第二十七話:楽しい実験教室 ゴムの可能性編
「ゼット!」
「まにこの!」
「「楽しい実験教室~っ!」」
わーぱちぱちー(棒)
「何なのよそのノリは・・・・・・」
「いや、レキ。ノリって大切だぞ?」
「そうの通りだよレキ。いいアイデアはいいノリからしか生まれないって名言もあるんだよ」
「誰の言葉よ?」
「いま! 私が! 考えた!」
「・・・・・・ほんと、実験になるとうざったいわね、あんたらは!」
というわけで、拠点に帰ってきた俺は早速マニコとレキを呼んで実験を行うことにした。
「って呼び出しといてなんだけど、二人とも予定は大丈夫なのか」
「だいじょうブイ! 令の品種改良もあとちょっとでできそうだよ」
「あたしも大丈夫。あんまりガチガチレベル上げするのも疲れるしね。あんたたちの馬鹿に付き合うのも好い息抜きになるわ」
「馬鹿とは何だ馬鹿とは。確かに馬鹿だが崇高な馬鹿だ」
「馬鹿って認めちゃってるじゃない。まあいいわ、今日は何の実験をするの?」
「こいつだな」
「何? 玉?」
俺は、ゴムの樹液を製作スロットに入れて錬金術で乾燥させ、丸く固めたものを取り出した。帰り道で適当に固めたものだが、試作品としてはまずまずのゴム毬だ。
「なかなか弾力のある玉だね、ゴムっぽいけど・・・・・・」
「そのままずばりゴムだな。アイテム名もシステム命名でゴム毬になっているから現実のゴムとほぼ変わらない性能だと思うけど、そこら辺を実験していく。っと言うわけで、ゴムの樹液を渡すから手持ちの材料を色々混ぜていってみてくれ」
俺はゴムの樹液の小瓶をマニコとレキにそれぞれ三分の一ずつ渡した。
「え? 私も?」
さっそく自分の世界に入っていくマニコとは対照に戸惑うレキ。
「見てるだけじゃつまんないだろ? 獣の手じゃやりにくいかもしれないが頼む」
「いいけど、私の持ちネタなんてそんなに多くないわよ?」
「何がどう作用するかわかんないからな。可能性はできるだけ広げておきたいんだ。だから先入観は持たずに総当たりで頼むわ」
「OK解ったわ」
そう言うと何やら草やら木の皮やらを取り出してあれこれし始めるレキ。草木染めに使った材料だろうか? なんだかんだいってレキもこっち側の嗜好の持ち主だよな。
「さて、俺も自分の実験に入るとするか」
俺は竈に俺は竈に火をつけた。
◇◆◇◆◇
「っだー、なんで混ざらないんだ!」
俺は十四度目の実験失敗に叫ぶ。
うろ覚えだけど、ゴムに炭を混ぜたら硬質ゴムになるんじゃなかったっけ? 粉にした木炭を比率を変えてませること十四度。いずれも分離してしまってうまく固まらない。
こうなってくると材料が足らないということなのか?
一度休憩するか。他の様子を見てこよう。
「まにこーちょうしはどーだー」
「えらく気のぬけた感じだね? どしたの?」
「いや、あたりが外れたことでちょっと傷心中。そっちは何か成果はあったか?」
「こっちは大成功だよ。見てみて」
そう言って見せつけてきたのは直径十cm太さが人差し指ほどある大きめの輪ゴムだった。
「見ててよ・・・・・・それっ!」
それをテーブルの端に引っ掛けると引っ張った。
「うおっ! 何だそれ?」
伸びる伸びる。テーブルの端から10m以上のところまで伸びた。テーブルが動かないところを見るとそれほど張力は強くないのかもしれないな。
「じゃー放すよ!」
予想した通り。戻りはゆっくりだった。5mくらいまで戻ったところで動かなくなった。
「面白いな、何を混ぜたらこんなのになったんだ?」
「うんこ」
「え?」
「だからうんこ。今品種改良している奴のさ」
「・・・・・・マニコ、なんでそんなもの取っておいてあるんだ?」
「発酵させたら、堆肥にならないかなと思って。結局植物にとって有害なものにしかならなかったんだよね。だから帰ってこういうのに向いている素材なんじゃないかって試したらビンゴだった。と言ってもそのまま混ぜたんじゃなくて色々調整して生成した黄色い粉にしてからだけどね」
「そうかー、それにしてもお前実験になると恥じらいが無くなるのな?」
「ん??」
不思議そうに小首をかしげるマタンゴ。ホモがどうとかって恥じらってたのと同一人物とは思えないな。
「それにしてもモンスターのうんこか・・・・・・やっぱり、他のモンスター素材みたいに魔力の通りが良かったりするのかな?」
俺は興味本位で魔力回路をその輪ゴムに仕込み魔力を通してみる。
シュピっ!
