ヤキから始まる不良人生
「・・・並べっ・・お前等・・・」
「うっ・・・」
ヤキ・・・
不良人生は、ここからスタートだと言ってもいい。
先輩に憧れて、先輩に殴られて、先輩面され続けて・・
いつしか、絶対負けられない、抜け出せない迷路に迷いこむ。
早めに負ければ、それなりに楽しい人生も過ごせる。
だが、勝って行けば行くほど、絶対に負けられなくなる不思議な迷路。
いつしか、周りから担ぎ上げられ、
先輩や仲間から地域の代表として、前に押し出され。
勝手にアイツは無茶するだとか、喧嘩が強いだとか・・根性あるとか・・
俺だって、恐いから・・・
~~~東京黒月北中学校~~~
通称・クロヅキ クロキタ
中学校を名乗る場合は、クロキタが多い。
住んでる地域を名乗る場合は、クロヅキ。
東京で、あまり名前も出てこない・・
いやっ・・現代に残るタブーというか・・
都心からは少し離れた人口密度の高い町。
東京黒月地区
顔を真っ黒にして、月を眺めたから・・黒月
家庭から立ち上る焼肉の煙で、月まで黒く見えたから・・黒月
黒い奴と、付き合うな・・で・・黒月
部落=ブラック=黒・・で・・黒月
旧炭鉱街・在日街・ドヤ街・部落・・・そのど真ん中にある黒月北中学校
小汚い、市営アパートにバラック小屋。明らかに自分の土地以上に、はみ出た建物。
極端にでかい、汚い金で儲けて立てた豪邸。勝手に商売する露天の闇市。
東京の汚点を、すべてここにつぎ込んだかのような、真っ黒な地区。
「お前出身どこだ!」
「はいっ自分、南小です!」
「南小が、何やってんだ!コラ~」
「せっ!先輩こいつ、体が昔から弱くてっ」
「・・・体が弱けりゃ、喧嘩に負けていいのか?」
「うっ・・いやっ・・」
(バカっ・・ムネやんっ・・)
ヤキ入れられる一年。
「つつ・・大丈夫か?誠?」正宗
「ごめんな・・ムネ・・俺のせいで・・」誠
同じ南小出身の幼馴染の二人。
正宗13歳 誠13歳
「誠・・お前体弱いんだし・・・もう止めとけよ・・」正宗
「・・・俺だって・・・カッコいい先輩見て育ったんだよ!」誠
体が弱く病弱で、真面目な方の部類の誠。
だが、やはり憧れる。先輩に・・不良に・・・
いつも子供の頃から見ていた不良。
仲間がやられれば、同じ地域の仲間で集り、突っ込んで行く勇姿。
地域の代表として、いつも先頭で誇り高くなびく、『総長』の二文字の特攻服。
そして、たまに行く都心の街、最前線で闊歩する地元の先輩達。
本日で、先輩から二回目のヤキ。
一度目は、ただボンタンを穿いて来たから。それでも、遠慮して細い目立たない物。
一年は、よっぽど認められないとボンタンさえ穿く事は禁止である。
許されても、先輩より目立つ物は駄目。
一年奴隷。二年人間。三年神様。
どっちみち、上に気に入られないと、一年の間は、ずっとヤキである。
昔から続く伝統である。
そして、今日は・・
「昔から、黒月と白月は仲悪いから、特別なんだよ・・先輩達も」正宗
「でも、途中でムネやん来てくれて助かったよ・・」誠
当然、変形学生ズボンを穿いていれば、他校の不良ともトラブルに。
黒月地区の隣に在る、白月地区。昔からの因縁の対決。ライバル校。
こちらの方が、まだ月が白く見えたから、白月。
黒月ほどではないが、それなりに、ガラの悪い地区。
大した腕っぷしではない誠は、白月の一年二人にすぐにやられるが、
たまたま見かけた正宗が応援に。だが、それでも引き分け。
「おいおいっ弱いんなら、ボンタン穿くなやっ」
「かはは、今年の南小は、レベル低いな」
「・・・・クロヅキの名を落とすんじゃねえよ・・」
他の一年の不良達
「くっ・・分かってるよ!俺が、きっちりもう一回カタつけに行くよ!」正宗
(ムネぇ・・)誠
同級生の不良達。
同じ学校の同級生なのに、不思議な関係になるのも分かる・・ここは・・
元々、炭鉱部落だった、西小
部落地区・在日地区・ドヤ街の南小
少しの部落地区に、ヤクザや金持ちなどが多くすむ地区の東小
簡単に書けば・・
西=悪党度30%=炭鉱部落7・在日部落3・一般90
南=悪党度80%=部落地区15・在日部落30・スラム5・一般50
