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第三十話:楽しい実験教室。未達成タスクを片付けよう編

 さて、だーさんるーさんが帰ってくるまで、まだだいぶかかるということで、今のうちに放置していた実験を行ってしまおう。


 ミスティックアンバーの性能試験と、スチームバッシュシールドの改良である。


 日課の亀殺しを終えた俺は早速、実験用に作った壊れてもいいボディに換装し実験スペースへと移動した。


 マニコとレキもすでにスタンバイ済みである。


 マニコはともかくレキも付き合いがいいよな。実験のときには呼ぶ約束はしたけど、呼んだらほぼ確実に来るというのは、やっぱりこいつも実験好きなんじゃないだろうか?


 まずは改造方向の決まっているスチームバッシュシールドの方からいくか。


「確かこの子の欠点は、弁を開くのに時間がかかることだったよね?」


「あぁ、以前は弁を留め金で止めてその留め金を操作していたんだが、それにかかる摩擦が大きすぎて動かすのにかなりの魔力と時間が必要だったんだ」


「解決策はもう講じてあるの?」


「ぬかりなく。と言うかワンパターンですまないんだが、形状記憶ゴムだ」


 俺はあらかじめ用意しておいたミニ輪ゴムを弁の開閉口に張って、魔力を通して閉めて通すのをやめると蒸気の圧力で開くという仕掛けを作る。


 後はこいつが蒸気の熱や圧力に耐えられるだけの強度があれば問題ないのだけれど・・・・・・。


 仕掛けを作り、いざ圧力をかけ始める。蒸気の漏れもないしまず第一段階はクリア。


 4・・・・・・5・・・・・・6・・・・・・よし圧限界値の7秒たっても弁に変化はないな。


 魔力を解いて解放するとバシュッと蒸気が一気に噴き出して、向けた相手の視界をふさぐように広がった。


 成功か? と思ったのだが・・・・・・。


「閉まらない・・・・・・」


 弁がパカパカと開きっぱなしになったまま閉まらなくなってしまった。解体(バラ)してみると形状記憶ゴムが溶けてちぎれている。どうやら魔力を通した状態だと熱にも耐えられるが、魔力が通っていない状態だとその限りではないらしい。


 また振り出しか・・・・・・。


「うーん、発想は間違ってないと思うんだけどなぁ。消費魔力が少なくてより強いモーメントを引き出せる形状記憶ゴムの特性を生かそうっていう・・・・・・」


 マニコがつぶやく。そうだよな、力の強さと強度は問題ないんだよ魔力が通っている分にはさ・・・・・・。って待てよ?


「力が・・・・・・強い・・・・・・?」


 そうか! 何も難しく考える必要はなかったんだ。ただ単純に、留め金の動力をゴムにすれば蒸気に振れているときには魔力が通っている状態になる。そっちの方向で試してみるかっ!


 以前の仕様に戻し留め金を外す機構だけ動力をゴムに変える、


 そして実験。


「今度は成功っぽいわね。おめでとう」


 10回ほど試しで作動させてみたが、異常は見られない。実戦で使えるかは使ってみないとわからないが一応の完成を見たといえるだろう。


さて次はミスティックアンバーだ。



◇◆◇



 ミスティックアンバー、一対の牙の様な化石が入ったコハクである。


 一体どういう作用があるのかまったく想像がつかない。魔石の類は一度魔力回路に繋いでしまうと取り外せなくなるのは、先の火と水の魔石で証明済みなので慎重にもなるのだが、まったくほうっておくのもアレだよなぁ・・・・・・と言うわけで。


「チキチキこいつに魔力を通したらどうなっちゃうの? 予想大会!」


「相変わらず何のノリなのかわからないわね・・・・・・」


「はいはーい、召喚系の魔石だと思いまーす。こう、牙の鋭い肉食獣的なのが出てくるに一票!」


「はい、マニコさんいいノリですね。それに比べてレキさんはダメダメですねぇ。ダメェーっ!」


 俺は台詞と共に胸の部分をパカッと開けてバツ印をかいたプレートをびょーんと飛びださせる。


「うっわムカつく。なにそれ? わざわざ仕込んだの?」


「ふふん、まだまだいろんなパターンがあるんだぜ!」


「見えるわー、無機質な機械の瞳の向こうに、ものっすごいムカつくドヤ顔が見えるわー」


「そんなに見つめちゃイヤンっ」


「サンダーブレスっ!」


「ゴムバリアーっ!」


「素直に突っ込みくらい受けなさいよ。男らしくないわね」


「まともに受けたら死亡回数プラス1だわ。俺の魔法防御の無さをなめんなよ!」


 と、楽しい戯れはこのくらいにして。


「真面目な話、レキはどう思う?」


「そうね、意外に属性付与かもしれないわよ。種族獣に対してダメージプラス何%とか」


「んじゃあ俺はSTRアップにしよう。いかにも力強そうだしな」


 さて、それじゃあここからが機工士の腕の見せ所。と言うわけで、俺は図面を取り出す。ゲートから取り出した複雑な回路図の一部で実験済みのもの達だ。一つ一つパターンを試してどういう意味があるのかを解析中だが、今のところ写した物のなかでも10分の1も進んでいない。ゲート全体からみれば100分の1にもなって無いだろう。が、いくつか有用なものは見つけてある。俺はその中で単純増幅系の回路を、あらかじめ成形しておいた虹色セラミックの土台に刻みこんでいく。


「いつもみたいに直線で張るわけではないのね?」


「ま、俺も日々成長しているってことで。ちょっと集中するから黙っててくれな」


「おっけーだよー」


 回路の中で一番複雑なところを仕上げていく。感覚としては習字のお手本をなぞる感じに近い。太さなんかも同じにしないと機能しないので神経を使うところだ。


 練習では三回に二回の割合でしかできなかったのだが何とか失敗せずに仕上げることが出来た。


「さて鬼が出るか蛇が出るか」


 半球状の土台の先端にミスティックアンバーを嵌め込み魔力を流し込む。


 ブアサァっ!


