第三十九話 混乱は新たな仲間の香り
「へぇここがセグンドですか～。って誰？！」
「え？ なに？ ここどこ？ 囲まれてる！？」
「SHIIIIIIIIHAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!」
戦闘態勢を取ろうとした金髪エルフ。最初に反応したのはやはりだーさんだった。すぐさまペコリカさんと思われる白い毛長の猿と金髪エルフ間に入って、遠ざける為に襲い掛かる。
「ちょっ！ まってよ！ いきなり何なの！？」
金髪エルフも負けていない。初太刀を腰の剣を抜きざまに防ぐと、嵐のようなだーさんの猛攻を防いでいる。
ともかく今の内だ。
「エヴァさんとイザベラはコボルトたちを連れて離れて。コボルトたちは二人の指示に従うように！」
二人はうなずいて、早速コボルトたちを逃がしにかかる。
『どうした、何があった！』
「トラブルです！ なぜか人間プレイヤーが一緒に転送されてきました」
『なに！？ そんなものは送っていないぞ！』
「大丈夫です。ペコリカさんが戸惑ったのを見てますから、陽花さんたちが俺たちをはめたなんて思っていません！」
『それはよかった。っ！ ペコリカは無事なのかね！？』
「……今確保しました無事です。傷一つありませんよ！」
俺はその間にペコリカさんに近づいて、守るように前に立った。死んでも死に戻るだけだとわかってても、目の前で傷つかれるのは気分が悪い。
「だーさんもういいですよ！ とりあえず安全は確保しました！」
すでにコボルトたちも撤退し、ゲストの安全も確保された。近くではレキがブレスを構えており、るーさんも完全武装済みだ。
これで有利に話ができるはず。
「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAAAAAAAAA!!!!!!!!」
「あの？ だーさん？」
「HYAAAAAAAAAHAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!」
「おーい、だーさーん？」
どうしたんだ？ あれ？
「だめですね～、あれは完全に入っちゃってます～」
俺が戸惑っていると、棍棒を担いだままるーさんが話しかけてきた。
「どういうことなんですか？」
「あの人が～、案外強かったから～楽しくなっちゃって～、周りが見えなくなってるっぽいですね～」
なんじゃそりゃ？ リアルバーサーカーかよ！
「どうするんです？」
いくら相手から仕掛けようとしたといってもこれでは、過剰反応だ。相手の心証が悪くなったらまともに話がきけなくなる。
「こうするんで～すっ！」
嵐のような攻防に無造作に近付いていくるーさん。そして自分の獲物を振りかぶり……。
パッコーン！ と、いい音がしてだーさんが吹っ飛んでいく。
いや、自分の旦那。思い切りフルスイングってあなた。
「愛があるからできるんですよ～？」
俺なら、そんな愛はいらない。ほらエルフのおねぇさんもポカーンってしちゃってるじゃん。
しばらくの沈黙ののちふっ飛ばされただーさんが帰ってくる。大丈夫……ってヒットポイント赤ゲージですがな。
「いや～、助かりましたるーさん。ホント僕って夢中になると周りが見えなくて……」
「気にしないでください～。お互い様ですから～。ホント、これができるからVRはやめられませんねぇ～」
最後の一文が怖いよるーさん。
「モンスタープレイヤーが変態の巣窟ってのは本当の様ね……」
あ、おねぇさんが帰ってきた。
「まあ否定できないかな……。さて、こちらに交戦の意志は今のところないのは分かってもらえたと思う。君はどうやってここに来たんだ？」
余計な話をする場面でもないだろう。聞きたいことを端的に聞くことにする。
「其れよりもここはどこよ？ その反応ってことはここにいるのみんなプレイyっ！」
エルフのセリフを遮って、足元にレキのサンダーブレスが炸裂する。
