第八話:新たな仲間はもっふもふ
ログインすると、そこにもっこもこの白い毛玉がいた。
「何、じろじろ見てんのよ? 気持ち悪いわね」
毛玉の口は悪かった。
「いやすまん、俺は機械族のゼット。君が昨日マニコが言っていたリアル友達かな?」
「マニコ……? あぁ、あいつのことね。そう、私のこと友達って紹介したんだ……ふぅん。あ、あたしはレキ。マニコのリアル友達ってことでいいわ」
何やら複雑っぽい関係があるみたいだが、そこまで踏み込むのはマナーに反するよな。
「ところでマニコはまだなのか?」
「もうすぐ来るんじゃない? それにしても、あんたがゼットねぇ……」
「なんだよ、人には見るなって言っといて、その値踏みするような視線は」
「べっつに、あいつが楽しそうに話すからどんな奴かと思っていたら、何かふつーで期待外れだなって思っただけ」
「俺のこの姿みてふつーと思うとか。お前も結構なセンスしてんな」
「はぁ? 誰が見た目の話してんのよ? 中身よな・か・みっ!」
「まぁ、中身については否定できないな。俺はごく平均的な三十路男子だからな」
「三十路なのに男子って時点で結構だめな部類の平均よね」
「ばかなっ! 男はどんなに年をとっても心に小学4年生を飼っているものじゃないのか? 傘で鉄柵をカンカンやったり、カメラを向けられたら変顔をしたりしたくなる欲求と戦って生きているものとばかり・・・・・・」
「それがふつーだとしたら男同士の争いが2割くらい減って。男女の喧嘩が5割くらい増えるでしょうね」
「逆に女は小4女子でも心に女を飼ってるしな」
・・・・・・なかなか、ノリのいいお嬢さんだ。
とそんなバカな会話をしている間に、マニコがインしてきた。
「遅れてごめん。レキ場所ちゃんとわかった?」
「座標が分かってるのに迷わないわよ。もう登録も済ましちゃったから」
「よう、マニコ。なかなか面白い友達を持ってるな」
「あ、ゼットももう来てたんだ。レキにセクハラしてないでしょうね?」
「おいおい、俺がいつセクハラなんてしたよ?」
「したじゃん、私と初めて会った時、ホモがどうとかって」
「レキさん聞きました? マニコさんホモが好きらしいですわよ?」
「何それ、人の趣味をからかうなんてはしたないでしょ? 気にしないで、私はどんなマニコでも受け入れるから」
「うん、違うからね? そうことで揶揄するのは本気でそういうものが好きな人たちに失礼じゃないかな?」
「それもそうだな。すまなかったマニコ。いや謝るのはもっと大多数のマイノリティー趣味を持っている皆さんにか。すみません、決してそういうマニアックな趣味が悪いと思ってるわけじゃないんだ。ただマニコが慌てふためく姿が見たかっただけなんだ」
「どっち向いて言っているの? はぁ、もういいや。付き合ってたらきりがないし。とりあえずうちとけているようでよかった。改めて紹介するね、私のリアル友達のレキ。種族は・・・・・・鳥獣族にしたんだよね?」
「そう、鳥獣族。今の小種族はイズナね。AGI・INT型で動ける砲台を目指す予定だからよろしく」
「あれ? イズナってだしか式神の一種だよね? それも鳥獣族なんだ?」
「主に人が他っぽいのが妖精族で獣の姿のものが鳥獣族みたいですよ」
不意に後ろから声を掛けられて振り向くとだーさんるーさん夫妻がいた。
「あ、来られたんですね? マニコ、この二人が昨日言ってたモンスタープレイヤーのダーレスさんにルクスさん」
「はじめまして、妖精族レッドキャップのダーレスです。だーさんって呼んでください。でっこちが」
「ダーレスの妻のルクスです~。種族は鬼人族オークですよ~。る~さん、もしくは素敵な奥様って読んでくださいね?」
ルクスさんはその自己紹介が気にいっているのだろうか?
