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第三十四話 楽しい実験教室。炎は友達怖くない! でも友達との距離感って大切だよね?編

「窯……ですか……?」


「はい~……」


 その日、ログインすると同時に、るーさんに相談を持ち掛けられた。


「石炭のおかげで火力は出るようになったんです~。でも~、窯や型が熱に耐えられなくて~、釘を大量に作るとなると~、鍛造でなくて~鋳造したいんですけど~」


 なるほど、確かにそれは盲点だった。鉄を鋳造するとなると相当な熱に耐える素材が必要になるな。


 釘や、その他金属部品はこれから大切になるだろうし……。


「わかりました。何とかしてみましょう」





◇◆◇ と、いうわけで! ◇◆◇





「ゼット!」


「マニコの!」


「「楽しい実験教室~!」」


 ワーワードンドンパフパフ~


「それ、わざわざ作ったの?」


 俺のチンドン屋装備を見てあきれ返るレキ。


「いいじゃん、盛り上がるだろ?」


「貴重な鉱石とかゴムとかまで使ってなければ同意したかもしれないわね」


「……うっ!」


 確かにラッパとか鉦[チンドン屋のチンの部分]とか作るのに使ったけどさ。


「るーさんも、こんなバカに付き合わなくても良いんだからね」


「でも~、私のお願いのための~、イベントですから~」


「流石、るーさんや~さすぃ」


「はいはい、私は優しくありませんよ。で? 今回は何をするの?」


「耐熱煉瓦と、石膏の実験だな」


「はい~、でも~石膏なんですか~? 砂型でも構わないと思うんですが~」


「今回はまだ、仕上げにかけれる時間的余裕がないからな。表面加工をする手間を考えたら石膏型で大量に作った方が効率的だという判断だ」


 砂型はどうしても表面がざらついてしまって、釘みたいなものを作るには磨く作業が不可欠になってしまう。逆に茶瓶みたいな鋳物だとそれが「味」になるんだけどな。


「そこで、粘土とかこの前作った漆喰にいろんなものを混ぜて耐熱性能をアップさせようっていう作戦なのさ」


「っと言うわけで、こちらが混ぜ終わって乾燥させたものになりまぁっす」


 マニコがストレージから次々にサンプルを取り出す。


「なに其の三分間クッキングみたいなの」


「今回は乾燥させる手間があるからな。いちいち一つ一つやってたら効率が悪い。そもそも、るーさんから依頼を受けたのは数日前だし」


「ふーん、そういうもんなの……」


 腑に落ちていないようなレキはほうっておいて、実験を開催しませう。それではるーさん! やっちゃってください!」


「なんか~、ゼット君いつもと様子が違いますね~」


「気にしないで、実験の時はいつもあんな感じよ」


 仮造りの窯にるーさんが火を入れる。小さな火種から木炭、そして石炭という風に段階的に入れていき。やがて石炭が煌々と赤い光を放ち始めた。


「ころあいです~」


「それじゃあ、サンプルを入れていくか」


 一つ一つサンプルを並べていく俺とマニコ。


「って、ちょ、燃えてる燃えてるっ!」


「? わぁっ!? マジだっ!」


 サンプルを並べていたアームパーツから火が燃え移ってどんどん体の方へ燃え広がっていく


 そりゃそうだよねー、実験用パーツは魔樹を使用してないから赤く燃えた石炭なんかに近づけたら、そりゃ燃えちゃうよねー。ってそんな和んでる場合じゃない!


 水っ! みずっ!


「アイスブレスっ!」


 突如、俺を冷気の渦が襲う。


 それによって火は消し止められたが、俺のコアは、それに耐えることができなかった。



◇◆◇



「まさか、パーティPK第一号があたしとは思わなかったわね。しかも、仲間殺しだから、カルマ値の加工具合は相当逝ってるわね、こりゃ」


「俺もまさかレキに殺されるとは思わなかった。まあ、いい経験になったよ」


 これで、「かまうなっ! 俺ごと撃てっ!」大作戦は、気軽に使えないことが分かったしな。


 冷静に考えると、デスペナと予備もある実験パーツじゃ、デスペナのが重いから、燃えてるパーツだけパージしてコアを守ればよかったんだけどさ。いきなりだったからパニクってそこまで頭回ってなかったし、それはあえて口に出さないことにする。


「第二攻撃特技は氷系にしたんだな」


「そうね、ギルドのメンツの火力は熱系と打撃系に分かれてるから、それ以外から埋めていこうかなって」


「レキさんは~、優しいですね~」


「なに? ちょ、なでないでよ!」


 言いながらも、さすがにるーさんには強気の突っ込みをできず、されるがままに撫でられるレキ。


 そうだよな、なんだかんだレキが一番周りを見てスキルをとっているのだ。他のメンバーは我が道を行く連中ばっかだからなぁ。


「レキ……もっと好きに生きていいんだぞ?」


「あんたに言われるとぞっとしないわ。好き勝手生きてる代表」


「そりゃないぜべいべー」


 っと、そろそろサンプルがいい感じに熱せられているころかな?


「結構残ってるな。」


 石炭の炎の高熱にさらされても粘土と石工はそこそこ形を保っていた。


「うん、そうだね。じゃあ、取り出してみよっか。」


 マニコが猿ボディで長いやっとこで取り出し行く、その過程で、いくつかは崩れてしまったけどそれでも結構な数が残った。


「女王の甲殻、フォレストベアの骨粉、オクトエイプの歯。ここら辺が、よさげな感じだね」


「じゃあ、その三つを混ぜて、一番いい調合を探したら、渡しますね」


「はい~、窯の作成は私の専門ですから何とか頑張ってみますね~。お代は何がいいですか~」


「じゃあ、アリのあごを作ってくれないかな? うちの子たちの何匹かが顎がかけちゃって困ってるんだよね」


「お安い御用です~。ゼット君は何かありますか?」


 聞かれたが、今欲しいの釘意外に思いつかないんだよな。それの代金はもう話がついてるんだし、ここは貸し一にしとくのも手だけど……。


 あっそうだ。


「じゃあ、俺からは……ゴニョゴニョ」


「できると思いますけど、いいんですか?」


「まあ、保険みたいなもんです。役に立たなかったら立たなかったでいいものですから」


「わかりました。かっこいいのを作りますねぇ」


 後日、その代金はしっかりと引き渡された。


 本当に、こいつが役に立つような場面には、遭遇したくないもんだぜ。


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