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黒月  作者: 火村虎太郎
第一章 正宗
3/42

ここぞとばかりに

次の日の学校


腫れた顔・・

広まる噂話・・


「くそっ・・早いなみんな情報・・」正宗

「まあ、誰か見てたんだろ・・」岸


本当は、休みたいくらいに体がバキバキに痛いが、

休めば・・・


「ヤキが怖くて、休んだって、言われるの嫌だから来たのに・・」正宗

「居ないな、アン先輩・・」誠



目立つから、会いに行かなくても、いつも学校で見かけるのに、見ないアン先輩。



「・・・あれだけ、やられたんだ・・もしかしたら入院?」岸

「かもな・・先輩俺らの為に・・」山田

「・・・あっ。アンさん軍団の、渡瀬さんに!」誠

「あっ・・そうだな・・」正宗


「・・なあ・・正宗ぇ・・」誠

「なんだ?誠?」正宗



「・・・もう、不良辞める俺が言うことじゃねえかもしれねえけど・・」誠


喧嘩に負ければ、不良を止めると言っていた誠


「・・アンさんのグループに・・・」誠

「ああ。そうしようぜ正宗」岸

「ああ。なんちゅうか・・悪い事させたし・・かっこいいし・・」山田


「ああ。俺も付いていくなら、アンさんだ。喧嘩も強いし根性もあるし」正宗


正宗グループをアン軍団に入れてもらおうと・・


「あの人、人数居ないから、ナンバー4だしな・・」岸

「実質喧嘩は、上の三人ほぼ横並びだ・・」山田


二年のナンバー1と、狂犬と、アン。


「そしたら、ヒデや、増本にも対抗できるだろ」誠

「増本な・・・認められたか、もう・・」正宗



唯一、一年で、割と太めのボンタンを穿くことを許されたナンバー1の増本。

黒北は、ボンタンの太さで、あらかた順位が分かる。

当然三年のトップが一番太いボンタン。

他が、穿いてもいいが、当然その歴代続くその風潮を乱す奴はボンタン狩りに・・・

同じ学年でもそうだ。急に正宗が一番太いズボン穿いてくれば、他の一年は狙う。



放課後アン軍団のもう一人の先輩渡瀬に会いに


「押忍っ一年正宗ですっ。本日アン先輩にヤキ入れてもらいたく参上しました」正宗

「ああ・・じゃあ、行くか・・」渡瀬


歩きながら話す、渡瀬と正宗グループ


「・・あの・・やっぱり、入院・・・?」正宗

「ああ・・折れてるからね腕・・」渡瀬

「くっ・・アンさん・・」誠

「そういえば、石田が、アンさん必要以上に蹴り入れてたな」岸


「・・青龍か・・・・・」渡瀬

「あっ・・はいっ。」正宗


「正直、二年は、白月に勝てねえかもな・・

 今は、三年が粒ぞろいだから攻めては来ないと思うけど・・」渡瀬


三年が卒業して、アンたちが三年になれば・・・


「自分達の成長と、また新しく入ってくる新一年で、対抗しましょう!」正宗

「ああ・・クロキタは一度も負けちゃあいけねえけど・・

 正直、来年は勝負の年だな・・・アンも分かってるよ・・

 だから、お前等かわいがってるんだよ(ヤキ)」渡瀬


「はいっ!」正宗



そして、アンが入院する病院へ、今までの話も・・


「引退する~?」アン

「はいっ。自分喧嘩弱くて、

 皆・・いや、これからは、アン軍団にも、ご迷惑かけると思うんで」誠


(根性は、あるけどな・・あの時、俺が来なくても、一人で立ち上がった・・)アン


「まあ、中学校の不良に引退もないよ・・

 好きな時に、気まぐれで、またグレりゃあいい・・」渡瀬

「まあそうだな・・」アン


正宗と岸、山田は、アン軍団に。誠は一応引退。


