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第三十六話 アーリさんとアーリさんがゴッツンコォ!

 さて、今日はマニコの巣穴に来ている。


 マニコは基本このプラントーイーターの巣穴にこもってキノコプレイを楽しんでいる。いわく「やっぱりキノコは暗くてじめじめしたところにいないとね」とのことだ。いや、砂漠に生えるキノコもあるんだけな。


「マニコー、いないのかー? いなかったら返事してくれー」


 ……よし返事がないということはちゃんといるな。というわけでお邪魔しまーす。


「GYYYYYYYYYY!!」


「えっ! ちょっ!」


 一歩足を踏み入れた瞬間に横からアリ(いちいちプラントイーターっていうのめんどいからこれでいいよね?)が襲い掛かってきた本日の俺は実験用パーツの非武装仕様。なすすべもなく捕まってしまった。



◇◆◇



「まったく、乙女の家に勝手に入ろうなんてするからそうなるんだよ?」


「言い訳しようもございません」


 こういう時、「オトメッツッテモキノコジャン」などと言ってはいけない。ひたすらに平謝りし続けるしかないのである。


 あの後、パーツを全部食べられてしまった俺は、久しぶりにあの「頭だけ状態」になってマニコの前に連行された。


「もう、ゼットはこの子たちにとってごちそうなんだから、不用意に近付いちゃダメだって」


「え? じゃあ、こいつらが俺を襲ったのって、巣を守ろうとしてとかじゃなくて?」


「そう、目の前のごちそうに我慢ができなくなっただけだよ。所詮は虫なんだから、そこまで頭良くないし、気を付けてよね」


 おうふ、なんだか食われ損な気がしてきた。


「っていうか、あいつら、俺の記憶にあるよりだいぶでかいんだけど」


「そりゃ、生き物なんだから成長するよ。」


「いや、成長ってレベルじゃ無くね? 俺の記憶が確かなら大型犬くらいだったはずなんだけど、さっき襲ってきたの顔が普通に俺と同じ位置にあったぞ」


「あれくらいで驚いてたら、女王ちゃん見たら腰抜かすよ」


「どんだけでかくなってんだよ……」


「いや、でかくはなってないんだけど……あ、ちょうど良かった女王ちゃん」


 マニコが声をかけた方を見ると、アリ人間が立っていた。


「なんですか? お母さま。わたくしこれから、子供たちに蜜をあげねばなりませんの」


 そしてしゃべった。


「だから、あたしは君の母親じゃないって、君の母親はあたしたちが倒したんだから」


「えぇ、でもそれは生存競争に負けたというだけのこと。わたくしたちは根絶やしにされても仕方なかったところを、お母さまのご慈悲をいただいて、しかもここまで立派に育てていただいたのです。だから誰がどういおうと、マニコさんがわたくしのお母さまですわ」


「その論理の飛躍はどうしても理解できないんだよねぇ……。あ、これがゼットだから」


「そんなもののついでみたいに紹介すんのかよ!」


「あら、あなたが? 聞いていたよりもずいぶん小さいようだけれど……」


「あなたのご兄弟に全身くまなくごちそうしましたしもんで」


「あら、それはご丁寧にどうも。あの子たちもきっと喜んでいると思いますわ」


 皮肉が通じねぇ。


「まぁ、ゼットを紹介したかっただけだから、もう行っていいよ」


「では失礼いたしますわね」


 たおやかに一礼して、去っていく女王(くいーん)ちゃん。なんというかしぐさに優雅さまで感じるぞ。顔はアリのまんまだけど。


「何をどうしたら、あぁなるんだ?」


「んーと、うまい食事と適度な運動?」


「ハイハイ、植物つながりね。解った解った」


「あーん、突っ込みがテキトー過ぎて寂しいよぅ」


 マニコがこうやって冗談でごまかすのは理由がわかってない時だ。つまりなんでああなったのかは皆目わからんと。


「いつ頃から、あぁなったんだ?」


「2週間くらい前からかな。脱皮する回数が以上に増えて、三日後にはもう今の形態だったよ」


「二週間前、コボルト達が、ここにやってきたのがちょうどそのあたりだな」


「関係あるのそれ?」


「村落を作って建築を行うと、住人NPCがやってくるって情報がある。つまり、この巣穴が建築物と認められて、女王ちゃんは敵MOBから住人NPCに進化したとは考えられないか?」


 俺の推論を聞いてマニコはうーんとうなって思案する。


「確かに一般的な敵MOBとは違う感じなんだよね。共生状態なのに、なぜか拘束力が効かないし、かといって刃向かってくるわけでもないんだけど」


「まぁ、推測だしな、攻略情報しては載せれないだろ。再現性が低すぎる。こんど陽花さんには話してみるけど」


「誰それ?」


「ゲートをつなぐ相談をしてる相手。開拓プレイをしてるから、そういうのも知ってるかもって」


「なるほどねー、ゼットは外に女をかこってるんだねぇ」


「人聞きの悪いことを言うな。そんなこという子にはプレゼントは上げないぞ」


「? 何かくれるの?」


「いい子にしてたらな」


「はい、マニコいい子でちゅ」


「よーし、じゃあ、こいつをあげよう」


 俺は昨日レキに渡した数珠アクセサリーのマニコバージョンを取り出す。


「わーかわいい、数珠玉がキノコだ」


 と言ってもリアルでなくデフォルメした、所謂マリオのキノコだけどな。あれなら基本円いフォルムだからつけた時の違和感もそんなでもないはず。ちなみにレキのは勾玉がいくつかついている。


「なんだかんだ、マニコには世話になってるし、つか、最初のころなんてマニコいなかったら詰んでたし。その日頃の感謝を込めてのお礼ってことで。受け取ってくれるか?」


「うん、ありがとう! 早速つけるね」


 腕にはめて眺めるマニコ、まぁマタンゴ形態なのでそこまで情緒はないんだが……。それでも喜んでくれると嬉しいものである。


「そうそう、レキともデザイン違いのお揃いだから」


「え? レキにも渡したの?」


「ん? 何か悪かったか?」


「ん~ん、別にいいんだけどねぇ…」


「そっか、じゃあ俺は帰るから。お前も、もっと頻繁に出て来いよ」


「うん、そうするよレキとももっと遊びたいしね」


「そうだな、友達は大切にしろよ」


 そういって俺はっマニコの巣穴を後にした。


 さて、野暮用も済んだし今日はこれから何をするかな?


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