第十七話:捕食エンドは全力で回避します
前回、前々回、書き忘れていますが、マニコは今マタンゴ形態で冒険に参加しています。←前々回に修正を入れました。
「ちょっ!? っと! わぁっ!」
三匹の攻撃をそれぞれ左をスチームシールドランス、右をセラミックチェーンソー、真中をあまった両腕で受け止めるもバランスを崩し尻もちをついてしまう俺。そのまま押しこまれるような形になってしまう。一匹一匹ならビッグマウスよりも力は下だが三匹同時となるとかなり不利だ。
腕のファイバープレート籠手はがっちりと子蟲の顎を食い止めていてくれるが(思い出して作っておいて本当に良かった)、木製パーツに特攻性能があるのかむしろ武器の耐久値のほうがガンガン減っていく。ちょっとマジでやばい。
「僕らを無視するなんていい度胸してるね」
だーさんが向かって左の蟲を攻撃する。Criticalのエフェクトともに蟲の足が二本吹っ飛びた姿勢が崩れえたところを火魔法ファイアボールが襲い、子蟲は俺から離れた。
「あらあら~。おいたはだめですよ~」
右の蟲はるーさんの棍棒の一撃で弾き飛ばされる。残り一匹なら何とか押し返せる。
俺は、開いた二つの武装を真中の一匹の首筋に集中させて、スイッチを入れた。
「ギィィィィッ!」
蟲殻に覆われていない関節部分ならだーさんの様にクリティカルが狙えると踏んだがそううまくはいかないらしい。子蟲は俺から飛びのいて距離をとる。周りを見渡してみるとだーさんるーさんはそれぞれ相手をばらばらにしてたたきつぶした直後の様だ。
「ようし、じゃあこいつは俺が・・・・・・ってあれ?」
気合を入れなおして子蟲に向かおうとしたが既にそいつは痙攣をして倒れ伏していた。
「マニコ必殺の麻痺毒の味はどーかなー? さぁ、後は好きにやっちゃってくださいなっ」
どうやらマニコがいつの間にか麻痺攻撃を撃ち込んでいたようだ。実験用と言っていたマタンゴ形態だがそれなりに戦闘力もあるみたいだな。
「んじゃあ、遠慮なく」
最後は俺が蟲の脳天にチェーンソーを振りおろしてその戦闘は終了した。
「マニコやるじゃん」
「いやぁ、マタンゴ形態だと物理攻撃手段がまったくないから火力は人任せになっちゃうんだけどね、さっきの麻痺毒も相手に外傷がないとさっきみたいな即効性はないし」
「それでもすごいって。だーさんもるーさんもありがとうございました。おかげで装備が壊れなくて済みましたよ」
「いえいえ~。こちらこそ盾役なのに相手を引きつけられなくてすみません~」
「いや、あれは予想できないでしょ? まさか好物補正でヘイトが上がるなんて」
「そうだね。これからどうするかい? ゼット君に弱点攻撃を持っている敵に対して、るーさんが敵を引きつけられないんじゃ、ちょっときついよね?」
「そうだなぁ、もったいないけど体に蟲避けを塗ってみるとういうのはどうかな?」
「それがいいかもだね。これからもゼット君に敵が引きつけられるよりは貴重アイテムでもここで使うべきだと思うな」
「私も賛成です~。ヘイト管理がうまくいかないと盾の役目を果たせませんし~」
マニコのアイデアにだーさんもるーさんも賛成してくれた。
「それじゃ遠慮なく使わせてもらうわ。ちゃちゃっと塗っちゃうからちょっと待っててくれ」
俺は露出している木の面にまんべんなく蟲避けを塗っていく。紫色の薬に染まり俺の全体的なカラーリングも紫になった。
「うわっ、何それ!? 気持ち悪っ!」
そこで丁度レキが合流。しかし、気持ち悪いとは失敬な、必要な処置なんだよ。自分でも気持ち悪いと思うけど。
「さて、これからどうする? このまま直でボスを目指すか?」
「いや、何度かこの編成で戦闘して連携を確認するべきだと僕は思うな。さっきの戦闘でもとっさのことに対応できなかったのは、そのあたりが不足していたからだと思うんだよね」
なるほど、もっともな意見だ。
「俺は賛成だが二人はどうだ?」
「あたしは構わないわよ? っていうかまともなパーティー戦闘はこれが初めてだしそうしてくれると助かるわ」
「私もさんせー。っていうか特に反対する理由がないよね?」
二人の意見にるーさんは大きく頷いて、棍棒を振り上げた。
「それでは~、雑魚を探しに行きましょ~」
◇◆◇◆◇
結果から言えば、狩りは順調だった。
蟲避けの効果は抜群で俺の方へ向ってくる蟲はほとんどなく、たまに向かってきたとしてもるーさんの咆哮で引きつけられて安全に攻撃できた。