「もうすぐ、卒業か・・」アン

「気合入れねえとな・・」渡瀬


三年の卒業・・・


「荒れてんな、南小・・」アン

「・・・ですね・・」正宗


同じ地区なので当然、聞こえてくる後輩の所業。


「まあ、まず、俺もお前の学年も、次の学年も南小がトップ取るのが先だ」渡瀬

「はいっ」正宗


脈々と続く、先輩後輩の固い上下関係。

それが特に強い部落や在日地区の南小。


「・・・んで、お前ら、軍団に入ったから、もうヤキねえと、思ってるのか?」アン

「うっ・・」正宗


「・・自分くださいっ。自分のせいで、こうなりましたし」誠

「・・・・・俺も・・自分がもっと早く相手倒してれば・・」正宗

「俺もですっ。あっさり負けました」岸

「連帯責任ですっ俺も!」山田


「・・・渡瀬ぇ・・」アン

「・・ああ・・」渡瀬


少しの静寂から・・


「並べけ~お前ら~!」渡瀬

「押忍っ」「はいっ」「はい」「はい」


ヤキ・・・


何の意味があるか、わからなかったけど、やっと分かった気がする。

先輩に殴られるくらいなら・・

先輩に恥ずかしい思いさせるくらいなら・・


四人で帰りだす正宗達


晴れ晴れした気持ち

喧嘩には負けたけど、突っ込んで行けた。

先輩の背中を追いかけ、仲間を想い・・



「正宗・・・がんばれよ」誠

「ああ・・お前の分までな」正宗

「ああ・・まず学年のトップ取らねえとな」岸

「そうすりゃ、黒月愚連隊の総長まで見えてくる」山田


「トクンっ・・」


黒月愚連隊・・そうだ・・黒北でトップになれば、ほぼ、黒月愚連隊の総長に・・

そこまで・・俺がやっぱり、覚悟が無かったんだ・・

不良に憧れてただけ・・もう、黒月愚連隊の総長なんて、雲の上の存在・・

だけど、この正宗なら・・・


「まず、太いボンタン穿いて、また白月に突っ込むとこからだな」誠

「はは。まあ、どうせ、来年向こうから攻めてくるよ」正宗

「ああ・・気合入れるぞ。軍団もでかくして」岸

「だな。次のいい一年、ウチの軍団に取れればな・・」山田


「・・・・」誠


大丈夫だろうか・・

俺もチラリと、見たことある・・

新聞まで賑わせてやがる、南小のガキ共・・


「どうした~誠~?」正宗

「いやっ・・俺の引退式してくれよ」誠

「わはは、暴走族や愚連隊でもないのにか?」岸

「いやっいいじゃんしようぜ。」山田


「ふっ・・もう少し体が、治ったらな」正宗

「ああ。たのむよ」誠


しばらくは、学校でも、正宗達が白月に突っ込んだのが話題に。

アン先輩は、数日後に登校してきたが、顔の腫れは治まらない・・

というより、まだ腫れる顔。

俺達には言わないが、きっと、三年からのヤキ・・・敗戦の責任・・

それでも、俺達とすれ違う時には軽く笑ってくれる。何事も無いように・・


そして、正宗が躍動?。初めて、ヒデにタイマンで勝利。

だが、ナンバー3の横沢に敗北。だが、すぐさま再戦で勝利。

これで、上下関係はまたおかしな構図に・

まあ喧嘩なんて、時の運もあるし。



そして、土曜の夜


「遅ぇな・・アイツ等、俺の引退式やるって、まだ俺しか来てねえじゃん」誠


「ピっピー」原付のクラクションの音



「うおっ!どうしたんだよそれっ!」誠

「へへ、兄貴の殴られながら、借りて来たぜ!」岸

「大変だったんだぞ。今日だけどうしてもってな」山田


岸が高校生の兄貴からスクーターを借りて、山田とニケツで登場

もう、高まる感情が抑えきれない。

とてつもなく悪い事をしてるような・・


「く~~後で、俺も乗らせてくれよ」誠

