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揺れる
「月村カンナ。15歳。一人っ子です。」
続きの言葉を待っている3人の視線が痛い。
これが私の全てだ、と言ったら引くだろうか。
ある日突然、
友達も学校も将来の夢もなにもかもどうでもよくなって、今ここにいます。
と言ったら、困った顔をするだろうか。
分からなくて、カンナは俯く。
こんなことをいえば早希はきっと、「じゃあ私はどうでもいいものの一つ?」と言うだろう。
アナタは私のたった一つの手放せないもの。
大好きなもの。
ずっと一緒にいてほしいもの。
そして。
カンナの目は自然とヒカルに吸い寄せられていた。
彼はどう思うだろう。
こんな私を好きだと言ったことを後悔するかもしれない。
次の言葉を何か言わなきゃ、言わなきゃと焦れば焦るほど、カンナの口は固く閉ざして開けなくなる。
暑い夏の日差しが、カンナの頬を汗になって伝った。