だーさんはパーティのメイン火力としてダメージを稼いでくれて、レキは相手がサンダーブレスの通りにくい土属性と見るや、スローブレスによる支援に切り替えて的確に相手の動きを制限して盾役に集まるようにコントロールして見せた。
マニコもバステのほかに、いつのまに用意したのかポーションで回復まで行っている。
俺は遊撃だ。るーさんが支えきれないと思ったら敵を引き受け、火力が足りないと思ったら攻撃に回る。その連携が思ったよりもはまってくれて、うじゃうじゃと湧いてくる子蟲をさくさくと殲滅することができた。その上蟲の巣穴と思えないくらい一本道だったこともあり、すんなりとボス部屋手前まで来ることができてしまった。やっぱり結構低レベル向けのクエストだったのかもしれないな。
「えっと、ボス部屋手前だけど、ちょっと修理タイムに入っていいかな? 各部品の耐久度が結構やばくて」
俺は機械族なのでポーションでの回復はできない。自前で部品を修理していかなければ耐久値が切れた時点でアウトだ。まぁ、その代わり毒が効かないとかメリットもあるんだけどね。
「いいよー。ちょうど子蟲の湧きも途切れているし、広間だから奇襲を受ける心配もないしね」
マニコの言葉にみんな賛同してくれてそこで小休止となる。
各パーツの耐久値を見てみるとマニピュレーターが一番耐久値が低かった。直接攻撃を受け止めている武器の類よりも耐久値が減っているのは、構造が複雑で元々の耐久値が低いからだ。やっぱりこの5本指マニピュレーターは戦闘には向かない実験用ということか。戦闘用に丈夫な手を作らないとな・・・・・・。っというか、自分が機械なんだから何もわざわざ手で持つ必要はないわけか。直接武器のついた武器腕の方が耐久知的には有利なのかもな。さっそく帰ったら図面を引こう。
そんなことを考えながら時間のかかりそうな腕パーツをスロットにほうりこみ手作業で治せそうな部品の修理に入る。小枝のマニピュレーターの活躍の場はまだ残ってるのだ。
「器用なもんだねぇ」
マニコが10本(機工士と精密動作のレベルが上がったから増えたのだ)のマニピュレーターを操りながら樹脂に木くずを混ぜたものででパーツを補修していく自分を見て感心しながらそうつぶやく。
「小枝のマニピュレーターは構造が単純だからな、手の指を動かしている感覚で動かせるんだよ。これがさっきまで使っていた腕パーツだとそうもいかないんだが」
いまだに掴む放すも意識しなければできない、最初の戦闘でもとっさのことに二本は動いたが、もう二本は籠手で受け止めるのが精一杯だった。結果的にはそれが正解だったのだが。
「あー、それ解るわ。あたしも尻尾とかいまだに自分の意思で動かせないもの」
隣で聞いていたレキが会話に参加してきた。っていうか、尻尾あったのか。毛に埋もれてしまっていてまったく見えないから気がつかなかった。
しかし、いいことを聞いたな。これからレキと話す時は尻の方へ注目してみるとするか。
「なんのはなしですか~」
「リアルの自分にない体の器官は使いにくいよねって話。だーさんるーさんはほぼヒト型だしそんなことないよね?」
「そうですね~。わたしはリアルと大分体格差があるので最初の方は戸惑いましたが~、もうなれちゃいましたねぇ。リアルと混同することは無いですよ~」
「僕の方もそうだね、結構人間の脳って結構いい加減だから、そこらへん勝手に調節しちゃうんだよ。ただ元々ない器官を動かそうとするとちょっと大変だよね?」
「そうだな、義手とかも訓練しないと扱えないんだし、やっぱり、もうちょっと慣らしが必要ってことか・・・・・・」
そんな会話をしながら修理を終え、ついにボス部屋に向かうことになる。
鬼が出るか蛇が出るか・・・・・・まぁ出るのは蟲の女王なんだけどね?
すぐにとか言っておいて3日もあいてしまった。
今回はなぜか難産でした。話の流れは決まっているから直ぐに書けると思ったのですが、いやはや……。
子蟲の強さがいまいちわかりずらいかもしれませんが、HPと防御力以外はビッグマウスの方が上と考えてくれればいいと思います
次回はボス戦どんなギミックにするかは今から考えるのでちょっと時間がかかると思いますが、気長にお待ちください。
ブックマークが100件を超えました。本当にありがとうごさいます。これからもがんばりますので、よろしくお願いします。