そのとたん音を立てて輪ゴムは元の10cmの形にまで戻ってしまった。
「・・・・・・えーと、これって?」
「形状記憶ゴム?」
「ちょっと試してみるか・・・・・・」
俺は近くの丈夫そうな木の枝にゴムを引っ掛けて伸ばしていくぎりぎりまで伸びた10mまで引っ張ったところで魔力を通す。
話は変わるけどさ、パチンコってあるよね? 玉入れゲームじゃなくてスリングショットの方。俺あれ結構好きでさ、ガキの頃、自作していろんなもの飛ばして遊んでたことがあるわけさ。今度やる時は自重しようと思うね。発射されるのがあんなに怖いとは思わなかった。
◇◆◇◆◇
「ただいまー」
「おかえりー」
魔樹パーツをあらかた失って予備の倒木パーツで帰還する俺。
あんな威力で打ち出されて死に戻ることになるとは思わなかったぜ。
「なんでゴムの実験で今までで一番の被害を受けてんのよ?」
「いや、予想外だった。一応引っ張られるとは思って構えてはいたんだが、あんなに力がかかるとは・・・・・・」
「カートゥーンみたいな吹っ飛び方だったね。これでちょっとは使い道が出てくるかな?」
「どんなだよ。でも確かに何かしら使えるかもな。そう言えばレキの方はどうだったんだ?」
「あたし? あたしの方は失敗よ。色々混ぜてみたけど混ざらないか固まらないかだったわ。」
「ん? 固まらないってどういうことだ?」
「そのまんま、ウマエ草の実をアルコールにつけて色だししたものを混ぜたんだけどね。いくらスキルで乾燥させてもどろどろのまんまなの」
見せてきたのは少し黄色くてねばついた何かだった。なるほどひらめいた。
「いや、これは使えるかもしれない。サンキュ」
「え? 何に使えるってのよこんなの」
「マニコさっき言ってた黄色い粉ってまだ残ってる? いくらか譲ってほしいんだけど」
「腐るほどあるよ~。お題はゴムの樹液でいいよ」
「ホントか? よしじゃあこれと獣脂の塊を混ぜて・・・・・・」
ひらめきって大切だ。それを黄色くねばついた何かに混ぜこんで練り合わせていくとだんだん粘度が落ちてサラサラの油の様なものになった。
「可燃性は・・・・・・無しっ! 念願のさらさらしたグリスを手に入れたぞ!」
細かい比率の調整はしなければいけないだろうが取り合え酢当面は使えそうだ。これでニチャ付く関節ともお別れだぜ。
「へぇこんなになるのね、私の失敗作も役に立つんだ・・・・・・」
「マニコのこの黄色い粉はゴムに何かを混ぜる時の触媒みたいなものにもなるとふんだんだ。大正解ってね」
これを応用すれば硬質ゴムも作れるかもしれないな。
「じゃあ二人にお礼しなきゃな、出来ることなら何でもやるから、遠慮せずに言ってくれ」
「なんでもって、別にいいわよそんなの」
「私はモンスターの改良があるからまた今度でいいや。レキ遠慮せずに行っちゃえば?」
「急に言われても思いつかないって、あーそうだレベリング付き合うって約束まだ果たされてなかったわね、いつでもいいから近いうちに付き合って」
「そんなことでいいならお安い御用だ。明日・・・・・・はすまんがちょっと無理だから明後日からでいいか?」
「うん、しばらくよろしく」
そうして約束を交わしこの日は解散となった。
レベリングか・・・・・・失ったパーツを作り直さないとな・・・・・・。
思わぬ下ネタ回になってしまったorz
製造スロットですが製造職まとめて一組になっています。各製造スキルが上がるたびにその中にプラスされていくと。つまり、錬金スロットで何か作りながら木工スロットで他の物を作るとかはできませんが、スロット数の許す限りなら別々の作業が同時進行できます。スロットに材料を入れると何のスキルで製造するのかという選択肢が出て、その次にどんな加工をするのかの選択肢が出る、みたいな感じで想像してくださ。
では、ここまで読んでいただきありがとうございました。




