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初恋  作者: 梅桃さくら
3/6

とめられない想い

はじめて人を好きなった。

はじめて恋を知った。

はじめて悲しみも知った。


初恋。

 自転車は勢いがますます落ちていく。


 この坂、マジでキライ。


 急なだけじゃなく、長いのよ!


 悪態をつきながらも、カンナの顔は笑っていた。



 2年後、あの店で。


 彼の柔らかい表情と温かく頭を撫でる手の温もりが、カンナの身体を駆け抜ける。


 彼はもうついてるだろうか?


 私を待っているだろうか?


 ねぇ、早希?


 早希にはわかる?



 風が少しだけカンナの髪を横切った。




 初めて彼に会った日から一週間、私と早希はずっと一緒に過ごしていた。2人でファストフードでお茶して、ショーウィンドウをブラブラひやかし、ゲームセンターでプリクラを撮った。そして夜は適当に見繕った男の家に転がり込む。学校にも行かず、家にも帰らず、街でうろつく私達には沢山の男が声をかけてくる。


   可愛いね。


   暇なの?


   一緒に遊ぼない?


   君たち、幾ら?


 そんな男の相手をするのは、きまって早希だった。


   可愛い?ありがとう~


   そう、暇なの~


   遊ぶ、遊ぶ。


   幾らって下品~


 早希のペースに乗せられて、気がつくと男たちは私達に寝床は提供しても、それ以上は要求してこなかった。私達は夜遊びしても、ウリはしない。それが私と早希の暗黙の了解。こんなこと、危ないってのはさすがにわかっていた。でも早希がいれば大丈夫、と根気のない想いだけで、私は泊まり歩くのをやめなかった。


「海、いきたくない?」


 何人目かの心優しい下心満載の男の家で、汗臭い布団に横たわりながら早希が呟く。


「水着、ない。」

「水着かぁ~」

「それに海までの足もない。」

「それなら大丈夫!」


 前髪のうねりを気にしてヘアピンで押さえつつ、早希はスマホを開く。


「レイジさんが連れてってくれるって。」


 思わず無言になる私をニヤリと覗きこんだ早希が笑う。


「カンナって、本当に可愛いよね~。」


 耳まで赤くなるのがわかった。


「ヒカルさんのことが気になるんでしょ。」


 どういう意味で?


「好きになりそうとか?」


 私の心の声が聞こえているんですか?早希ちゃん?


「カンナ。」


 いつになく真剣に早希が口を開く。


「避妊はしなよ?」


 汗臭いマクラを早希の顔めがけて投げつけた。



リアルな引っ越しは、要らないモノ捨てたり新しい物買ったりしますが、小説の引っ越しはなぜか手が加えられません。

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