題二十二話:真相
元ギルドホールがあった場所には得た木は周りの草や蔦をも押しのけ、あっという間に見上げるほどの巨大樹へと育ちあがった。
「みんな無事か!?」
その木を見上げながらへたり込んで、俺はメンバーの無事を確認する
「僕たちは大丈夫だよー」
「はい~。エヴァさんもイザベラさんもちゃんと運んできました~」
さすがるーさんその肢体はだてじゃない!
「あたしも無事だけどマニコが見当たらないわね・・・・・・」
「あぁ、あいつ部屋の一番奥にいたし今回の作戦のためにマタンゴの体リセットしちゃっててちっちゃいからなぁ・・・・・・南無・・・・・・」
「死んでないよっ!」
声の方を振り返ると巨大樹の根元にポコンと小さなキノコが生えてきたのを見つけた。
「何とか暴走を止めようと頑張ったんだけど、この木との共生関係を維持するので精一杯だったよ・・・・・・ごめんね・・・・・・」
「ま、気にするなとは言えないが、最初から賭けだったのはみんな承知の上だったんだ。俺たちは賭けに負けた。ゲームやってりゃそういうことも多々あるさ」
「そうですよ~。誰もマニコさんが手を抜いたなんて思ってませんよ~」
「ネトゲのスキルのことなんだから、ぶっちゃけ確立だしね。あたし的にはイザベラさんが出てきた時点で賭けは勝ちだったと思うけど」
「あぁあれは驚いたな、まさか出てくるとは思わなかった」
「あれ? ゼット君が勢いよく啖呵切ってたものだから、僕はてっきり予想していたものだと思っていましたよ」
「いや、あれは半分勢いというか、俺たちと一緒に生きてみようぜ的なつもりで吐いたセリフだったんですけど・・・・・・そう言えはその二人は?」
マニコのところへと集まっていた俺たちに置いて行かれた二人は、必然二人きりとなって何やら気まずい雰囲気を出していた。
「エヴァさん・・・・・・」
「すまないイザベラ・・・・・・私は、君に・・・・・・」
「ううん、事故だったんでしょ? 仕方がないよ」
「いや、違うのです。私は君の思いに嫉妬して・・・・・・いい歳をして情けないが世界が終わればいいとさえ・・・・・・」
「嫉妬?」
「あの日君が両手いっぱいのバラを抱えて帰ってきた日のことです」
「え? だってあれは・・・・・・」
あー、だいたい話が見えてきたな。
完全に二人の世界に入っているので、ちょっと話しかけずらいが割り込むとしよう。
「すみません。それってこれが関係ありますかね?」
俺はそう言って例のメモを差し出す。
「これは・・・・・・?」
「床下を探索した時に見つけたものです。すみません、あの時点ではまだエヴァさんを完全に信用していなかったもので・・・・・・」
『わが愛※※れと※にエヴァ※※※に※げる』そう書かれたメモ。まぁ、ここまでくれば馬鹿でも真相はわかるというものだ。
「それって・・・・・・っ!」
「あぁ、やっぱり自分で言います? 人からばらされるのはちょっと嫌でしょう?」
「えと・・・・・・はい・・・」
「どういうことですか?」
「え・・・えと、プレゼントもなくなってしまったし、私、こんな姿になっちゃいましたけど・・・・・・エヴァさん私の思い受け止めてくれませんでしょうかっ!」
「え? ・・・・・・え?」
つまり、エヴァさんとイザベラさん潜在的な両思い→しかしお互いに一歩が踏み出せず硬直状態に→そんな状態を打破しようとイザベラさんが動く→その様子を見て違う人に告白するのだとエヴァさんは思いこみ暴走→巻き込まれたギルドと街は超いい迷惑。
なんともまぬけな話である。そんな勘違いで殺され続けたとされる冒険者たちも浮かばれまい。彼らこそゴーストになるべきだろうに、見事に成仏しているのか魂までも喰いつくされたのか・・・・・・。
まぁ、いない奴らに意見を言う資格は無いだろう。
「そんな・・・・・・私は勘違いで何と言う事を・・・・・・」
まぁ、そうなるな。
案の定エヴァさんは罪悪感で押しつぶされそうになりながら崩れ落ちた。そりゃそうだ、あまりに馬鹿らしい真実なのだし、その上恥の上塗りを重ねているのだから。
しかし、ギルドホールが手に入らないとなるとこのNPCとのコネが最大の報酬ということになる。その上、何より気分が悪い。せっかく助けたのだから助かってほしいというのはエゴだろうが、ゲームの中ですら理想を貫き通せなくてどうする!
