ずる賢く・・・
「パンっ!」
「ドッ!」
「おおお!」
(よしっ!やった、当たった!)誠
誠の弱いパンチでも、モロにカウンターに入ればそれなりに利く
体勢も悪かったのが主な原因だが、倒れてしまう石田
「何やってんだ!打ち込め!」コー
「踏みつけるんだよ!顔面!」ゼロ
「そんなのが利くかあ!早くしろ!鼻をへし折れ!」ヤンチ
「えっ!?えっ?」誠
喧嘩慣れしてない誠。
状況を理解出来ない。
そして、出来る訳ない・・
倒れてる人間の顔を踏みつけるなんて・・
「くっ・・このガキ・・」
「うっ・・」(くそっ・・躊躇した・・)誠
石田は、起き上がろうと、次の動作に入ろうとしている状況
本物の喧嘩屋なら・・
「ドンッ!」「がはあ」誠
「うおおお!そのままぶち当たって来たぞ石田!」
「ああ無駄な動作省いた!」
「起き上がりながら、突っ込んで行った!」
(そう・・パンチを打つにしても、蹴りを入れるのにしても、
まず予備動作が必要・・誠が二の矢を打って来る前に吹っ飛ばした)正宗
(強いなさすが、白月ベスト3・・これでもうない・・)ヤンチ
チャンスは。
(終わった・・石田がマジになりやがった・・
唯一の隙だったのに・・怠慢・・高慢・・)コー
「ドガ!」「ぐうう・・」誠
「ガッ!」「ぐううう・」誠
「このやろうっ!いい加減にしろや!
防御しかしねえで!」石田
連発で殴りかかるが、徹底した防御。
攻撃は出さない。
(いい・・それで。耐えろ。ひたすら・・)火村
「・・・・・・」米谷
が、チラリと覇王のほうを覗く。
もしかしたら・・
「・・・引き分けにするか?」覇王
「・・私は何とも言えません・・」二代目
(やはり・・引き分け狙い・・覇王の心を惹いて・・)米谷
(そりゃあ、それがいい・・
だが、余りにも黒北に有利の判定だとクレームも付く・・)二代目
そうすれば、この勝負の破棄にもなりかねない・・・
「もし、これを引き分けにするって言うんであれば、
いくら覇王さんでも、認めない。
それは、あまりにも中立ではない・・」米谷
「だろうね・・あくまで、言ってみただけだ・・
好きだからね。ただ、突っ込んで行くってのが・・」覇王
弱くても・・前に前に・・
「ぐっ・・」「ぐっ・・」
「なっ、このやろう!」石田
「そうだ!それでいい!ただ押し込め!」火村
ジリジリと誠がガードしたまま、前へ前へ
石田は、やりにくい。パンチも距離がないと当たらない。
ほぼクリンチ状態で押し込んでる誠だが・・
「バタっ・・」
「えっ?」「はっ?」
石田が倒れ、誠が上に
「よしっ!行けっ!ひたすら殴れ!」ヤンチ
「打ち込め打ち込め!こんな有利な状況ないぞ!」ゼロ
「えっ?えっ?」誠はまだよく状況が理解できてない
「それが、マウントポジションだよ!行けっ!」コー
(ふふ・・いつの間にか応援してるよ、あいつら)イイ
「くっ!」石田
(えっ?何?この石田さんもヤバイみたいな顔して・・)誠
「バカっ・・」米谷
「なんて、ミス・・」増本
「・・いやっ、ミスじゃない・・」鬼丸
「まあ、たまたまだけどな・・」ケンゾー
ただ、丸くなって押し込んでた誠にラッキーが・・
前も見えない状況・・分厚いガードで押し込んでたら・・
「踏んだんだ・・たまたま石田の足・・」
「ああ・・押されてる状況で足踏まれたら・・」
あっさりこける。
そしてそのまま誠がマウントポジション(馬乗り)に。
(くそっ!とりあえずっ)誠
「ガッ!」「ガッ!」
「くっ!」石田
(えっ?石田さんがガード?打って来ないパンチを)誠
