第五十三話 〇〇〇を編む
さて、まずは竹の下処理からだな。
この不断竹を切るために竹について調べていて知った事なんだが、竹細工を作るには油抜きという工程が必要などだという。火で焙ったり、苛性ソーダで煮込んだりして竹の油を抜くことで丈夫で色つやの良い竹材になるのだそうだ。
普通の竹は、そこから天日干しするのだけれど、不断竹は油抜きするだけで弾性が増してさらに丈夫になり、さらに火にも強くなることは実験で証明済みだ。
ただその状態だとさらに加工が難しくなるので、通常竹材を仕上げてからパーツを作るのだが、今回はパーツを作ってから油抜きをするという邪道方法で行かせてもらう。
普通の竹ではできないのだが、不断竹はその丈夫さゆえにこの方法を取らざるを得ない。ファンタジーバンブー独特の特性だな。
まず一定の長さに切った不断竹を、縦に細かく割っていき、細いパーツをいくつも作り、それをフェイロンから使用許可をもらった鍛冶用の炉の炭火で慎重に焙っていく。
結構今期と集中力のいる作業だ。何せ油断してるとすぐ燃えてしまうのだ。
……自分が。
いや、だって、俺木製だよ? そりゃ火に近づきすぎると燃えるさ。しかたないね♪
そんなわけで、竹の状態と自分の体に気を使いつつ、細いパーツの油抜きを終えると、次はいよいよ「編み」の作業である。
ま、本命は置いといてまずは手慣らし。
リアルで紙を使って練習したコースターを編んでみる。
ぐ……ぐぐぐ……ビンッ!
新しい事実が判明した。作業用のこのボディでは力が足んなくて、不断竹を曲げることができない。
切ることばかりに集中してて曲げることはしてなかったからなぁ。そりゃちょっとした工業用板バネくらいの強度と弾性があるんだもんな、普通に考えたら相当な力がいる。
まぁ、このくらいであきらめたりはしませんがね。
俺は戦闘用のバーバリアンギアに切り替えると再度挑戦した。こっちのDEXもそれなりに上がってきているのでやってやれないことは無い。
しかしあれだな、作業用のボディも見直さなきゃいけない時期に来ているということか。
そんなことを考えながら指の覚えた形に竹を編んでいく。
そして、ふちを作る段階になって、ふといたずら心が芽生えてきた。
これ、武器になるんじゃね? ……と。
男の子ならわかるはずだ。コースターとか牛乳のキャップとか、とにかく丸くて平べったいものは飛ばしてみたくなるということを!
それにこれから作る本命の物の予行演習になるかもしれない、いつもアイデア倒れだからな俺は。
思いついたら即実行がそれの長所。さっそく、ふちのところをワザと竹の端が外側へ出る様にパターンを改良して編む。
そして、そのでっぱたところを砥石で研いで刃をつけると完成だ。
「バンブーソーディスク。日本語に訳すと竹ノコ円盤ってとこか」
さて、作ったんだから試し打ちしてみないとな。
俺はさっそくディスクシューターにセットすると、適当な木片を取り出して的の代わりにする。
「せめて傷つけるくらいはしてくれよ」
祈るようなワクワクを胸に発射。
ズパンッ! ギンッ!
あ、まっぷた……石壁に跳ね返ってこっちに!?
「危ない!」
突然横から押し倒されて、その上を跳ね返ってきたバンブーそーディスクが通り過ぎていった。
「まったく、マニコに終わったって聞いてきてみれば、何やってんのよ! 最低でも死ぬなって言わなかったっけ私!」
「いや、さすがに死にはしなかったろうけど、でもサンキュなレキ」
レキに助けられる形になったが、バンブーソーディスクの切れ味が予想以上だったことと、今までグラインダーディスクしか飛ばしていなかったせいで目立たなかったけど、ゴムのおかげで実は威力の上がっていたディスクシューターの相乗効果の結果なんだ。予想しろって方が無理。
でも口には出さない。小言が増えるだろうから。
「まぁ、いいわ。で? なにやってたのよ」
「いや、手慣らしに竹細工のコースターを作っていたんだけど途中でふと思いついちまってさ……」
俺の言い訳を聞くとレキはあきれたようにため息をついた。
「はぁ、そういうとこホントにマニコとおんなじよね。いい、思いついてもいったん深呼吸して考えてから行動しなさい」
「……善処します」
「よろしい、それで、作りたかったものってそれなの?」
「いや、さっきも言った通りこれは手慣らしに作ってただけなんだよ。だけどこれがこんだけの威力を発揮したってことは本命もきっと期待できるぜ」
「ふーん、ま、いいけど早く作りなさいよ、作ったら使いたくなるでしょ付き合うわよ」
「いや、結構大物だからな、試作第一業を作ったら時間が無くなると思う。付き合わなくていいぞ」
「……っそ、じゃああたしはもう落ちるわ。いい、くれぐれも気を付けて作業すんのよ!」
そんなオカンみたいなセリフと一緒にレキはログアウトしていった。
それじゃあ、本命を編んでいきますか。
まず円錐状の籠になるようなパターンを作った設計図の通りにパーツを切り出し、油抜き。それから、失敗しつつ編んでいく。さっきよりも形が複雑なので難しいのだ。
いくつかの材料を無駄にしたところで当初のプランを変更。幾分簡単だが丈夫さに劣るパターンにする。
こちらは成功、さっきと同じように竹パーツの端っこが外側に五本のらせん状を描くように出る形で編んでいく。
円錐の頂点は下から延びた竹の端が重なってまとまるように突き出させた。そして、突き出た突起をさっきと同じように一つ一つ研いでいくと……。
ここまでくれば皆さんもうお分かりですね?
「念願のドリルを手に入れたぞ!」
「殺してでも奪い取る」
「ヘァッ!?」
いきなり声をした方を向くと一匹の河童が煙草をくわえてこっちを見ていた。
というわけで今回のサブタイトルは「ドリルを編む」でした。結構語感が気に入ってるんですがネタバレになるので伏字に。
そこまで気にすることもないかもしれませんけどね。
ちなみに普通の竹は油抜きをしてさらに乾燥させるとナタを入れるときに気持ちのよいくらい簡単に割れます。竹を割ったという比喩はこういう事だったのかと感動しますよ
お気に入り千件突破ありがとうございます。というここの一週間の伸びがすごくて、普通にビビッておりました、一日25000PVと華南の冗談だよと。おかげで念願の50万PVが見えてまいりました。これを活力に明日も生きていきます。
では、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。ノシ




