第五十四話 三十路は上からも下からもジェネレーションギャップがあってめんどい
いまなんて言った?
殺してでも奪い取る? どういうことだ? ここにいるってことは陽花さんの関係者……たぶん河童のチャンタさんだろうけど……。
「……あぁ~、すまん。このネタは通じなかったか? 結構おっさんのオタクって聞いてたから通じると思ったんだが」
「へ?」
「いや、古いゲームのネタでよ。「念願の○○を手に入れたぞ」っつったら「殺してでも奪い取る」って返すのが一つのミームなんだよ。すまんな、通じないとは思わんかったんよ」
「そうだったんですか。何事かと思いましたよ」
ほんと、ビビった。そういう冗談は通じることを確認してから言ってほしい。
「まぁ、語感は物騒な感じだしな。こっちの感覚がマヒしていたわ。っと、直で顔合わすのは初めてだな。妖精族、河童のチャンタだ。一応、ここで機工士をやっている」
「? 陽花さんはここに機械設計ができる人災はいないようなことを言ってたんですが……」
「あぁ、俺の専門は電子工学っつーかシステム関連っつーか、要するに魔術回路のあれこれなわけだ、歯車やらなんやらの図面引くのは専門外なんだよ。流石にいくらブーストしたところで、今の手持ちじゃ、あの門を動かせるほどの出力は出ないからよ」
なるほど、そういうことだったのか。てか、直接言ってないのに門のことを言ってる事まで解るって、この人も結構頭いい系の人間だな。
「そういえば機工士が全くいなかったらゲートを修理できませんもんね」
「そういうこった。で? ドリルっつってたよな? 見せてもらってもいいか?」
そういうチャンタさんの目は大きなクマがあるにも関わらず少年のようにきらきらと輝いていた。あ、俺この人とも仲良くなれる気がする。
「いいですよ。まだガワだけなんで回す機構とかは後日ってことになりますけど」
「ぜんぜんかまわねぇよ。つかむしろ回転機構の回路は組ませてほしいくらいなんだが、そこまでは過干渉だよな」
「いえ、俺はそっちが専門外なのでアドバイスなら大歓迎ですけど……はい、これです」
俺は編んだばかりの竹ドリルをチャンタさんに渡す。
「ぶはっ! マジでドリルじゃん。てか、竹でかご編んでドリルって、どうやったらそんな発想に至るわけよ?」
「いや、きわめて順当な思考の帰結だと思いますけど。ドリルは前から欲しかったんで」
「だからって、竹でって……。くくっ、いや、最近竹を何とかするためにフェイロンたちといろいろやってるのは知ってたけどよ。それがこういう形になるとは思わなかったわ」
笑いが止まらないといった様子のチャンタさん。
いや、こうもいい反応をしてくれる人がいると作ったかいがあるってものだ。
「気に入った! ロハで協力してやるから、いつでも相談に来な俺はプレイ中、大抵この工房の奥にいるからよ」
あのゲートをほぼ完ぺきに直した人の協力が得られるのは大きい。ついでに甘えてしまおう。
「じゃあ、早速。他にも作りたいものがあるんですけど……」
明日も仕事なのだけどこういうのは勢いだ。幸い重要な仕事は入っていないし、多少寝不足でもなんとかなる。
俺はプレイ時間を延長して、魔術回路についてレクチャーを受けるのであった。
◇◆◇閑話◇◆◇
「そういえば、それたばこですか?」
「おう、っつってもこっちで栽培したもどきだけどな」
「そんなのもあるんですね、まあ、ステータス以上以外に症状は出ないとはいえ薬やアルコールもあるんだから、おかしくはないか……でもどうして?」
「それをお前が言う? まあいいけど……。いやほら、法規制はされてないとはいえ現実じゃ吸いにくくなったじゃん?」
「そうですね。町中でも吸える場所はもうほとんど見ませんね」
「だっしょ? 俺の職場も全面禁煙になったんだよ。だから、せめてVRではってーことで、陽花に頼んでそれっぽく品種改良した植物をここの一角で育ててもらってるわけ」
「まさか……」
「そっ。俺がこの町にいる理由はタバコが吸えるから」
「そうまでして、吸いたいものなんですか?」
「リアルの体の方は完全に禁煙成功してるんだけど、やっぱずっと合ったもんが無くなるってのは寂しいもんでさ」
「そういうもんですか……」
「そういうもんよ」
ちょっと短いですがきりがいいのでここで切ります。ドリルだけだと思いましたか? 残念、他にもあるのです。せっかくの新素材。二つだけじゃさみしい弟すもんね。
そういえば、このまえ懐メロ番組を見ていて「気が弱くて優しい彼」から「タバコのにおい」がする。という歌詞が出てきて軽くカルチャーショックを受けました。そうか。80、90年代はそうだったのか……と。ジェネレーションギャップってどこに潜んでいるかわかりませんね。俺もいい年なので若い子と話す時は気を付けないと。
では、ここまで読んでくださりありがとうございます。よろしければ今後もお付き合いください。