「こちらこそ始めまして、植物族マタンゴのマニコと言います。こっちは私のリアル友達のレキ。ところでお二人はリアル夫婦なんですか?」
「うん、昔から二人ともゲームが好きでね出会いも別のMMOゲームだったんだ」
「そうですか、なんかすごいですね? あ、よければここをリポップ場所として使ってください。ゼットから話は聞いていますから」
「そうですか。では遠慮なく使わせていただきますね」
そういうと夫妻は再誕のジェムを取り出して使った。これでここをたまり場にするプレイヤーが5人になったということになる。一気に倍以上だ。
「そうそう、だーさんるーさん、昨日は情報提供ありがとうございました。おかげでレベリングがはかどりましたよ」
「そうですか、それはよかった。何かいいアイテムは出ましたか?」
「はいそっちも結構・・・・・・あ、そうだ、マニコこれ鑑定してくれないか?」
俺は昨日拾った「何かの原石」を渡す。
「OK、ちょっと待って? って、あれ?」
「どうした?」
「いやなんか、鑑定済みアイテムですって出るんだけど。どうなってんのかな?」
どういうことだ?
そういえば、今までの未鑑定アイテムは枕詞に何も付いていないか、そもそも名前が表示されないかのどちらかだった。ということはこれは未鑑定アイテムじゃなくて通常アイテムってことか? 所謂、換金アイテムだったら現状ゴミでしかないぞ。
「ってかさ、原石なんだったら割って中を見ればいいんじゃないの?」
「ナイス、レキ! それだ!」
レキのアイデアは案外的を射ているかもしれない。ただ割るのはなんかもったいない気がするので削る。さっそく増えたSPの出番である。
「でぃすくぐらいんだ~」
某青色ネコ型ロボットのまねをしながらストレージの肥やしになっていたディスクグラインダーを取り出す。
「なんでファンタジーMMOで、工具作ってんのよ?」
「ファッ!?」
「な、何よ!?」
「いや、今まで誰にも突っ込まれなかったところを突っ込まれてびっくりしたというか、何というか。ともかくありがとう」
「なんでお礼言われてるのあたし?」
「いや、突っ込みのないボケは結構空しいものだからさ」
「あ、ボケだったんだそれ」
「ほら、今まで相方がこれだったから、ボケ倒しはそれはそれで楽しいんだけどね」
「納得したわ」
話しながらディスクグラインダーを装備して、試しに回してみる。多少きついが使えないほどじゃない。
「それじゃあ、御開帳~。何が出るかな~♪」
グラインダーで表面を少しずつ削っていくとやがて赤い表面が見え始めた。それをできるだけ削らないように周りを削っていく。そして、小指の爪ほどの赤い透明な石を取り出したら残りは消えてしまった。そういうアイテムだったのだろうう。
「よしできた。マニコ鑑定してくれ」
「OKちょっと待って。・・・・・・すごいっ! 「炎の魔石リビール」だって」
魔石キタコレッ!
「だーさんるーさん、マジありがとうございますっ!」
「あらあら~。私たちはただ場所を教えただけですよ~。レアを引けたのはゼットさんのリアルラックです~」
「そうですよ。それにまだ一個目じゃないですかどんどん開けて行きましょう。僕も年甲斐もなくドキドキしてきました」
「はい、それじゃー、どんどん開けていきますね」
結果、魔石は三種「炎の魔石リビール」「水の魔石サフィール」「ミスティックアンバー」最後のは何かの牙と思われるものが中に閉じ込められたコハクだ。どうやって使うのかは不明。要研究である。
まあ、七分の一なら上等の確立だ。これからも亀狩りが楽しみになってくる。
残りの内訳は、クズ鉄×10、錫鉱石×3、銅鉱石×5だ。鉱石一個の大きさはだいたいこぶし大。火力耐熱に優れた炉があれば念願の金属器が作れるが。現状はやはりストレージの肥やしか・・・・・・。炎の魔石の活躍に期待だな。
「あの~、よろしければ金属鉱石を譲っていただけませんか? もちろんタダじゃなくて、此方からもアイテムを出しますから~」
突然るーさんがそんなことを言い出した。
「いいですけど、またどうして?」
「前から鍛冶をやってみたいと思っていたんですよ~。それに私は壁役ですから一番金属を必要としますので~」
「そういうことなら他にもアイテムを交換しましょう。私もアイテムを出しますから」
「あたしは、始めたばっかで特にアイテムを持ってないから適当にMOB狩りにでもいってくるわね」
「あ、ごめんねレキ。初日から放置はないよね?」
「別に気にしないでいいわよ。終わったら念話してくれればいいから。そのあと一緒に遊びましょ?」
「ごめんね。終わったらしっかり埋め合わせするからっ!」
という、マニコの提案で第一回トレード大会が始まったのであった。
マニコとレキの関係をこの時点で見破れた人はすごいと思う。しかしこれでようやっとマニコのキャラが固まってきた感じだわ。一安心。
総合評価ポイント100越えありがとうございます。これからもがんばっていきますのでよろしくお願いしますね。