「ああいいぜ。お前の引退式だしな」岸


「さて、後は・・・」山田


遅れている正宗



「ウォンっ!」


「うおっ!マジか!?マジか!?マジかぁ~!!」誠


「うおっかっこいいなしかも、直管!」岸

「うひゅう!すげえ音」山田


なんと、正宗が族車の単車を乗って登場


もう、全員目がキラキラと輝き・・


「どうしたんだよ、これ!」誠

「アン先輩に頼んで、借りて来たんだよ」正宗

「これ、黒月の人の単車か!?」岸

「だよっ見たことある。くうう痺れるなぁ」山田


「引退式だからな、派手にな・・」正宗

「ありがと・・正宗・・みんな・・」誠


「・・運転するか?誠?」正宗

「ばっ!・・できねえし、十分だよ。正宗のケツで」誠

「しゃあ、白月のともやに見せつけようぜ!」岸

「おおーそれ賛成。びびるぞーアイツ」山田


売名行為かもしれない・・

ただのハッタリ・・


普段乗ったことも無いくせに、俺達はいつも乗ってるんだぜって顔で単車を飛ばす

そして白月地区に・・・


「ウォン・・」


「うおっ・・族車・・」ともや

「悪そうだな・・単車と原付で・・四人か・・」


友人と二人あのたまり場で、たむろしてるともや



「なっ!ともや、あいつ、黒北の正宗だ!」

「くっ・・」ともや


正宗が、接近してきて・・


「くくく・・何?チャリなの?くくく」正宗

「だせえ、こいつら、土曜の夜にチャリで、ジュース飲んでやがる」誠


「二人かぁ~今日?やっちまってもいいけど、今から集会だしな・・」岸


「くっ・・」ともや


見せ付けられる。ここぞとばかりに。

こいつらが、すげえ不良に見えて来る。

無免で単車まで・・・

もう一人の友も、もう、うつむいたまま

こないだ殴り合ったのに、もう異次元の不良に思えてくる・・


「いつでも来いや、黒北によっわはは」正宗

「ふ~・・」かっこつけてタバコまで吸い出す誠


「カンっ!」


「じゃあな」ともや達に飲んでいた缶コーヒーの缶を投げつける山田


原付に慣れた感じで前のめりにハンドルにもたれ掛かり、横を向きガンくれる岸


もう圧勝。

妄想、想像が広がっていく。

いつもこいつら、こんな事?

もっと、悪い事まで?




「ぶははは!」正宗

「圧勝だったな!」誠

「気持ちよかった~」岸

「最高の引退式だな」山田


ああ・・最高の引退式だ。

突き抜ける夜の風。

怖くて、地元からは、出れないけど。

いつも見るこの景色が違って見える。

カッコつけて、全員バンダナで覆面も。

途中、同じ学年のヤンキー女子を見かけて、「ようっ」

これも、普段から俺達こんな事してんだぜと、言わんばかりの慣れた感じで軽く手を上げる

明日、ヒーローだな。コクられたりもするかな?

正宗・・本当に有難う・・いつか、お前のこの背中に総長の文字が入るように・・


「しゃあ、飛ばすぞ!」正宗

「おおっ!」岸


女子が、見ていたのもあるから・・

まだ感じる視線。僅かに最後見えたのは、誰かに急いで電話してる姿

正宗達今、単車で流してたよ、あいつ等マジやべえな・・かな?ふふふ

吸いたくもないのに、またタバコを銜える。

飛ばす単車、眺める空・・月・・・自分がまるでこの街で一番の悪に思える・・

今、完全に絶頂だ俺達・・不良の喜び・・・





「ファアアアアアアアアアアン!!!」



「ギャシャアアアアン!!!!」




なんてものは、

あっけない、幕切れだ・・

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