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第四十話 集団先頭のジャングラ・ジャングラ:前編

前回フォレストウルフって言ってましたが、ジャングルジャガーに変えました。それに伴い前回も修正しています

 さて、狩場に着いたわけだが……。


「なにもいませんねぇ……」


 そう、なにもいない。件のジャングルジャガーはどこにもいなかった。


「この気配は……」


「知っているのか!? U子!」


「う~ん、前にどっかで、こんなことがあったような気がするんだけど……思い出せないわ。バカちんでごめんちょ」


「いや、いい。少なくともこれが普通で、たまたまジャガーたちがいないってわけじゃない可能性があるってわかっただけでも……!」


 警戒しながら歩いていたつもりだった。


 でもそれは周囲についてで、足元はお留守になっていたのである。


 俺は何かに蹴躓いてバランスを崩した。 思わず下に意識が行く。


「草が結んである!? なん……っ!」


 そのタイミングを逃さず上絵から襲い掛かってくる影。こいつら、木の上に潜んでいやがった。


 バランスを崩したままの俺はそのまま押し倒される。


「ゼット君、いま助けますね~」


 ドスンドスンと、るーさんが駆け寄ってくる。いや、るーさん、それフラグだから。お願いだから慎重に行動して。


「あ~れ~?」


 案の定別の罠に躓いてコケるるーさん。そしてその先におは俺がいるのであった。


べしゃぁ!


 るーさんのボディプレスを受けて、耐久値の三分の一を持ってかれる俺。ちなみに俺の上に載っていたジャガーは、るーさんが倒れこんでくる直前に素早く飛びのいてダメージは無しだ。


「囲まれてる。ま、まずいですよぉ」


「とにかく固まって、一人になるな二人以上で周囲を警戒!」


 慌てて指示を出す。とにかく相手を先に発見しないと話にならない。狩りに来たつもりが狩場に迷い込んでしまったなんて笑えない話だ。つか、肉球なのにどうやって草結んだんだ?


「思い出した。これ、レギオンタイプのネームドの行動パターンじゃん。罠を張って集団で襲い掛かってくる。前にゴブリンのヤツにやられたことあるわ」


 レギオンタイプ。群れを率いて襲てくるタイプのネームドエネミーだ。


「その時はどうしたんだ?」


「いくらネームドっつっても所詮ゴブリンじゃん? 罠踏みつぶして真正面から叩き潰したんだけど……」


 わお、ワイルド。脳筋ギャルエルフってゴロがいい存在なのかお前。


 でも、ゴブリンとジャングルジャガーとでは、地力が違う。ネームドになったときの頭の良さも攻撃力も体力もだ。正面から罠にかかりつつ圧倒するにはこっちの戦力は心もとない。


 何より、上をとられて、しかも鬱蒼と茂る木々のせいで相手の姿を視認できないのが厄介だ。


「取り合えず固まったけどこれからどうする? ゼット?」


 そう言ったのはレキ。チームはだーさんとペコリカで組んでいる。俺はちょっとだけ考えを巡らし、一つの作戦を思いついた。思いついたんだが、成功するか? これ?


