第二十六話:激闘フォレストベア
今日、俺は魔大樹の西側をさらに奥まで探索している。
歩いていると、ここが街だった時の痕跡、建物の基礎や舗装された道の跡などが見て取れるので、それをペイントツールで作った自作地図に書き込んでいく。しかし他の建物が影も形も残っていないところを見るとギルドホールが残っていたのはやっぱり魔樹の宝玉のおかげだったのかな?
ちなみにここが大陸のどのあたりかはまだ分かっていない。融資の協力によってセグンド大陸のメイン都市セグンド周辺と街道によってつながれたいくつかの町周辺の都市の周りから地図が作られていってはいるものの、このあたりとつながる情報は皆無だからである。周りのモンスターは初心者向けのものもたくさんいるし結構初期町の近くなのかなと思っていたのだがそうでもないらしい。
「っと、ここが西の端っこか」
何か大きな壁の後の様なもの跡の向こう側には建物の痕跡が見当たらない。おそらくここが街の端に違いないだろう。
「しかし結構歩いたな。簡易マップに拠点が移らないってことは一キロ以上ってことだよな」
まあ考えてみれば当たり前ではある、訊けばギルドホールはほぼ町の中心に位置していたという話で、そこから半径一キロ収まるようでは「結構大きな街」とは言えないだろう。
マーカーが消えたあたりを約一キロとして考えてそこから三倍くらいの長さがここまでであるので4キロちょっとと言ったところか、これでも俺の感覚からするとそれほど大きな町では無いような気がするが、でもまぁファンタジー世界観なら大きいのかな? ちなみに距離は歩数ではかっている。そのため今日は四つ足では無く二足歩行だ。
と、自作地図にそのことを書き込んでいると、奥の茂みがガサガサと揺れる。
俺は武器を取り出して警戒を強めた。
「グルルルルっ!」
唸り声と共に出てきたのは体長3mはあろうかという巨大な影。緑の体毛の所々に苔が付着した特徴的な姿、フォレストベアである。
そう言えば、俺が初めて死に戻りさせられたのって、鳴き声からしておそらくこいつなんだよな。あのときは何が何だか分からないうちにやられてしまったが、リベンジマッチだ。
俺もあの頃よりは大分強くなってるしな、どのくらいになったか指針にさせてもらおう。
「まずは先手必勝っ!」
俺は相手の目に向かってディスクボウガンを放つ。
とっさに目をつぶるフォレストベア、ディスクはぶ厚いまぶたに防がれてしまう。
だがそれでいい。ほしかったのは一瞬の隙だ。
「っこいしょぉっ!」
その隙を狙って、俺は首元にチェーンソーを振りおろす。が、単なる勘かそれとも本能かフォレストベアはこれを左前脚で防いだ。チェーンソーはその半ばまで切り裂くがそこで止まってしまう。そこで動きが止まってしまった俺めがけてフォレストベアの左手が襲った。
スチームシールドランスを構える俺。しかし足の方が耐えきれずにガードごと吹っ飛ばされる。飛ばされた先の木にぶつかった衝撃で右腕が破損。シールドランスの耐久力も半分以上持っていかれてしまった。やっベぇ、まだこいつを相手にするのは早すぎたか?
なおも向かってくるフォレストベアに対して死に戻りを覚悟した俺。だが振りおろされたフォレストベアの左腕は俺の頭の上を通り過ぎで後ろの木を削っただけだった。
フォレストベアのステを確認すると、状態「弱視」となっている。どうやら、さっきのディスクに仕込んでいた毒のおかげで片方のまぶたが腫れて遠近感が狂った様だ。
空振った隙を見て俺は、そいつの口の中にスチームシールドランスを付きこむ。
しかし、フォレストベアの鋭い牙の前に木製のノズルは無残にも噛み砕かれてしまった。
「構うかよっ!」
俺はそのまま魔石に魔力を流し込んだ。高温の蒸気がフォレストベアの顔の前で炸裂する。
「ギャウっ!」
これはたまらないといった風にフォレストベアは俺から離れ、そのまま重無の奥へと逃げ去ってしまった。
なんにせよ。
「命拾いしたわ~」
あのままだと又パーツの作成を一からやり直す羽目になるところだった。めんどくさくても予備は作っておくべきだな。こういう強MOBとの事故的遭遇はいつ起こるか分からないし。
っと、立ち上がろうとすると背中にべたつくものがある。触って確かめてみると何やら白濁色の粘液だった。
「うわっ気持ち悪っ!」
思わず飛びのいて後ろを振り返ると、どうやらさっきのフォレストベアの攻撃で削れた木の幹から流れ出した樹液の様だ。
「まぁ、新しい素材かもしれないし一応回収しておくか・・・・・・」
樹脂の小瓶をストレージから取り出して採集する。アイテム化したそその液体の名は、
『ゴムの樹液』
「ゴムキターっ!」
重要な文明資源の一つであるゴム、こんな所で発見できるとは運がいいぞ。これはできるだけ回収しておかなきゃな。
手持ちの瓶いっぱいに樹液を回収、他にも無いか探してみたら周りには結構生えていた。フォレストベアの湧くところと言うのがネックだがそれでも見返りは結構でかい。十分また最終に来るメリットはある。
俺はその場所を地図に花まるで示し、意気揚々と岐路に付くのであった。
ちょっと短いですけどキリがいいのでここで切っときます。
遅いうえに短くて済みません。次回はちょっと早く上げれるかな?
ではここまでお読みいただいてありがとうございました。