「だったらどうだというんだ?」
「え?」
「嘆いて、立ち止まって、何かが変わるってか? んなわけねぇ、お前は間違えて、間違えたままここまで来ちまった。だけどまだここに存在している。そうだろう!」
「しかし・・・・・・」
「あぁそうさ、お前が殺しちまった人間は還ってこない。だからどうした! その取り返しのつかない代償でお前は何を手に入れた?」
「・・・・・・・・・・・・」
「後悔するなとはいわねぇよ、目いっぱいしろ! したうえで、だ! それでも未来を求めてもいいんだよ!」
「そうです。一人で背負いきれないって言うなら私も一緒に背負います。正直に言っちゃうと、私ちょっと嬉しいんです。エヴァさんが罪を重ねてまで私を優先してくれたこと・・・。だから私も同罪です。エヴァさんは私が一緒じゃ駄目ですか?」
「さぁ! 手前の女がこう言っている! どうすんだ? えぇ!」
「わ・・・・・・私は・・・・・・・・・」
やべぇ、ちょっと熱が入りすぎちまった。仲間の方を振り向くのが怖いわ。
しかし、AIとはいえ、相手の気持ちは本物だ。こっちも本気で行かなきゃ説得なんてできるわけがない。
嘘はつかずにまっすぐに、自分の経験のすべてをぶつけるのだ。たかがゲームされどゲーム。本気でやって何が悪い。
「わたしは、許されるのでしょうか?」
「許されるわけねぇだろ。許してくれる奴はもう百年も前にいなくなっちまったんだから。許されないまま生きていくんだよ。だけどな、その間、ちょっとばかし幸せを感じる位、ばちはあたらんと俺は思う」
「・・・・・・」
「まぁ、すぐに答えは出ないと思うし、しばらく保留でいいんじゃねぇかな?」
俺は踵を返し仲間たちの方へ向かう。
「じゃあ、俺たちはもう行くわ。しばらくここには通うつもりだ。袖触れ合うも他生の縁っつーしな。また俺たちを歓迎してくれると助かる」
俺は振り返らずに右腕を振った。
「じゃあな。また明日」
返事は無い。
後は数字(0と1)の神様だけが知るって奴か。やれるだけはやったと思いたいな。
そうして俺たちはギルドホール後の巨大樹を後にいつものたまり場得と帰るのであった。
◇◆◇◆◇
「カッコつけすぎ」
帰り道の途中でレキがいきなり俺に向かって言う。
「いいんだよ、大人になるとなカッコつける機会ってのは減ってくもんなんだ。仮想空間の中くらいカッコつけてさせろ」
「でもさ、ホントにあぁ思ってんの?」
「どういう意味だ?」
「間違っちゃった人間がさ、間違ったまま生きてもいいのかなって・・・・・・」
「一概には言えないだろうし、直せるところは直すべきだろ? それでも、どうしようもないことまで責めるのは俺は好きじゃない。もちろん開き直ってるようなやつは、一回徹底的にたたいた方がいいと思うけどな」
ちょっと照れ臭くなって俺は冗談めかした口調で答えた。
「そっか・・・・・・」レキは粉雪がアスファルトに溶けるようにつぶやくと、もう一度かみしめるように「そっか・・・・・・」と言った。
踏み込むべきか止めておくべきか、悩んでいるうちにその日は解散になり、このことは俺の記憶の片隅へと追いやられるのだった。
ちなみにゲーム内の時間ですが基本は一日12時間周期で朝と夜が来る二倍速時間ですが、ベータテスト開始前に500年ほど時間加速させてのシミュレーションを行っています。というわけでAIたちが感じている歴史の時間は少なくとも過去500年は本物という設定です。
それではここまで読んでいただきありがとうございました。




