第二十八話:道は続くよどこまでも
魔大樹の北でレキとレベリングを初めて数日。
ここの敵にも慣れてきたので、俺たちは今日、ちょっと深くまで探索することにした。
主な敵MOBはオクトエイプにフォレストシザー、スライムプワゾン。
オクトエイプは八本の触手をもつタコみたいな猿。いや、猿の顔に直接触手がついているので、猿みたいなタコかもしれない。触手を器用に使って、枝から枝へ跳びまわりながら投擲攻撃を行ってくる。こいつは形状記憶ゴムで強化したディスクボウガンで撃ち落としてからレキのブレスで処理。
フォレストシザーはその名の通りカニである。子供の身長ほどもあるでかい鋏が特徴的だが距離をとってスチームでボイルしながら俺が引きつけて,
これまたレキのブレスでとどめ。
スライムプワゾンは、なんでこいつだけフランス語なのかわからないが(おそらくは命名者の趣味であろう)、毒スライムだ。しかし、機械族である俺はデフォルトで毒無効を持っているらしく、こいつはただの攻撃力の低いスライムと化してしまう。俺一人でも対処可能だが一応レキのレベリングも兼ねてブレスも打ち込んでもらう。
レベリングの最中に攻略法を編み出していた俺たちは、順調に北側の地図を埋めていくことが出来た。
「そろそろ4キロ地点ね。西側は、ここらが端っこだったんでしょ?」
「エヴァさんの話だと、北はもうちょっと広いらしい、領主の屋敷とかがあるって話だけど、残って無いだろうな」
「ここまでの建物も、みんな基礎以外はほとんど残って無いものね。ってきゃふ!」
俺が急に立ち止まったので。肩に乗っていたレキは転げ落ちてしまった。
「何よもうっ! 止まるなら事前に予告してよね」
「すまん。ちょっと気になるものが見えたもんでついな」
「はぁ、いいけど。気になるものって何よ?」
「あれ、何に見える?」
「? 何かしらね? 輪っかのアート?」
俺が指さした先にあったのはいくつかの輪で構成されたオブジェの様なものだった。草木をかき分け近づいてみると、台形のしっかりした土台の上に人がくぐれるくらいの金属製の半円乗っており、その上にやはり禁則の輪で構成されたヤジロベーの様なものが乗っている。
明らかに人工物であるのに草の蔦と苔にまみれているそれは妙に森になじんでいた。
「建物が軒並み崩れているのに、これだけ残っている理由ってなんだろうな?」
「それはやっぱ、何か重要な意味があると思う?」
「期待はするよな、やっぱり。とりあえず調べてみるか」
まずは土台の苔と泥をスチームランスで落としていく。すると何やら文字の彫られた金属製のプレートが出てきた。
「なんて書いてあるの?」
「ちょっと待ってくれ、っと、結構簡単だな。ぼ・ぼ・ん・が・げ・ー・と? ボボンガゲートか・・・・・・ってゲート!?」
ゲート、各都市を結ぶためのワープ装置である。主要都市には必ず設置され大陸間の移動もできる優れものだが、俺たちモンスタープレイヤーには縁のないもの・・・・・・のはずだったのだが、思わぬところで見つけてしまった。
「と言うことはこれで他大陸への道筋がついたって事?」
「そうでもあるが、これがほかの都市のゲートともつながるとなると、ちょっと厄介だな。押し寄せてくる人プレーヤーから拠点を守るのはちょっと無理ゲーだぞ? だーさんたちは喜びそうだけど」
「それもそうね、じゃあ放置安定かしら?」
「それはもったいないんだよなぁ。とりあえず魔法関連だろうしエヴァさんに相談するか」
「おっけ、だーさんたちにも連絡しとく?」
「頼む」
俺はそれだけ言うと、エヴァさんと回線を開いた。
「もしもしエヴァさんちょっと相談したいことが出来たんだけど、今時間大丈夫?」
『はい大丈夫ですよ。何ですか?』
「北を探索してたらゲート見つけたんだけど、これって復旧させたら、いま人族が使っているゲートとつながったりするかな?」
『それは無いと思いますよ。ゲートは機工士の領分なので詳しくは知りませんが、初期設定でゲート同士をつなげるのにお互いにお互いのゲートの情報を打ち込まないといけないらしいんです。それをやらない限りはつながらないかと・・・・・・』
