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第四十七話 終劇っ! ヒートビート!

 マニコとレキ、そしてペコリカが合流して、U子も女王(くいーん)ちゃんも回復した。翻ってヒートビートは満身創痍。


「さてと、それじゃあ! 熊退治と行きますかぁ!」


「グギャアァァァァッ」


 ヒートビートが答える様に咆哮して、魔法陣を展開する。


「あまぁい! あたし来た以上、それを通すと思う?」


 レキのアイスブレスが魔法陣を貫いて消し去った。そんなのアリかよ!


「なにそれ? ずるくない?」


「反属性同士の魔法なら対消滅すんのよ。魔法スキルの基本。飛んでくるのに当てるのは難しいけど、あんなに発動が遅いなら、つぶすのは造作も無いわ」


 なるほど、ヒートビートにとって魔法は後付け、そこまで得意ってわけじゃないのか。


「ガアァァァァァっ!」


 魔法を放とうにも発動前につぶされる。業を煮やしたヒートビートは再び突撃してくる。


「お母さまっ!」


「あいよ! 前と違ってここはマニコちゃんの領域。好きに動けるとは思わないでよね!」


 マニコが手(?)を振ると森の草や小枝がヒートビートの体にまとわりつく。それは動きを止めるほどのものではないけれど、確実に動きを鈍らせていた。


「これならいけますわ! S~Zいっせいに攻撃なさい!」


 動きの鈍ったヒートビートにいっせいに突撃していく兵隊蟻、攻撃速度が著しく落ちているので捕まることなく一撃離脱を繰り返すことができている。


「あんなにうろちょろされてると、あたしの弓じゃ誤射が怖いなぁ。メタルゼットみたいに丈夫じゃないだろうし」


 人を対戦車ロケットの中身みたいに呼ばないでほしい。ともあれ確かに蟻たちに誤射するのはいただけないな。


「コボルト用に作ったボウガンがなら、ちょっとは命中精度上がるだろうけど、あれ機工士持ってないと巻き上げができないからなぁ」


「ワウン!」


 そこに、数匹のコボルトが戻ってくる。グーフたち三匹と他いく匹か。


「お前たち、なんで戻って……いや、戦いたいんだなお前たちも。そうだよな、自分たちの村だもんな!」


「ワウン! ワンワン!」


 いつものように、よい返事。


「よし、グーフたち三人はボウガンを巻き上げてU子に渡してくれ。他は木の上に登って投石だ。ダメージは与えなくていい。あいつがうっとうしがるように投げてくれ」


 それを繰り返し、コボルトたちは散っていく。


 やがて援護射撃が始まった。


「これ、いいっ! 何より楽っ!」


 コボルトたちから渡された装填済みのボウガンを次々に放つU子。完全にトリガーハッピー状態だ。


 突き刺さる無数の屋に、ついにヒートビートは完全に足を止めてしまう。


「さて、俺も負けてらんないな!」


 これなら、もう攻撃を受け止める必要もない。俺はバルバロスモードで突撃した。


「グゥ…………ガァァァァァァッ!」


 俺が近づくのに反応して、ヒートビートは息を吹き返すように動き出す。予想外の動きに反応が遅れてその爪を交わしそこなって、RSシールドを持っている方の腕が半壊してしまった。


「その素敵な、森ボディは壊させません!」


 瞬間、回復魔法が飛んできて腕は取りあえず動かすのに問題ないくらいに回復する。ホント木製ボディと相性いいのな森林呪術師。


「サンキュー、ペコリカ! んじゃ、くらえ!」


 ヒートビートに振り下ろされるチェーンソーアックス。それは毛皮切り、肉を裂き、骨へと食い込んだ……。


「ってぬけねぇっ!」


 深く食い込みすぎて、抜けなくなっちまった! どうしようと考える間もなく、ヒートビートの第二撃が襲い掛かってくる。


 俺は、仕方なくチェーンソーアックスを手放して、攻撃をかわし、距離をとる。追撃しようとヒートビートは、魔法陣を展開するが、


「だからやらせないって!」


 待機していたレキにそれは阻止された。


「武器はまだあるんだよ!」


 俺はラウンドソーシールドの発射機構を開放する。勢いよく回転しながら飛翔する円盤。要するに巨大ヨーヨーだ。しかしそれを、ヒートビートはいとも簡単に口で受け止め噛み砕いてしまった。


