第十一話:遺跡の事情・俺達の予定
CAOのNPCにはすべてにAIが入っているという話しだ。
それらが複雑に絡み合って生み出されるクエストがユニーククエスト。一度しか発生しないし、失敗したら二度とやりなおしは利かない。
幸い、受ける権利の譲渡はできるので、クエスト情報のトレードや売買などは盛んに行われており、その公平な分配を目標として活動し始めているギルドもあるという。
ゲームなんだからそこはこだわらなくてもいいだろうというところにあえてこだわるという、CAOの運営会社「グランディア・エンターティメント」の伝統を無駄に受け継ぐ無駄にめんどくさいシステムである。(褒め言葉)
「しかし、モンスターにまでNPCがいるとは思わなかった。信用してもいいと思うか?」
「信用するしないの前にもうちょっと話を聞くべきだと僕は思うな」
「そうね。さっきも言ったけど情報が足りないのよ。折角情報をくれそうなNPCなんだから、質問攻めにしちゃってもいいんじゃない?」
質問攻めというと少し失礼な感じもするが話を聞かなけりゃならないのはその通りか・・・・・・。俺はあらためてエヴァネィラさんのほうへ向き直った。
「改めまして、はじめまして。俺はこのあたりを拠点に活動している機械族のゼットというものなんだけど、エヴァネィラさんはここで何が起こったのか知っているんですか?」
「エヴァで結構ですよゼット様。ここに来られる方にはそう呼ばれておりましたので。そうですね、おおかた把握しているかと存じます」
「聞かせてもらっても?」
「はい。といっても大した理由があるわけではございません。このギルド「北の蒼騎士団」に所属している一人の魔術師が、同じ騎士団の女戦士に振られたのをきっかけに、魔術道具を暴走させて街一つを飲み込んでしまったと、ただそれだけのことです」
それはまた、本当に大した理由じゃないな。
「そしてわたくしは、その時に巻き込まれて、このような姿になってしまいました。この奥・・・ギルド長室になりますが、そこに魔術道具に取り込まれて絞りカスになった魔術師がおります。わたくしとしては、あれを早く排除して、屋敷の主導権を取り戻したいのですが、なにぶんかよわい女の身でありますので・・・・・・」
あ、何か「この人はすっげぇ強い」と勝手に思い込んでたんだけど、そんなことないんだ。怖いね執事服補正って。
「じゃあ、エヴァさんの望みはその魔術師を倒すことでいいの?」
「そうでございますね、それも一つなのですが、このままいくと、このギルドホールは近いうちに倒壊してしまいます。できることならその前に元の姿・・・完全に元通りでなくても、ギルドホールとして使える様な状態に戻してほしいというのは我がままなのでございましょうね・・・・・・」
マニコの質問に、エヴァさんは少し寂しそうな顔で答えた。とりあえず、魔術師を倒してギルドホールを倒壊させなければ、ベストということか。
「近いうちってどのくらいですか? 具体的な時間は分かります?」
「はっきりとは判り兼ねますが、今日明日にいきなりということはございません。少なく見積もっても一週間程度は問題ないかと存じます」
「ところで、あたし達って人間じゃないけど。解決するのがモンスターでも構わないわけ?」
「わたくしも今はモンスターでございますから、この屋敷がギルドホールとしての機能を取り戻せることができたなら、また管理を行いたいと思っておりますし、ここを訪れたのが理性あるモンスターの皆様であったことは、かえって幸いであったというこのではないでしょうか」
「そうなのかもしれませんね~。皆さんはどう思われますか~」
「うん、僕もそう思うね。これをクエストとして受けてもいいんじゃないかな?」
「そうね、あたしも賛成。ただ、魔術師を倒すだけでベストクリアができると思う?」
「それはない。二次目標が設定されてるということは、魔術師を倒したとたんホール崩壊なんてことも有り得るだろ? だけど、せめてもこのギルドホールがどの程度植物に浸食されてるかが分からないことにはどうしようもないな。マニコ、たとえばこの建物全部を領域に飲み込んで調べることはできるか?」
「やってみなくちゃわかんないけど、何の障害もなければ三日もあれば領域内に取り込むことは可能かな? 余裕を持って5日もらえると色々試せると思うけど」
「じゃあギリまで粘って6日後に作戦決行でいいか?」
「あぁ、すみません。その日はぼく、仕事上の付き合いでどうしても入れないんですよ。五日後ではだめかな? ちょうどその日は祝日だし」
「あぁ、そういえばそうだった、他が大丈夫ならその日の午前に成長報告と作戦会議で午後にアタックってことにするけどいいか?」
「私の予定はだーさんとほぼ同じなので問題ないですよ~」
「あたしも特に問題ないわ。ただ5日で戦力になるところまで伸ばせるかどうかって言うのは自信ないけど」
「気にすんな。サービス開始からまだひと月たってないんだ。効率プレイでトップ争っているならともかく、ボリュームソーンでのんびりやっている組であるメンツなんだ。ちょっとステが高いからってドングリの背比べだろ?」
俺の言葉にマニコもだーさんるーさん夫妻も頷いて答えてくれる。
っていうか、それを気にしなくちゃいけないのは俺のほうなんだよな。流れで仕切っちゃってるけど、この中で一番弱いのは多分俺だ。何せ初期ステ以下からのスタートだったんだし。
「そっか、ま、できるだけやってみるわ」
「無理しない程度にしろよ? 「リアルを大事に」だぞ」
「分かってるわよ。学校もあるしそんな無茶はしないってば」
「それならいいんだけどさ・・・・・・。あ、エヴァさんというわけで5日後またここに来ます。その時にできる限りのことはしてみるつもりですけど、力が及ばなかったらすみません」
「いえ、お気になさらず。もとよりこのまま朽ちていくものと諦めていたのです。皆様が訪れて、希望が繋がっただけでも僥倖でございます」
「そう言っていただけると、気が楽になります。ではまた5日後に」
そう言って俺たちはエヴァさんのギルドホールを後にした。
風邪をひいて一回休⇒治ってきて調子に乗る⇒ガンダムブレイカーおもしれー⇒ぶり返す⇒よし調子良くなってきたし続き書くか←イマココ
思ったより時間があいてしまいました。次もちょっとあくと思います。
そして、祝一万PV達成! ここまで来れたのも読んでいただいてる皆様のおかげです。本当にありがとうございます。




