。この経験は、必ず役に立つだろう」


 村上と比べると、リュシエンヌはなんて常識人なんだ。

 妙な安心感がある。

 ただし、さっきからどうも、ミードンを眺めたがるんだよな。

 可愛い物好きにミードンはたまらないんだろう。


「楽しんでいただけて何よりです。実のところ、こっちはいろいろとありましてねぇ。ま、詳しい話は会議室で」


 なんとも気になることを言ってから、ヤンは踵を返し会議室へと向かう。

 俺たちも彼を追って、会議室へと向かった。


「どうぞ、座ってくださいねぇ」


 会議室にはすぐに到着し、ヤンに勧められた通り椅子に座る。

 マグレーディ城の椅子って座り心地が良いんだよな。

 フカフカのクッションは最高だね。


 全員が椅子に座ると、ヤンが口を開く。

 人間界惑星で何があったのか、その説明だ。


「アイサカさんたちがヴィルモン王都を爆走した事件、意外な結末を迎えています」


 アストンマーティンであれだけ走り回れば、騒動にはなっているはず。

 それにヴィルモンがどのように対応したのか、気になっていた。

 しかし意外な結末とは、どういうことだろうか。

 変なことになってないと良いけど。


「アイサカさん、モイラーって覚えてますかぁ?」


 いきなりの質問。

 俺は頭をひねった。

 モイラーって、誰だっけ?


「ロンレンさんとはじめて出会ったとき、私たちを襲ってきた犯罪集団のボスですよ」

「ああ、アイツか」


 ロミリアのおかげで思い出すことができた。

 あの世紀末マフィアの、葉巻が似合いそうなチンピラボスか。

 なんとも懐かしい人物だ。

 まさかその名をもう一度聞くことになろうとはな。


「で、そのモイラーがどうした?」

「死にました。元老院によって処刑されたんです」

「……そうか」


 まあ、驚く程のことじゃない。

 アイツは超大陸全体に広がっていた犯罪集団のボスだ。

 罪状からして、処刑されるのは当然だろう。


「モイラーが処刑されただと! そんな、予定では来年のはずだ!」

「え? リュシエンヌさん、どういうことですか?」

「犯罪集団の情報を得るため、モイラーの処刑は先延ばしにされていたのだ。それが、どうしてこんなに早く……」


 本気で驚くリュシエンヌ。

 しかし、それが俺らの馬車チェイス騒動とどう関係するのか。

 その答えを、ヤンは口にする。

 

「モイラーは牢獄を抜け出し、ヤン商店から盗んだ馬車に乗ってぇ、ヴィルモン王都を逃走したそうですよ。彼は北壁から逃げたとか」

「……それってまさか」

「ええ、アイサカさんたちの逃走劇はぁ、モイラーの逃走劇として処理されました」


 なんてこったい。

 俺たちの馬車チェイスは、モイラーの逃走劇にされたのか。

 いやでも、どういうことだ?

 まさか俺たちが村上を拉致するのと同時に、モイラーも逃げたのだろうか。


「待て、モイラーはあの牢獄を抜け出したというのか? それは不可能だ」


 今度は驚きというよりも、不審そうな表情の方が強いリュシエンヌ。

 彼女は女騎士であり、ヴィルモンの御偉いだ。

 牢獄については詳しいはず。

 そのリュシエンヌがこう言うんだから、何かあるんだな。


「まあまあ、話を聞いてくださいよぉ」


 不審がるリュシエンヌに、ヤンはそう言うだけ。

 彼は話を続けた。


「モイラーの話にはまだ続きがありましてねぇ。モイラーはサルローナで逮捕され、ヴィルモンに連れてこられるなり問答無用で処刑されました。ついでに、サルローナ王がモイラーを庇った容疑で逮捕され、現在は元老院でサルローナ王追放について審議中です」


 ちょっと待って、サルローナ王が逮捕された?

 マジかよおい、大事件に発展してるじゃないか。

 つうかなんでだ?

 なんでサルローナ王はモイラーを庇った?