 新しい武装は、ヒートビートの口の端をわずかに切裂いただけだ。


「あんたの武器って、結構アイデア倒れ多いわよね?」


 油断なくブレス準備しヒートビートをにらみながらも、ツッコミを忘れないレキ。その姿勢には頭が下がる。


「いんだよこれで。元々とどめは別ので刺そうと思ってたんだから!」


 強がりである。強がりであるが、今思いついたにしてはいいアイデアが出てきた。


 俺はストレージに入れてある武器からあるものを選んで装備する。


「お前との因縁はこれから始まったし、お前が進化するきっかけも多分これだろう。決着をつけるのもこれがふさわしいよなぁ!」


 そう、スチームランスシールドである。穂先はセラミック製に切り替えてあるのであいつの毛皮にも十分通用するはずだ!


 ヒートビートは本当に満身創痍。もはや立っているのもやっとといった風情で、それでもふらついた足元を抑え、口の端から血が漏れ出でるのも構わず、心底嬉しそうに顔をゆがめた。


 俺はその笑顔に応える。


 まっすぐ突撃しその腹にスチームシールドランスを深々と突き立てた。


「そんじゃ! あばよ!」


 トリガーを引く。高温の蒸気がヒートビートの内臓を焼いた。


「ガ……アァァァァッ!」


 最後の一撃。俺のコアめがけて襲い掛かる腕。しかしそれは、もはや俺にとっては脅威ではなくなっている。


 一度、抜いて攻撃をかわし、再度、今度は顎を下から貫き通した。


 二度目のトリガー。それで、ヒートビートは一度だけはねた後、完全に動かなくなり光の粒子へと変わっていった。


「おわったぁ!」


 俺はそのまま地面に倒れこむ。


「ちょっと、大丈夫なの!?」


 レキが心配そうに駆け寄ってきた。


「大丈夫。いきなり大イベントだったから、疲れただけだ」


「だよね~。ログインしたら、いきなりボス戦なんだもん。あれはやばいっしょ」


 U子も同じく地面にへたり込む。そういえば武器壊しちゃったんだよな。あとで埋め合わせしなければ。


「今回みたいなことがあったってことはさ。もしかして、あたしたちがログアウトしてる間にいきなり村が全滅とかありえたのかな?」


「いや、それはくそげーすぎるだろ。ありえなくはないだろうが、今回はたぶん俺があいつとのフラグを建ててたからだと思うぞ。だから少なくとも俺がいないときには襲ってこなかっただろう」


「甘い予想だよね。村の強化プランをもうちょっと考えなおさなきゃかなぁ」


 マニコは何やらヴァーチャルパネルとにらめっこを始めてしまった。


「それよりドロップは何でしょうかぁ? あれだけ強いMOBだったんですからきたいできますよねぇ」


 意外に現金なペコリカが、光の粒子になっていくヒートビートの周りをソワソワと動き回っていた。


「なんだろうな、何にしろ、被害に見合うものが出てほしいもんだけど」


 やがて、粒子が完全に消え去った後には毛皮や牙なんかの動物系の素材と一緒に、こぶし大の透明な石が一つ転がり出てきた。


 鑑定するまでもなく俺は確信する。何せ、今まで探し求めていたもののひとつなのだから。


 無属性の魔石(大)。


 犠牲は大きかったけど、苦労しただけのことはあったのかもしれない。


評価値ポイントがついに1000を超えました! ありがとうございます! やっとここまで来たって感じですね。これからも相変わらずグダグダやっていきますが、よろしければお付き合いください。

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