第四十二話 う、うつくしい……はっ!
「獣の魔石タイガーアイ? 装備アイテムじゃなくて消費アイテムなのか? ってあれ? 俺には使えねぇ」
アイテム欄から選択して使用しようにも、使用ボタンが光ってねぇ状態だ。消費アイテムじゃない場合は使用ボタン自体出てこないので消費アイテムであることには変わりないんだが……。
「そーなの? ちょっと貸してみぃ」
U子が俺の手から魔石を取り上げる。
「ちょ、おま、なくすなよ!」
「なくさないって。ホントだ。あたしにも使えないや。使用条件を満たしてないとか?」
「うーん、いまネットで調べてみたけど、同じアイテムは出てないみたいだねぇ。取りあえず、この中でだれか使える人がいないか、試して回ってみよっか」
マニコの提案に全員がうなづく。
そして、全員にタイガーアイを回した結果、使用できるのは、レキとペコリカということが判明した。
「わかってみれば単純ね。獣族モンスターが使えると。これ人間プレイヤーが出した場合どうなるのかしら?」
「そ、それじゃあ、レキさんが使ってください。あたしは、新人ですし……」
「いや、それこそ、あんたが使いなさいよ。今回の狩りは新人歓迎会も兼ねてるんだから、お祝いとして受け取っておきなさい」
「え、でもぉ……」
ちらちらとU子の方を見るペコリカ。
「? あたしだったら気にしないし。ジャガーの毛皮いっぱいもらってほくほくだし」
裁縫師もそれなりのレベルで持っているらしいU子は本当に満足そうだ。だーさんがホント裁縫師上げてないので、しばらくは頼ることになるかもしれないな。
「でもやっぱり、レキさんが使ってください。皆さんが私にくれるというのならもらいますけど、私が使ってほしいのはレキさんなので、私がレキさんに使いますぅ。(それに、未知のアイテム使うのってちょっと怖いですし)」
「そう? そういうことなら遠慮なく使いなさい」
レキはその丸こい体をペコリカの方へ向けて胸を張るようなポーズをとる。
なんだかんだ言って新しいアイテムが楽しみなんだな。
「じゃ、じゃあ、行きますよ! 使用っ、承認!」
ペコリカがアイテムパネルを操作して少々大げさに手を振りかぶって使用ボタンを押した。
するとレキの体が光り、に包まれる。進化の予兆だ。
「ふぅ、なに? どうなったの?」
光の中から現れたのはさらさらとした美しい銀の毛並みを持つ狐だった。それも、今までのように小さく丸い毛玉ではない。大きさは大型犬ほどに成長し、フォルムも流線的で美しいものに変わっている。そして尻尾は実に美しい立派なものが三本生えていた。
「進化したんだよ。ステータス見てみな。どうなってる?」
「へぇ、ちょっと待って……っ!」
レキは前足で器用にパネルを操作すると、自分のステータスを見て驚いているようだった。
「エレメンタルフォックスって何? なんかステータス軒並み10以上伸びてるんだけど! っていうか、それよりも、全属性魔法威力+7%、消費MP-5%って何? チート?」
「いや、チートってほどでもないんじゃないか? レア種族引いたならそんなもんだろ?」
「わぁすごいですう。レキさんすっごいきれいになってますねぇ。(わたしが使っとけばよかったですぅ)」
さっきから、ペコリカさんから黒いオーラが流れて来るんだけど、これ気のせいだよな?
「それにしても進化アイテムか……。ホント人間プレイヤーが引いたらどうすんだ?」
「そりゃ、露天出して売るのがセオリーなんじゃん? 町にもモンスタープレイヤーは結構いるしー」
「でも、使わないとわかんないだろこれ……二束三文で売っちまってあとで後悔なんてことにならなきゃいいが」
「大丈夫っしょ。あたしあがさっき持ってた時にSS撮って攻略掲示板に上げといたし、いまから効能書くから、これ以降はそんなことは起きないって」
「マジか、でもそういうことするときは一言みんなに相談な。レキのSSを勝手に上げるのもなしだぞ」
「なにそれ、そんな常識しらずだと思われたくないんですけど。あたしもリアルでよく写真とか取られるんで、そういうのどんだけ気持ち悪いか知ってるし」
「そ、そうか、まあ、情報を外に発信するときには出来るだけみんなに相談してからにしているんだ。ここは隠れ里だからな。戦力が整うまではできるだけ、表になしられたくないってことで、みんなで決めたんだよ」
「おっけりょーかーい。ま、いつか帰ったとしてもここの場所は言わないようにするしー。安心していいよー」
「場所ってお前わかんのか?」
「現在座標表示コマンドがあるっしょ。アレで、前いたとこと、いまいるとこの座標調べたら大体は分かるんじゃん?」
「その情報、俺にくれたりする?」
「まだ、決めかねてるし、正式にこっちの仲間になるって決めたら渡してもいいかな?」
「マジか、よーし、おじさん勧誘頑張っちゃうよー」
「なにそれキモイー」
言いながらも語尾は明るいので、そこまで本気でもないだろう。ないよな?
「二人ともーあたしはこれからこの姿を試すのにもう一狩り行くけどどうする?」
「あたしは疲れたしー、もう落ちるー。ノシー」
そう言ってU子は集落のある方へ帰っていった。付き合うのはペコリカ、とマニコだけのようだ。
「よし俺も付き合うか、前衛以内ときついだろ?」
「そうね、いてくれると助かるわ」
進化後で上機嫌なのかいつになく素直なレキ。これは貴重である。
「んじゃ、ついてくわ。どこ行く?」
「そうね、いつも通り、オクトエイプでも狩りに行きましょうか?」
そうしていつもの狩場に繰り出した俺たちだったが……。
あれ? これ、前衛いなくても問題なかったんじゃって思ったのは内緒だ。
一言、レキ無双だったってことだけ言っておく。
タイガーアイでもエレメントフォックスに進化するごとし。
おあとがよろしいようで。
というわけで、新アイテムは進化の石でした。bbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbbb
さて、一年間休んだ罪悪感からスタートダッシュで、ほぼほぼ毎日更新し続けてきましたけど。このペースでできるのはGWが終わるまでですね。
それ以降はせめて週一では投稿したいと考えています。
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