閑話:恋花? はたして咲くのでしょうか?
二話続けて短い閑話ですみません。次から本編に戻ります。
前回と同じくらいの時間軸。U子とレキの会話。
「U子、あんたさー、なんか胡散臭いのよね」
「……んー? 例えばどゆとこ?」
「いや、普通さ、転送されていきなり襲ってきたやつらとつるんだりできないでしょ? 怖いとか思わないの?」
「若いなーレキちゃん。世の中にはもっと陰湿でわけわかんない人間関係だっていっぱいあるよ。それに比べたら「なんかよくわかんないから襲った⇒少しわかったからお互いの利益のために行動しよう」っていうここの行動原理は適度にドライで心地いいくらいだとウチはおもうなぁ」
「……微妙にはぐらかされた気がする」
「そりゃそーじゃん、はぐらかしんてんだから」
「あんたねぇ!」
「あはは、でもいきなり自分の内心明かすほど、ウチもレキちんのこと信頼してないんだよねぇ。でもこうやってお話は出来るし、お互い裏を探りながらちょっとずつ知り合っていけばいいんじゃん?」
「それってなんか汚くない?」
「じゃあ、レキちんは「君のことを全面的に信用するよ。僕のすべてを見ておくれ」って出会っていきなり言ってくる男ってどう思う?」
「気持ち悪いわね。状況にもよるけど一発ぶん殴って二度と近づくなって言いたいわ」
「でしょ? でも、案外これの変形タイプに嵌っちゃう女の子って多いんだよねぇ。大抵詐欺師かへたれかのどっちかなんだけど。って話がそれたかな。でも、だからウチはいきなり全部はさらけ出さないのさ。少しづつがいいんだよ」
「まあ、わからなくもないわ。あたしもいろいろあったし」
「だっしょ? つーわけで、まだウチはここの人たちのことを信用していないんさ」
「じゃあ、なんでここには残ろうって思ったのよ?」
「それは、ちゃんと会話ができたから……かな? ウチの話をちゃんと聞いてくれて、ウチも相手の話を理解できた。なら、仲良くできる可能性はあるじゃん? それを捨てるのはちょっちもったいないかなぁって、そんだけ」
「それだけで、前の人間関係を捨てれるの?」
「ってか、人間関係自体がなかったんだよねぇ。臨時パーティで組む人は別に固定でなかったし、エルフの剣士ってビルド自体邪道だからギルド誘ってくるのはバカそうな直結厨もどきとか偏屈な自称通プレイヤーとかばっかだったからさー」
「変人具合だったら、ここの連中も負けてないと思うけど?」
「行動原理が変かどうかは関係ないっしょ。最初に言った通りそこで重要になってくるのがちゃんとお話ができるかどうかなんだって、ウチの話を無視して自分だけ話そうとしてくるとか、ウチのわかんない話を延々と聞かせるとか、そういうことしない人と偶然知り合えたって運命にちょっと乗っかってお友達を増やしてみようかなって、ちょっち思ったわけよ」
「その割には、仲間になるのは慎重なのね?」
「そりゃそうよ。ウチ、直感は信じる派だけど、全部それに頼って生きてくわけにもいかないっしょ? 間違ってることもあるんだしさ。でも、信用できると思ったから本当に信用できるかどうかの見極め期間なわけ」
「……それでも間違ったらどうするのよ?」
「そんなの、その時になってみないとわからないっしょ。間違わずに生きてくなんてできないんだしさ。間違った時のことばっか考えて生きてると、つまんない人生になるよー」
「説教くさっ……」
「っと、確かにウチらしくはなかったかなー。じゃあ、ウチらしい話をしよう。レキちんは今好きな人とかいるの?」
「はぁ? なにそれ、わけわかんない」
「そっかー、わかんないかー。ま、それも良しじゃん? ちなみに、ウチはいません。でも、ゼットのことはちょっち気になってるかなー」
「……ふぅん、趣味悪いんじゃない?」
「かもねー。でも、だからってすぐにどうこうってほどじゃないんだよねぇ。この居場所は結構気に入ってきてるし、派手に立ち回っておん出されることになるくらいなら、まあ何もしないでおこうかなって感じ?」
「で? それを、あたしに話してどうしようってのよ?」
「別に? これも仲良くなるためのお話しの一環かな。ほら、やっぱ女子トークと言えば恋バナじゃん?」
「悪いけど、それはあたしはパスするわ。そこまで、踏み込んできてほしくはないの」
「んー、じゃあ別の話をしようか。珍しくレキちんから話しかけてきてくれたんだもん。今宵は逃がさんぜよー?」
「……好きにすれば?」
結局その夜は、U子が寝落ちするまで二人の「お話し」が続いたのであった。




