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第三十五話 建築はじめェーっ!

「オーラーイ、オーラーイ、オーラー…ストップそこで下して」


 レキの誘導でクレーンアームを操作する俺ロープは、綿の糸を編んだものに魔樹のハイを溶かした水をしみこませた物を作っているのでそこまで重いものはつれないが、木製の柱や梁の一本位なら、余裕で支えられるし、魔力の通りも悪くない。


 今日はコボルトたちに建築のお手本を見せるための最初の建築を行っているところだ。


 だってこの子たち、建築スキル持ってる子がいるからって任せっきりにしたら、竪穴式住居作ろうとするんだもの。それに、せっかく草を刈って整地して出てきた住居跡の基礎部分があるのに、利用しないのはもったいないよね。ってことで現代建築とはいかないけど遺跡を利用した建築に挑戦中。今は基礎の穴に柱を立てて言っているところだ。


 最初は一人でやってたんだけど、途中からレキが、


「危なっかしくて見てらんないわよ」


 と言って手伝ってくれている。


 コボルト君たち、よっく覚えておきたまえ。あれがツンデレのテンプレというべきものだよ。と言っても、この子たちはしゃべれないから、使う機会はないだろうけど。


「余計なこと考えてないで集中して、ちょっとずれたわよ」


「すまん、もう一回上げるわ」


「必要ないわ……よっ!」


 レキは、そう言って柱に体当たりして無理やり穴に入れた。


「無茶すんなよ」


「だーい丈夫よ、ビル立てるってんならともかくこれくらいの家なら、柱にちょっと傷がついたくらいでどうかなったりしないわ。」


 いや、俺はレキの心配をしたんだが……。まあ、いいか。


「でもなんで、そんなに自信満々で言い切れるんだ?」


「父が、建築関係の仕事で小さいころから、よく現場に出入りしていたのよ。そこでおっさんたちが、足で柱の位置を修正したりしてるのを見てたから、そういうのもありっで知ってるだけ。専門的な知識はそんなにないわ」


 わー、こんな身近に建築知識のある人がいたよー。そんな人の前で素人建築とか、恥ずかチー。


「それでレキさん的には、この設計図はどうですか?」


「急に敬語になるんじゃないわよ。気持ちが悪い。言ったでしょ私は現場のおっさんたちの仕事ぶりを知ってるだけで、専門知識があるわけじゃないの。でもま、悪くないんじゃない?」


 建築現場の姫のお墨付きもいただいたことだし、とっとと組んでいきますかね。


 柱を全部立てて梁をかけ、取り敢えず家の骨組みだけ完成させる。


「はいじゃー、はくしゅー」


 促してみるとコボルトたちは手をたたいてくれるんだけど、いかんせん毛むくじゃらな手なのでいい音が鳴らない。ポスっポスっとまばらに聞こえるだけだ。


 それでも相当にかわいいので、レキが悶えている。


「ありがとう、じゃあ、各班に木材を配るから作業に入ってくださいねー」


 ストレージから木材を取り出し、種類別に山を作る。(ちなみにレキは自分の仕事は終わったとレベリングに出かけた)振り分けるのはミキドナグフの三匹も手伝ってくれた。自分たちが作ったと自慢しているのか。時々、仲間たちに向かってどや顔している気がする。顔が犬なので表情はいまいち読めないが。


 それぞれ木工スキルも、二ケタに上がってるので、木工に関してはそこそこ任せられるようになったし、自慢するくらいは可愛いもんだけどな。


 一人前になったかどうか、試してみるか?


 配り終わって、一仕事終えた顔になっている三匹を呼んで、仕事を言いつける。


 設計図だけ渡して、作って見させてみるのだ。今まではなんだかんだ俺がまずお手本を作って見せて、それをまねさせてただけだからな。


 物自体は簡単な棒。しかし今までの柱よりも大分細い。壁を塗る際の芯になる部分だ。


 三人は、設計図を見ると各々作業に入った。


 さて、ちゃんとできるかな?




◇◆◇




 出来なかった。


 寸法が違う、曲がっている、そもそも、棒じゃない。三匹が作ってきたのはおおよそ目的と合致しない代物ばかりだ。


 ここが限界ということはないだろうけど、まだ早すぎたか……。


 俺がお手本を作って見せると、今度は同じものをきっちり作ってくるあたり技術は身についているんだよな。あ、設計図の読み方はまた別なのか?


 今度は床板の設計図を見せて、寸法、用途、一つ一つ説明してから作業にかからせる。


 そしたらちゃんと床板に使える、板を作ってきた。なるほど、字は読めないけど口で説明したら、作れるのか。


 これで単純なものなら、量産できる態勢ができてきたな。


 俺は、その二つを数指定して作っておくように三匹に言いつけて、レキのところへ出かけることにした。




◇◆◇




「よ、今日はサンキュな」


「別に、大したことはしてないわ」


 ちょうど、レベリングから帰ってきたレキに声をかける。


「其れでも助かったよ。まさかクレーン側からあんなに穴が見えないとは思ってなかったからさ」


「やったことも見たこともなければそうでしょうね。それよりもアレで、あの子たちは、ちゃんとできるの? クレーンなんてあんたくらいしか使えないでしょ?」


「だいじょぶだいじょぶ。アレでSTRはそこそこだから、手作業だけでも柱立てて梁を上げるくらいは素手でなんとかできるよ。俺がクレーン使ってたの単に作ったのを使ってみたかったってだけだし」


 それを聞いて、レキはいつものように、ようにため息をついた。


「で? 用事はそれだけ?」


「いや、今日のお礼に、これ渡そうと思ってさ。」


 俺はストレージからあるものを取り出す。


「なにこれ?」


「魔樹のきれっぱしをビーズに加工して作ったアクセサリー、魔法攻撃がちょびっと上がる効果がついてるぜ」


 さっき、三匹の作業を待ってる間に、ちゃちゃっと作ったビーズをゴム紐に通してわっかにしただけの急増品だ。効果がついたのは偶然だが、まあ、ちょっとしたお礼にはちょうどいいだろう。


「っふーん。そういえば全然関係ないんだけど、こないだ呼んだ女性誌のアンケートで、男からもらって困るプレゼント第3位がアクセサリーだったわね」


「今言うこと、それ!?」


「ま、一応もらっといてあげるわ、アクセサリーと言っても実用品だし」


 そういうとレキは、それを自分のストレージしまった。受け取ってはくれるみたいだ。


「んじゃ、今日はほんとにありがとな。」


「ん、こっちこそ素敵なプレゼントありがと」


「さっきの後だと嫌味にしか聞こえねぇw」


 そして、レキと別れて、今日はログアウトする。そうだ、マニコにも日ごろお世話になってるし、おそろいで渡しとくか。女子は友達同士でおそろとか好きだもんな。


 いいアイディアだと思うながら、その日は床に就いた。


今回ほど「え? なに其の設定。俺知らないんだけど。っていうかお前そんなことすんの? 勘弁してくれよ」っていいなからかい他界はないです。

キャラが勝手に動いてくれるのは楽なんですけど、そのあとまとめるのが大変。

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