「質問しているのはこっちだ。それは間違えないでもらおう。」
「なによそれ？ ロールプレイ？ シリアスな空気出しても所詮ゲームなんですけど？」
なんだよ、いまいい雰囲気だったろ？ 合わせろよ！ 恥ずかしくて顔から火が出ちゃうだろ！？
「……。ま、そりゃそうだ。でも、君の扱いをここで間違えたら俺たちはゲームを楽しめなくなるかもしれない。それはゲーマーにとって由々しき事態だろ？」
この場所がばれて人間プレイヤーが大量にやってくるなんて事態になったら目も当てられない。ここまで気づき上げたものが全部台無しだ。
「なるほど、それもそうかもね。じゃあ、自己紹介から行きましょ？ 私はU子短い間になるかもだけどよろしく」
「俺はゼット。すまないが他の名前は教えられない。聞かないでいてもらえると助かる」
「用心深いわね。で、なんだっけ？」
そういってU子はゲートの台座に腰かけた。
「ここに来た経緯だ。なんでゲートから出てきたかわかるか？」
「わかるわけないでしょ？ 臨時パーティで、遺跡探索してたらしーふが見逃した罠にはまってこの通りよ」
「遺跡？」
「デンバの地下大迷宮よ。知らないの？ カリスマプレイヤー、カウルとケイトが見つけた最新大型ダンジョンよ」
「あ～、そういう情報には疎いもんで」
親父とお袋じゃねぇかよ！ なにやってくれてんだよ！
「まーこんあ辺鄙なところに住んでたんじゃあねぇ」
「そうだな、それでもそれなりに楽しんでんだ。それで？ どんな罠だった？」
「これと同じ形してたわよ？ なんか書いてあったけど読めなかったなぁ。で、シーフがその部屋の動力を回復させたとたん。ここにいたってわけ」
なるほど、恐らくその地下遺跡は大昔の町の一つだったんだな。それで、偶然こっちが起動したのと同じタイミングで無理やりぎみに起動したから。暴走して混線しちまったと。
「これで全部話したわよ。ねぇ、問題ないならあたし帰りたいんだけど」
「あぁ、問題ない。再現性はほぼないし、この場所が割れたってわけでもない。安心して死に戻ってくれ」
「は？ いまなんて言ったの？」
「だから、死に戻ってくれ。残念ながらこのゲートはまだ一方通行なんだ。他に方法はない」
「え～。あたしこんなことでデスペナもらうのなんてチョーイヤなんですけど」
「仕方ないだろ？ おとなしく死に戻れ。こんな辺鄙なとこにいたってしょうがないだろ？」
「それはそうだけどさ～。あ、さっきまだって言ったよね？ いつかは開通すんの？ このゲート」
「そのうちな、でも予定は未定だし、人間の町につなげる気はない。おとなしく死んどけって。ここでデスペナもらう方が将来的に見たら大分得だぞ？ 判断を誤るな」
「でもなー、う～ん」
「しばらくいたらいいじゃない。死ぬのなんていつでもできるでしょ？」
そう言ったのは、以外にもレキだった。お前が一番反対すると思ったんだけどな。
「だよねー。じゃ、しばらく世話になるから！」
軽いなおい！
こうしてU子はしばらくの間、魔樹ノ森ボボンガの住人となったのであった。
とんだイレギュラーである。おかげでペコリカさんの影が限りなく薄くなっちゃったじゃないか！ 謝りなさいよ！
ほんとk、前の話のラスト書くまで影も形もないキャラクターだったんですけどねU子。しゃべらせてみたらまさかのギャルでこっちもビックリでした。コラソコ、運子とか呼ばないで上げて！
さてこの子、このまま残るか途中で死に戻るか迷ってるんですよね～。まあ、いつも通り行き当たりばったりになると思います。
ところで、１５万PVならびにお気に入り登録３００達成です。これも長い間見捨てないでいてくれた皆様のおかげ、そして新しく読んでくれているあなたのおかげです。本当にありがとうございます。
ついでに、評価値乞食もしちゃおうかな？ ……調子に乗りましたウソです。
改めて皆さま本当にありがとうございます。これからもよろしければお付き合いくださいませ。
