ヒロインになれない少女~ゴメン、それは無理 編~
続きません。
みなさん、こんにちはです。
ここは、『二度寝は、大変危険です!』という少女マンガの世界。
ツンデレな幼馴染とヒロインが紆余曲折の末に結ばれるというなんの捻りもないストーリー。
私は、桜井秋穂。
この少女マンガのヒロイン様です。
そして、少女マンガの桜井秋穂が恋するのは、ツンデレ幼馴染の花隈魁。
私は入学式に参加するためにこの『時枝学園』の校門を通った瞬間に、ここが『二度寝は、大変危険です!』、略して『二度寝!』という少女マンガの世界だと思い出してしまったのです。
入学式の間は先生方のお話を聞くのではなく、思い出した記憶の整理に費やしました。
そう、ここで前世の穴ボコな記憶を思い出すことで弊害が起きました。
私、ツンデレは好きですけど、彼のツンデレは好きじゃなかったのです。
だって、少女マンガでの彼のデレ期は本編終盤まで全くないんですよ。
ツンツン?
いや、あれはツンツンとは言わない。
記憶を思い出す前の私なら恋愛感情を持てたのでしょうけど、メンタルが豆腐並みに脆い前世の私と混じり合った現在の私なら、胃薬必須ですよ。
胃薬を大量に飲みつつ、恋愛成就するヒロインなんていないでしょ!?
もう、誰でもいいからツンデレかもしれないこの幼馴染を私から引き剥がして!
出番ですよ!電波少女さん、転生成り変わりヒロインさん!
私以外にも、転生者がいたっていいでしょ!
始まった学園生活は、幼馴染の花隈君のおかげで肩身の狭い思いをするばかりです。
女子の中にいると針の筵です。
少女マンガのヒロインに転生したのに、なんでどうして私がこんな目に!
ヒロイン特典とかってないのでしょうか?
幼馴染の花隈君は、剣道部で期待の新入部員です。
そして、沈着冷静な部長西院一誠先輩と爽やかな外見で腹黒の副部長烏丸匠先輩のお気に入り。
これはきっと、部活での態度と実力によるところも大きいでしょう。
ちなみに、私のクラス内の位置は女子は妬みと娯楽、男子からは憐れみの視線一択です。大変な奴に付き纏われているなと。
自分のお気に入りの後輩である花隈君が私に付き纏うのが気に入らないのか、私に接触をして来ました。
私は面白がっているクラスにいる友人蛍池紅葉さんを盾にして剣道部のマネージャーの誘いを断りました。即答で。
原作の少女マンガでは、桜井秋穂がマネージャーの誘いを受け、剣道部にいるイケメンな先輩たちと知り合うのです。
現在の私は、バッキリ何かのフラグを折った状態ですね。
だがしかし、あの二人の先輩方のなんの琴線に触れたのか分かりませんが、連日のように剣道部のマネージャーになるように勧誘してきます。
剣道部のマネージャーになるになるよう言われ続けているある日、ナニカが私のお腹に直撃しました。
そしてすぐに、トイレに速足で行く。
それ以降、私は授業中にもトイレに行く女としてクラス内に定着しました。ヒロインなのに。
それから、クラスの女子たちは私に対して一転して同情的な目で見るようになりました。
中には、お腹に優しいハーブティーをくれる子もいます。
心配した担任の大宮かもめ先生からは、愛用しているという胃薬を貰いました。
席替えの時は、教室の後ろの扉横が私の定位置です。
あれから、幼馴染の花隈君を含む剣道部のイケメンたちからの猛攻が続いてきます。
そして胃薬を手に取り、ガリガリと胃薬を食べる私。
胃薬を食べていると、次の授業の数学の山田海帆先生から注意を受ける。
「桜井、胃薬を食べるのは止めなさい」
「でも、先生。胃薬を食べないと飲んでる気はしませんよ」
「胃薬は、そうやって飲むものじゃない」
「私の現状を考えて下さい。身の丈に合わない人たちに付き纏われて、女子の先輩方からは嫉妬を受けてるんですよ。胃薬を食べないとやっていけません!」
「仕方ないな、授業を始めるぞ」
ヒロインなのに、トイレと胃薬がお友だちなんて、なんなんですかこの状況!
トイレと胃薬が友だちになって数ヵ月、大宮先生から嬉しいお知らせがありました。
「喜んで、桜井さん。隣のクラス(幼馴染の花隈君がいるクラスです)に、美少女転入生が来るわよ!これで、きっと彼らも成績優秀な美少女転入生に気が向くわよ。少女マンガの定番設定!うまくいけば、トイレと胃薬から解放されるわよ」
大宮先生の言う通り、数日後には私に付き纏っていたイケメンたちは美少女転入生に堕ちて行きました。
そしてその美少女転入生は『二度寝!』のヒロインの行動を取り、乙女ゲームじゃないのに乙女ゲームのヒロインのように次々と私に付き纏っていたイケメンたちを仕留めていきました。
美少女転入生に、お昼休みの裏庭に呼び出されました。
「あなた、『二度寝!』のヒロインでしょ!私に彼らを取られて悔しくないの!?」
私は彼女が来るまでの自分の状況を切々と語りました。
それを聞くと、美少女転入生は顔を引き攣らせて
「私の邪魔をしないならいいわ!」
といって立ち去りました。
その後、美少女転入生は無事に剣道部のマネージャーになり、私はトイレと胃薬が友だち状態から解放されました。
今、私は当事者で無くなったので美少女転入生と剣道部のイケメンたちの恋愛模様を面白おかしく眺めています。
読んでくださり、ありがとうございました。