「なるほど、と言うことはゲートが復旧しても相手を見つけないと意味はないと」
『そうですね、そうそう見つかるものでもないでしょうが・・・・・・』
「それはまぁ、きっと何とかなります。復旧の仕方とかはわかりますか?」
『さすがにそこまでは・・・・・・さっきも言いました通りゲート関連は魔術師ではなくて機工士の領分ですので・・・・・・』
「解りました、それじゃ俺の領分と言うことで頑張ってみます」
『はい、ご健闘をお祈りします』
通信を切るとレキも丁度通信を終えたところだったようだ。
「だーさんたちはなんて?」
「そっちの判断に任せるって。それから、こっちは探索を町の外まで広げてるから、しばらく帰れないって言ってたわ」
「そうか、がんばるなぁ。だーさんたち・・・・・・。とりあえず、今すぐ復旧させても当面危険はないらしいってことは確認できた」
「そうなの?」
「エヴァさんの保証付き。というわけでもうちょっと調べてみるか」
俺はまずゲートに付与されているであろう魔力回路を調べてみる。
「うわ、めちゃくちゃ複雑だな」
「長くなりそうなら、あたしは帰っていい?」
「あぁ、そうだな、今日はここで解散にするか? 拠点まで送ってか無くて大丈夫か?」
「だいじょうぶよ。最悪、死に戻りするだけだし」
「そっか」
男としてこういう時頼ってもらえないのは少々さびしくもあるが、彼女がそう言うのなら、お言葉に甘えるとしよう。
「んじゃ気をつけてな」
「そっちもね、没頭しすぎて敵に気がつかないとか、まぬけなことにならないように気をつけなさい」
「りょーかい。気をつけるわ」
去っていくレキを一通り見送った後、俺はゲートに向き直る。
これは一回魔力を通してみて壊れてる個所を洗い出すことが初めに必要だよな・・・・・・。
回路を反応させないように少しずつ魔力を通しては、反応を調べていく。不自然に途切れているところを修復しては次の個所へ。
と言うか魔力回路をこう複雑に繋げることで意味を持たせることもできるのか・・・・・・。勉強になるな。
全体の三分の一ほどを修復したところで、回路の一番根元、台座の中にあるそれにたどり着いた。
「これがゲートを動かすための動力か・・・・・・どうなってんだ? これ・・・・・・?」
そこには何やら複雑にくまれた金属と魔石っぽい物の集合体が鎮座していた。
「これがうわさに聞く魔力ジェネレーターって奴か? これも壊れてんのかな?」
試しに魔力回路を調べてみるが何の反応も見せない。よく見るとこぶし大の石を嵌め込むところが一つあいているのが見えた。
「他に壊れているところは無さげだしな、これが原因か・・・・・・材料が足りないとなるとさすがにお手上げだぞ?」
試しに他のところにはまっている石を鑑定してみる。
「無の魔石クリスタルか・・・・・・手持ちには無いな・・・・・・しかもこの大きさとなると・・・・・・」
ちょっと手に入りそうにない。ここまで来てあきらめるのか・・・・・・。
いや、足りないのは一個だけなんだここを回路で結べば何とかならないか?
普通に繋いでいても反応は無し。思いつく限りの図形で試してみる。
試行錯誤、32回目くもの巣型に繋げてみて魔力を流すと、ほんの少しだけ起動しかけた。8角を12角にして再試行。青白い光を放って、ジェネレーターは動きだした。しかし光は弱く明らかに出力は不足しているようだ。
まぁ、近場なら何とかなるかもしれないな隣にあると思われるプルミエかディスアン位ならいけるかもしれない。
まあでも魔石探しは急務だな。どんな負担がかかってるかわからないし、それで壊れられても困る。
よし、残りの修復も終えてしまうか・・・・・・ってもうこんな時間か。残りは明日だな。
俺はその場でログアウトすることにした。
というわけで、他大陸へ行く段取りがつきましたが、どこに行きましょう?
よろしければ感想フォームよりリクエストを受け付けます。一通も来なければダイスで決めるかな? 各大陸の基本情報は前話の後書きにありますので参考にしてください。
受け付けは次の話が投稿されるまでにします。
ではここまでお読みいただきありがとうございました。




