第二十話:かけなそなぞかけ
床下は狭いので、さすがに人型はで入るのはつらいということで俺はディスクシューター形態に変形して入ることにした。
中は外の様殻想像するよりも草の茂り方がまばらで上から漏れ出ている光の下に少しずつ草があるだけだ。俺は一階の見取り図を見ながら慎重に探索を進める。
さっき言った通りここは草の浸食が少なく基礎の部分はほとんど補強なしで行けそうな雰囲気だったので、被害のひどい個所だけをちゃちゃっと補修してから、おれは問題のギルドマスター執務室の下へ向かった。
実は、床下に入った一番の目的はここの調査を行うことだ。
何かしらボスの情報が手に入らないかと思ってのことだが、もちろんヤバ気だったらさっさと撤退するつもり。
ここは流石に暴走魔道具の影響が強いのか、他と違い草が生い茂り床の損傷が激しいのか、上から漏れる光は強い。まともに入っていけそうではなかったが、それでも床が抜けているという程では無いようなので、上から直接介入されることはおそらくないと判断し、俺は本体をディスクボウガンからチェーンソーに取り換え草を刈りながら進むことにした。
相変らず刈った端から草は生えてくるが、進み続けるならば問題はない。丁度部屋の中心に差し掛かった時、メモの様のものがトゲ付きの蔦に絡まっているのを見つけた。
とりあえず俺はその何かが書かれた紙片を周りの蔦に振れないように慎重に取り出しストレージへ入れる。
アイテム名は『過去の愛を記す』どんなポエムだよ。
このトゲ蔓はボスの一部かもしれないので、感づかれる前にその場から離れることにした。
「ふぅ・・・、さて何が書いてあるかね?」
無事何こともなくボス部屋の下を抜けだした俺はメモの内容に目を落とす。・・・・・・が、そこには日本語でもアルファベットでもないよくわからない文字が並んでいるだけだった。
「この世界の文字か? まさかこれ読むのにもスキルがいるとか? もしくは勉強しろと?」
めんどくせー仕様だなぁ、おい。
ま、読めないものはしょうがないか、とりあえず床下から出よう。
「おかえりなさいませ、何か見つかりましたでしょうか?」
出るとエヴァさんがいつもの微笑で待ち構えていた。どうにも表情の読めない人だ。執事っぽいって言ったらそれまでなんだけどな。
「いえ、特には・・・・・・。何かが見つかると思っていたんですか?」
「いいえ、どうしてそんな風にお思いななられたのですか?」
「ちょっとそう聞こえただけです。本当に何も心当たりは・・・・・・?」
「ございません。そうお感じなられたのはゼット様がそう期待なされていたからではないですか?」
「なるほど。それもそうかもしれませんね」
言葉を交わしながら次は二階へ向かう。そこもやはり蔦と雑草と埃にまみれていてたのだが、一階に比べると比較的植物が少ないように見えた。
そして一階よりもモノが少ない。エヴァさんに聞いてみると。二階はギルド員たちの個人スペースだったらしく皆が去っていくときに多くが本人たちによって持ち出されてしまったらしい。
「そういえば、暴走した魔法具ってどんなものなんですか?」
「浅学なわたくしには詳しくは分かり兼ねますが、何やら植物の生長を促すものだとか・・・・・・特に魔力に支配された植物だと効果が高いとあの魔術師が自慢していたのを覚えています」
「魔力に・・・・ですか・・・?」
「はい、本来は魔の領域を広げるための促進剤の様な役割を持っているのだろうと、それを改良して普通の植物にも影響を強くする研究を行っているのだと言っておりました」
「なるほど、そんな立派な志しを持った彼も色で道を踏み外してしまったと」
「・・・・・・そうでございますね」
最後の言葉だけ少し間が長くこわばって聞こえた。こんな細かい表現が出来るなんてホント最新のAIはすごいね。
二階の補強も大体終わり、後は地下室の壁塗りだけとなった。
「もしかしたらまだ蟲が潜んでいるかもしれませんのでエヴァさんは上で待っていてください」
「そうでございますね。そうさせていただきます」
エヴァさんを追い出して俺は作業を始める。
あふれている土を押し固め、下地の石を積み上げながら俺は別のことを考えていた。
俺はエヴァさんに対する違和感を感じている。端的に言うと何かを隠されている感じがするのだ。
少しまとめてみよう。
初めは執事がいるのにこの屋敷が埃まみれなことが気になった。植物はどうしようもなくても埃を払うくらいのことはできないのだろうかと。
幽霊なので物が持てないのかとも思ったが、彼女は俺に薬瓶を手渡した。つまり彼女は自分意思で物に振れることが出来るということだ。
次に、クイーン戦の後、彼女は「その様子だと首尾はよろしかったようでございますね」と言った。その場にマニコがいないにもかかわらずだ。
もちろんマニコの本体があのマタンゴ形態ではないということを知っていた可能性はある。それでも、普通ならばマニコのことを心配する方が先なのではないだろうか?
それに屋敷の構造についての知識の無さも気になる。屋敷の管理を任されているとなれば床下への入り口くらい把握しておくべきではないのだろうか?
彼女は執事服を着ているだけで執事という職業からは言動がずれている部分が目立つ。
一つ一つは些細なことであるが、こうも重なると疑わざるを得ない。曰くエヴァネィラ女史は本当に執事なのか? 本当にこの屋敷を取り戻そうと思っているのだろうか? となると本当の目的は?
石を積み終え、漆喰をこね始める。消石灰に水その他を加えながら、思考はさらに加速する。
さっきの床下でのボスの反応も気になってきた。
あのメモを取ろうとした時の反応がやけに弱かった。というか、自分はあの時反撃されて死に戻ることも考えていたのだが、ひょうし抜けする位あっさりと盗れてしまった。
いくら弱っているといってもあの反応は薄すぎるような気がする。本当にボスはいるのだろうか? もしくはあのトゲ蔓がボスと言うのは俺の早とちりなのか・・・・・・?
そう言えばさっきのメモを訳さないとな。
幸い攻略サイトに翻訳のページがあったので、積み上げた石の上から漆喰をぬる傍らそれを見ながらメモと照らし合わせていく。
っていうか世界どころか、大陸ごとに違うのかよ文字! 幸い文法は日本語と変わらないし、音文字と意味文字の組み合わせだけだから翻訳は結構進んでるっぽい。
「『わが愛※※れと※にエヴァ※※※に※げる』か・・・・・・かすれたり破れたりで読めないところはしょうがないよな」
とりあえず俺は名探偵ではないので考えるだけでは答えは出てこない。明日の午前会議でみんなと相談して最終決定は出すか。
とりあえず脱線はその位にして壁塗りの仕上げに集中することにした。
やばいながら作業だったからかなりむらがある。これは直すのに時間がかかりそうだ。
はてさて、エヴァネィラさんは何をたくらんでいるのでしょうか? それはまだ作者にもわかりません。(イツモドオリダ
なんかシリアスぶってますがシリアスになる予定はありますん。ゆるーくゆるーくをモットーにこれからも書いていきたいですね。
パーティメンバーのステータスがほしいという意見があるのですがどうですかねあった方がいいという意見が多ければ頑張って考えます。
それではここまでお読みいただきありがとうございました。