誠は分からない。圧倒的優位差を。
打っても、威力は知れてるのだ。下からのパンチは。
まず、この状況で下の者がするのが・・
「ひっくり返されるのだけ防げ!」ヤンチ
「膝をしっかり、地面に食い込ませろ!」ゼロ
「大きく返そうとして来たら・・」コー
「くそーーー!」石田が、もう強引に力ひっくり返そうと全力で・・
「すかせ!」「軽く浮け!」「尻上げろ!」
「バン!」
「うおおおお!」
(くっ・・やっちまった・・最悪・・)石田
「なんてことだ・・」米谷
「あまりにも、力の差がありすぎたから・・」増本
誠が軽く尻を浮かそうとする前に
石田が強引に横に向きひっくり返そうとするが・・
「普通抵抗するから、渾身の力でひっくり返すんだが・・」鬼丸
「あまりに弱いから・・」ケンゾ
石田の体が勢いあまって反転してうつ伏せに・・
その背中に馬乗りになった誠。
普通、これで格闘技なら決着・・
下の者は、後頭部を両手でガードして体をこねるだけ・・
「打て!打て!」「後頭部だよ!打て!」「早く打て!逃げる前に!」
(マジか?でも、やるっ。ここしかねえ!)誠
「ゴッ!」「くっ」石田
「ゴッ!」「くっ」石田
「くそっ。ウチのナンバー2こんなとこで潰されてたまるか!
石田っ、突破しろ!前だ!」米谷
「分かってる!くそっ!」石田
唯一動ける方向は、うつぶせの状況から前に這うくらい
「もっと、打ち込め!打ち込んでたら逃げれねーから!」ヤンチ
「だな・・」鬼丸
(くそっ。よく知ってやがる、喧嘩を・・)米谷
この状態で上の者がパンチを打ち込む時は・・
「グッ・・グッ・・」
打ち込む時に全体重が尻に掛かり、重しになる。
だから、下の者が抜け出すチャンスがあるのは、
パンチを打ち込んでこない時。
「くそっ!くそっ!」石田
ぶざまに、クネクネと体をよじる石田
「笑え!ニヤっと笑うんだよ!」ヤンチ
「ああ。そうすれば、決着だ!」コー
「早くやれよ!いいから!」ゼロ
(?????)誠
まったく意味の分からない誠。
どうして?
決着?
笑えば?
(何なんだよ?訳わからない、アドバイスしやがって・・
でも、やってみるか・・あいつ等の言う事すべて的確だし)誠
殴りながら、誠が・・・
「ニヤっ・・」
「・・・・・そこまでっ。・・・勝負あり。」覇王
「くそっ!!!くそっ!!」米谷
(くそっ!・・なんてこった・・こんなカスに・・)石田
「うおおおおやったぜ先輩っ!」ヤンチ
「しゃああ!まだこれで王政も分からんぞ!」ゼロ
「黒北魂だ!これが!なぁ火村さんっ」コー
「ああ・・よくやった」火村
「・・・・・・・・」誠
俺が勝ち?
どうして?
立ち上がり、辺りを見渡す誠
どうして自分が勝ったか分からないが・・
聞こえてくる評価
「見たか!?やっぱ、えげつないな、のの君」
「ああ・・完全にあの有利な状況で殺す気だったな」
「あの、悪魔の笑み・・」
「ああ、完全に勝ちを確信した瞬間だ」
「ああ。覇王さんが、早く気づいて止めた」
「ああ・・でないと、死ぬまで殴り続けたはずだ」
(これが、喧嘩?)誠
それが喧嘩・・
何より、喧嘩の勝ち方、
いやっ、勝ったと見せる業を知ってるヤンチ達のおかげ
大して喧嘩の強くないバラが相手の血を噴かすのに似ている・・
不良ってのは汚いもんだ・・
(こんなの不良・・いやっこれが不良。)誠
どんな手を使ってでも勝てばいい・・
ずる賢く・・。
「うおおおおおおおおお!!」誠
高く拳を突き上げ、自然に出てくる熱き雄たけび。
超変則だが・・
誠、
大金星!