「……虫取り作戦で行くか。」


「は? どういう……わかったわ。あたしたちは上を警戒しながら待機しているから」


 疑問を口にしたレキに対して、るーさんの獲物を指さして見せる。それだけで理解してくれたようだ。


「おけ、マニコ達も準備しといてくれるか?」



「いいよー。いつでも攻撃できるようにしとけばいいんでしょ?」


「察しが良くて助かる、じゃあるーさん。上は俺が警戒しときますんで今から言う場所まで移動してください。罠に気を付けて」


「はい~、わかりました~」


 慎重に足を進めるるーさん。俺に飛び道具で上空を警戒された状態では流石に勝ち目がないと見たのか、ジャングルジャガー達も襲い掛かるのを躊躇しているようだ。


 そしてるーさんは一本の大きな木の根元にまでたどり着いた。


「それじゃ~、い~きま~すよ~!」


 るーさんも作戦意図を理解していてくれたらしく指示をしないでも、してほしい行動をとってくれた。


 即ち、その大きな木にフルスイング! である。


 勢い良く揺れた木々の枝から、ジャングルジャガーたちが次々と落ちてくる。


 だめもとだったけど結構いけるもんだな~。


 モンスター名を確認してみると「レギオンジャガー」となっていた。


「一斉攻撃! この機を逃すな!」


「「「「おー」」」」


 というわけで、第一陣はもんだいなく殲滅出来た。


 のだが、さすがに同じ手は二度は通じないようで二度目の木をるーさんがぶったたいても、ジャガーたちは先ほどの様には落ちてこなくなった。


 そして、自分たちが有利と見るや、一気に攻勢に出てきたのである。繰り出されるジャングルジャガーたちの波状攻撃に徐々に俺たちは追い詰められていった。


「っていうか、レギオンタイプならリーダーのネームド倒さな限り無限湧きっしょ?ここはいったん退いて、作戦立て直した方がよくない?」


「U子の意見はもっともだ。しかしな、ここを奪還しなければコボルトたちが飢えるんだよ。あの可愛いコボルトたちがだ。

そうしないためにも一刻も早くこいつらをつぶさなけりゃならない」


「え~、いくらかわいいっても所詮データじゃん。あたしそんなことのためにデスペナもらう危険犯したくないんですけど」


「データでもな、心を通わせることができるんだよ。それは幻とか妄想かもしれない。でも、所詮ゲームだからこそ、自分の頭の中のものに価値を見出してもいいんじゃねぇか?」


「付き合ってらんない。あたしは帰るからね。」


「それも一つの選択だ。もし死に戻ったら、次の作戦考えてまた一緒に遊ぼうな」


「……ばっかみたい、ここでホントに帰ったら、あたしかっこわるずぎじゃん。コボルトたちはどうでもいいけど、一緒に遊んでる友達見捨てたら。それはもう人間としてどうなのって話になるし」


「なんだよ、結局残るのか?」


「とりあえずね。でもこのままじゃ何ともならないし、何か手はないの?」


「なんでもいいけど降りてきてもらわないと、僕たちには攻撃手段がないからねぇ。さっきから雑魚はいくらか倒してるんだけど、それじゃどうにもならないし」


「私のヒールもぉ、追い付きませんー。っていうか、この状況でヒーラー一人はきついですぅ」


「ペコちゃん一人に回復の負担が行くのはよくないね。わたしも回復に回るよ」


「助かる。これでしばらく戦線は維持できるな。じゃあ、倒す方法だけど………」


 そんな都合よく思いつくものでもないか………。


 まて、落ち着け、こういう時は基本に立ち返るんだ。俺の基本、科学、実験。化学の基本は観察から始まる。相手をよく見ること、そして違和感を覚えたところに推論を立てる。いつもやっていることだ。つっても、観察対象が見えないんじゃなぁ。


……いや、待てよ? それじゃあ、見えてるものを観察すればいいんじゃないか?


 襲い掛かってくるレギオンジャガーの群れに対処しながら、注意深く観察する。


 あ、こいつら……。


「U子。お前弓も使えたよな!」


「一応使えるけど、エルフだからイメージ優先でスキル取っただけだし。そんなうまくないっしょ」


「狙ったあたりに飛べば十分だ。弓で俺を今から言う方向に飛ばしてくれ」


「あんたみたいなでっかいのは飛ばせな……って何それ可愛い!」


 俺は例の頭だけの状態になってU子の肩に乗った。お尻にはつがえるための棒と姿勢安定のための矢羽。こんなこともあろうかと作っておいた。ゼット矢じり形態だ。


「さっきはこっちから来たから次はそっちだよな。よし正解ってことは……U子あっちだ!」


 俺は頭の先を向けてU子に方角を指示する。U子は素早く俺を弓につがえてその方角の木の上に射出した。


 ビンゴ! 集団先頭のジャングラ・ジャングラ。リーダー発見。


 そのままの勢いで装備を変えつつ突っ込み。ジャングラに組み付いた。


 重さに耐えきれずにジャングラ・ジャングラが乗っていた枝が折れて、俺たちは地面に落下する。


 さぁて、ラウンド2と行きますか。


中途半端ですけど三千字を超えたので、いったん切って次回に続きます。

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