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第四十五話 部屋割りとバカップル。そして……

 さって、今日は家造りの総仕上げ。壁板張りだ。


 土壁そのままというのも風情があるんだが、やはりここは熱帯のジャングル、スコールに襲われるときもある。(今まで描写してなかっただけで、そういう日もあったんだよ実際)


 なので、それから保護する意味合いでも壁板は必須なのだ。


「っと言うわけで、いつもの通りの班に分かれて作業開始してくれ」


 コボルトたちに指示を出すと。相変わらず軍隊式の良い返事が返ってくる。その後の行動も慣れたものだ。速やかに班に分かれて持ち場へ散っていった。


 これで家が完成すれば、取り合えず町という体裁は整うはず。あとは住民NPCを待つばかりといったところか。


 自分が担当してる家も、教育者を持つグーフを中心に三人のコボルトが壁板を打ち付けていく。(名前に引きずられていないようで何より)それを見てるだけなので、暇と言えば暇だ。楽なのはいいんだけどね。


 ちなみにいうと、ウチの家だけ洋風の瓦葺屋根だ。本当は全部の屋根を瓦葺にしたかったのだが、残念ながら粘土が足りず断念せざるを得なかった。新しい粘土採掘場見つけなきゃなぁ。


 まあ、ギルドメンバーが使う特別な家感は出てて、いいんじゃないだろうか?


 この家だけ二階建てで、部屋が吹き抜けリビング合わせて9つ。ちょうど、メンバー+エヴァさん&イザベラで割り振れる数になっている。エヴァさんとイザベラはニコイチで申し訳ないが、あれはもう夫婦みたいなもんだし別にいいだろう。……一応聞いておくか。


 俺は、家づくりをコボルトにまかせて、二人がいつもいちゃついている魔大樹の根元へ足を運んだ。



◇◆◇



「今は、ベラに愛を語る時間なので後でいいですか?」


「エヴァさんに甘えるタイムなので遠慮してください」


 ちょっと時間大丈夫か? と聞いた答えがこれだった。


 普段、目立たないけど本当にAIか? ってくらいの、すがすがしいバカップルぶりだな。


「いや、ここも確かに愛を語らうには、いい場所かもしれないけどな。もうすぐプライベート空間が完成するだろ? それで、二人の部屋は一緒でいいかなって聞きに来たんだよ。その代りと言っちゃなんだが、一番大きな部屋を用意するからさ」


 二人の要望を無視して用件だけ伝える。バカップルに付き合う義理なんて、独り身の俺には、これっぽっちもありはしないのだ。


「そうでしたか。えぇ、かまいません。むしろこちらからお願いしたいくらいです」


「ありがとうございます。マスター。まさか、個室がもらえるなんて思ってもみませんでした。早速、大きなベッドをコボルトたちに作ってもらわなくっちゃ」


 おい、勝手にコボルトに仕事を頼むんじゃない。こっちの仕事の効率が減るじゃないか。っていうか大きなベッドで何するつもりだよ。いや、わかってるから口には出さないんだけどさ。ポンコツミイラとBBAゴーストのそういうシーンなんて誰得でもありはしない。


「ま……まあ、部屋の使用方法は好きにしてくれ。じゃあ、二人は相部屋で残りは個別に割り振るから、完成したら一度寄ってくれ。今日中には作り終えると思うからさ」


「わっかりました~」


 ビシッと、敬礼して見せるイザベラ。それをエヴァさんが愛おしげに見つめる。そんな二人の間には、なんだか花がちりばめられているような空気が漂っているようだ。なんだこの空間。


 そんなラヴ時空を打ち砕いたのは、息も絶え絶えに転がり込んできた一匹のコボルトだった。


「その耳……ドナルか! どうした!」


 たれ気味の耳を持つドナルは、必死に亀皮紙に何かを書き込んでから、こちらに向けて突き出してきた。


『てき・きた』


 敵来た。


 そう読める。いったいどんな敵か、聞いても答えられないであろうことがもどかしい。


 とにかく、この様子は尋常ではないのは確かだ。いますぐ戻らなければ。


「エヴァさんとイザベラはここにいて、そいつの看病してやってください。取りあえず水を飲ましてやって。俺は村の方へ行きます」


「了解しました。お気をつけて」


「マスター。この子はばっちり任されました。安心して行ってきてください」


 二人がそれぞれ礼をして見送ってくれるのを、見る間も惜しんで俺は駆けだした。


 いったい、何が襲ってきたっていうんだ?



◇◆◇



「……最悪だ」


 村に着いた俺が見たのは、考えうる限り最悪の状況だった。


「グギャァァァァァアアアアアアッ!!!!!!!!!」


 そいつが腕を振るうたびコボルトたちが宙に舞う。そいつの前ではコボルトたちは紙切れにも等しい。グーフが必死に指揮を執っているが、焼け石に水だ。


 『灼熱隻眼のヒートビート』


 この近辺で、恐らく最強の陸上生物が村を蹂躙していた。


 とにかく、これ以上コボルトに被害を出すわけにはいかない。そう思って駆けだそうとした俺と、ヒートビートの目が合う。


 そして奴はただれた顔を大きくゆがませた。笑っている……とでもいうのだろうか?


 次の瞬間、もう雑魚にかまっている暇はないと言わんばかりにコボルトの群れを飛び越えて俺に向かって突撃してくるヒートビート。


 そして、動かない方の前足を体をふって強引に俺めがけて振り下ろしてきた……っ!


 ガキャァンッ!


 ひときわ大きな衝撃音が木霊する。それは高く遠く魔樹の森全域に響き渡るのだった。


短いですが、どうしてもここで引きたかったので(我が侭)ここで切らせてください。

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