 そこから生えてきたのは一対の翼だった。それも鳥の羽ではなく所謂ドラゴンを想像させるような爬虫類の皮膜である。翼長はだいたい二メートルほどであろうか?


「つまりこの中にあるのは牙じゃなくて爪だったってこと?」


「それで間違い無いだろう。この羽にも爪が生えてるしな」


 と言ってもコハクの中に入っている爪とこの翼に生えている爪とでは大きさに差がありすぎる。もしかして増幅回路の影響かな? としたら大成功ってわけだけど。


「だけど部分召喚かぁ。私おしかったなぁ」


 とマニコがつぶやく。


「まあ、完璧に予想出来る方がおかしいだろ? ってわけで、ニアピン賞はマニコさんです!」


「やった! 賞品は?」


「ありません! あえて言うなら俺からの称賛です。すごいぞマニコ!」


「がくっ」


 わざわざ口に出してうなだれるマニコはほうっておいて。俺は早速竜翼発生装置(仮)を背中に装着する。


「よし、じゃぁさっそく飛んでみるかっ!」


 翼が出来たなら飛んでみなくっちゃね!


 翼を出しているだけでじりじりとMPは減っていってはいるが、少しぐらいなら大丈夫だろう。


 俺は背中に魔力を集中させて、思いっきり羽ばたいてみる。


 ブァサっ! ブァサっ! と景気の良い羽ばたき音と共に俺の足元にある木の葉や枯れ枝が舞い飛び徐々に俺の体は宙へと・・・・・・浮くようなことはなかった。


 いや、羽ばたくたび体が持ち上がるような感覚はあるんだが、それだけだ。


「なぜだ!? 飛べるようになったと思ったワクワクを返せよ!」


「きっと、重すぎるんだと思うよ? ちょっと軽量化してみたら?」


「おぉ、そうだな!」


 俺は体のパーツをどんどん外していき試す。足を外し、腕を外し、頭を外し、胴体パーツを外して、懐かしのディスクシューター形態になったところで飛ぶことにやっと成功した。


「おぉ、これはなかなか新しい感覚だな。というわけでちょっと空の散歩に行ってくるわ」


「あ、もうオチがよめたわね」


 ふふ、レキよ。俺が調子に乗ってMP切れで墜落すると考えているな!


 甘いぞ。俺がどれだけ機械族やってると思ってるんだ。MP管理はお手の物さ、丁度ぎりぎりを見極めるのも造作ない。というわけで俺は空へと飛びあがった。


 木々の上から見下ろす景色は存外悪くない。しかし結構はっきりとわかるものだな。頭一つどころか二つ三つ飛びぬけた魔大樹はもちろんのこと切り開いた牧場やゲートある広場など木々の少ない場所は結構目立っていた。こりゃ、空を飛ぶ手段のある奴が現れたら一発で見つかっちゃうなぁ。と言うか今の時点で空を飛べる奴ってどのくらいいるんだろう? 取り合えず鳥獣族(ビースト)の鳥系統を選んだ奴は飛べるだろうけどそれ以外は? もしかして俺が初だったり? ってそれはいくらなんでも自惚れが過ぎるか。


 っとそろそろMPがやばいな戻るとするか。


「ギャァオウウウウウウ!」


 ぎゃおう?


何かの咆哮と共にあたりが一瞬で暗くなる。


 あ、いやな予感。


 間一髪竜翼発生装置(仮)とディスクボウガンだけは死守することが出来たという事だけ記しておこう。



◇◆◇



「おかえりー」


「やっぱり死に戻ってきたわね。死に方は予想の斜め上だったけど」


 うるさい、こっちだって予想外だったんだ。


「空にもMOBが出るんだな。しかも結構強烈なのが。普通にドラゴンだったぞ」


「見てたよ。大きかったねぇ。地上の私達までは襲ってこなかったけど、一定高度を超えると襲ってくるのかな?」


「さぁ? 今のところは考えるだけ無駄だろ? 今の装備で勝てる気はしない」


 ドラゴンの素材は魅力的だけどな。相手が悪すぎる。


「ま、あいつへのリベンジは、そのうちするとして。今日はもう予定はないのよね?」


「そうだなあと2時間くらいなら余裕はあるぞ」


「じゃあ、あたしのレベリングに付き合ってよ。やっぱソロだと効率が悪くなってきてさ」


「あっじゃあ私も行く! しばらく狩りをしてないと勘が鈍るんだよね。そろそろ次の寄生先も捕まえたいし」


「んじゃ、三人でちょっと強敵にでも挑みに行くか! 俺はあいつとは別にリベンジしたいやつがいるんだよ」


 急遽狩りタイムになった俺たち一行は俺の先導のもと、西へと向かうのであった。


 三十話ですねぇ。そして確かこの話でやっとこさ十万字越えでもあります。毎日更新ならここまで一カ月著とでくるんだよなぁ。マジで更新の早い人たちは尊敬します。

 ま、自分は自分のペースでのんびりやっていきます。今後もこんな感じですがお付き合いいただけたら幸いです。


 ちなみに、ゲーム内で空を飛べるプレイヤーは、まだわずかしかいません。と言うか、鳥系モンスタープレイヤーでもないのに低レベルで空を飛んでいるのはゼット位なものです。ちょっとだけチートですねほんのちょっとですけど。


 ではここまでお読みいただきありがとうございました。

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