「元老院にも、モイラーの集団と関わりを持つ人物がいるとは、昔から噂されていました。今回の件で、その人物がサルローナ王であったと決定されたんですねぇ。牢獄からモイラーを逃がしたのも、サルローナ王の部下だったとされています」


 そうだったのかよ。

 あの王様、感情的だから嫌いだったけど、ホントにダメなヤツだったんだな。


「ただし、状況証拠しかありません。サルローナ王も容疑を否定しています。リシャール陛下は、それでもサルローナ王を追放させる気らしいですけどねぇ。当然です。ここでサルローナ王が追放になれば、ヴィルモンの影響力はさらに大きくなりますから」


 それはマズい。

 サルローナ派閥が元老院から消えたら、それこそ元老院はヴィルモンの独壇場だ。

 まるでリシャールの望み通りの展開だな。


 ううん、何かがおかしい。

 仮にサルローナ王が黒だとしても、モイラーの逃走と俺たちの馬車チェイスが一緒くたにされたのは納得できない。

 モイラーは逮捕されたんだから、共和国騎士団は彼を最後まで追っていたはずだ。

 そうすると、俺たちは共和国騎士団から逃げ延びたんだから、別々の事件として扱われるはず。

 妙に怪しい。


「なあヤン、まさかモイラーの逃走って、俺たちの起こした騒ぎを利用したリシャールの自作自演じゃないのか?」


 俺の思いつき。

 これにヤンは、ニヤリと笑った。


「パーシング陛下はそう考えていますよぉ。おそらくサルローナ王を蹴落とすため、アイサカさんたちの騒動を利用し、モイラーをわざと逃がして、事件の真相を書き換えたんだと思われます。サルローナ王は見事にはめられましたねぇ」


 やはりそうなのか。

 いよいよリシャールも手段を選ばなくなってきたな。

 彼の野望は本格的に動き出したと見ていいだろう。


「ついでにサルローナ王は、モイラーを使ったレイモン大臣暗殺未遂事件の容疑者としても、リシャール陛下に追求されていますねぇ。処刑は免れても、一族もろとも追放は確定的です」

「……え? レイモン大臣暗殺〝未遂〟?」


 暗殺未遂ってことは、今も生きてるってことだ。

 レイモン大臣、生きてたのかよ。

 でも、あの怪我でか?

 頭に短剣が刺さってたのに、生き延びたのか?


「良かったですよ、レイモン大臣が死んでいなくて。瀕死状態ではありましたが、どうやら治癒魔法が間に合ったみたいです」

「いやいやいや、ありゃ瀕死じゃなくて即死だって。治癒魔法なんか使ったって意味ないって。頭にスチアの短剣が刺さったんだぞ」

「スッチーが急所を外した可能性もありますよ」

「アイツがそんなミスするか?」

「ううん……言われてみるとおかしいですねぇ。ちょっと調べてみます」

「頼む」


 レイモン大臣が死んでいたのなら、サルローナ王の罪が重くなるんだから、リシャールにとって悪いことではない。

 だから、死んでいるのを隠す必要はない。

 ってことは、レイモンは本当に生きていることになる。

 影武者とかの可能性も少ない。

 真相の解明が急がれるな。


「なあ、せっかくならもう1つ調べてほしいことがある」

「なんです?」

「元老院は先代異世界者の排除を決定し、先代異世界者2人を殺害した。先代異世界者のササキはこう言っているんだが、本当なのかどうか確かめたい」

「それ、本当だったらとんでもないことですねぇ。分かりました、パーシング陛下に聞いてみます」

「ありがと」


 久保田はササキの言葉を信じて魔界惑星にいる。

 もしササキの言葉がウソだとしたら、久保田が危険かもしれない。

 念には念をだ。


「リシャールさんがそんなことするなんて、信じらんねえ……」

「陛下は元々、強硬なことをする方だ。しかしこれは、やりすぎではないか……」


 ヤンの話を聞いて、村上とリュシエンヌが困惑している。

 今まで正しいと思っていた存在に対する疑念。

 困惑するのも当然だ。

 これはある意味、俺たちにとって都合のいい反応とも言えるのだが。


「なんだか、いろいろと動いてきましたね」

「ああ」

「分からないことがあったらなんでも聞いてください。私は使い魔ですから」

「……どうしたんだ、いきなり」

「いえ、これから何が起こるか分からないので」


 そういうのは死亡フラグみたいだからやめてほしい。

 やめてほしいけど、そう言ってくれると嬉しいのも事実だな。

 本当に優しい子だよ、ロミリアは。

 彼女が使い魔で助かる。


「おい相坂、てめえを信用はしねえ。けど……敵対もしねえ」


 村上が俺に向かってそう言った。

 妙な意地が見えるが、これで俺たちは敵同士ではなくなったな。


 その後、村上は民間の輸送機で人間界惑星に帰った。

 どうやら彼は、秘密裏の訓練で姿を消していることになっているらしい。

 だから普通に戻っても、特に問題はないそうで。

 もちろん、リシャールに何を聞かれても、俺たちのことは言わない約束だ。

 さすがの村上でも、約束ぐらいは守ってくれるだろう。


 任務は完全に成功した。

 ただし今回は、結果的にリシャールの支配拡大を手伝った形にもなってしまった。

 だから素直に喜ぶことはできない。

 リシャールの狡猾さ、侮ることはできないな。

第7章 エージェント編 完

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