東=悪党度50%=部落地区10・在日部落10・ヤクザ10・金持ち30・一般40
てな感じ。
この三つの小学校が、黒月中学校へ。
小学校は三つあるのに、たったひとつの中学校。
当然、最初の頃や、学年によっては最後まで出身小などで派閥が違う事も・・
ここは、代々、南小出身者が不良のエリートコースだが・・
「正宗っ俺も行くよ」
「俺も・・」
「当然俺も行くっ!・・うっ・・ごほっ!ごほっ!」誠、咳き込み座り込む
南小出身不良グループ。
「・・いやっ・・誠・・気持ちは分かるけど・・」正宗
「ああ・・正直、憧れだけじゃあ・・」
生きていけない不良の世界。
「くそっ!なんでこんなに・・・よえぇんだっ!俺は!」誠
自分の拳を地面に叩きつける。
「誠ぉ・・・」正宗
「くくく・・・・」
「・・なんだぁ?ヒデか・・・」正宗
新たに現れるこの男も同じ一年の不良。
「くくく・・・お前等みたいなカスが居ると、クロヅキの格が落ちるんだよ」ヒデ
「なあ・・ヒデ君も、南小なんだし・・」誠
このヒデも南小出身だが・・・
「派閥違いだよ。くくく・・並べっ!お前等!」ヒデ
「なっ!ちょっと待てやっ!なんで、お前にヤキ入れられなきゃいけねえんだよ」正宗
「俺等、今さっき二年の安さんからヤキくらったんだぞ」
「ヒデ君、それでもお互いメリットも・・同じ南小同士で、一緒に・・」誠
「バクッ!」
「なっ!コノヤロウ!」正宗
ヒデが、お構いなしで、誠をぶん殴る。
結局ヒデと、正宗・誠・あと二名で乱闘に。
「なかなかいいじゃねえか、ヒデっていうの」
「南小の二枚看板だったらしいな、あの正宗っつうのと」
「二年の狂犬軍団だろ?」
「ああ南小の部落・在日地区のグループだ」
ニヤニヤしながら見てる先輩達。
もちろん、ヒデの売名行為でもある。
先輩の見てる前で・・・
あまりにも多い不良に複雑に別れるグループ
南小のヒデグループ(5名)に、正宗グループ(4名)
狂犬軍団 二年ナンバー2と3が作ったグループである。
それに属しているヒデグループ。
「止めろ!止めろ!お前等!」教師
「もう引き分けにしとけ」教師
教師数名が乱闘を止めに入る。
「うるせえよっ先公がよっ!」誠
精一杯の強がりである。他の生徒や女子も見てる・・
実際は助かったと思っている。すでに倒れて鼻血まで出ている誠。
「ちっ・・まあ、そのポンコツだけは、不良グループに入れるんじゃねえ・・」ヒデ
「・・・・・・」正宗
「・・くっ・・ごめんムネやんっ・・」誠
正宗以外の三人は、倒れたまま。
実質は引き分けじゃなくヒデの圧勝。1対4だったのだから。
だがこのヒデでさえ、この一年では、ナンバー2である・・
正宗なんて、4つあるグループの内の最下位・・ナンバー4である。
生徒数の多い黒月の層の厚さ・・・
「最近この流れ多いよな・・・」
「ああ・・南小がトップ取れねえ・・」
「二年にしても、一年にしても・・」
「ああ・・トップが、金持ちの子の不良とはな・・」
変なパターンである。
一年と二年のトップは、数少ない、金持ち地域の出身の不良である。
「ウォン・・ウォン・・」
「おいっ!来たぜ!黒月愚連隊だ!」
「うおっ。かっけー」
学校OBが、通りすがりに単車で校内を流しに来る。
ただの帰り際の暇つぶしで、校内を単車で突き抜ける。
いい人材がいるか?クロヅキの格は落ちてないか?
無言の圧力でもある。
この地域の特徴だが、愚連隊に入るものは、中卒である事。
単車に乗るものは18歳になったら単車を引退する事。
格年代の頭は、この名門不良グループ、黒月愚連隊に入る事。
ようは、三年の最後で、このクロヅキのトップに立って無いと、
黒月愚連隊には入れない。その一番強力なグループだけが入れる。
これが、歴代と続く、名門と言われる所以である。半端者は入れない。
クロキタの歴代番長が爆撃愚連隊の歴代総長である。・・・ほぼ。
「かっけえな・・・」正宗
「ああ・・」誠
二人が見ているのは、愚連隊の中でも、一番格下のまだ16歳の男である。
だが異様に大人に見えて、かっこよく・・・
何より、憧れ・・真っ黒の特攻服に光輝くような黒月の文字
三年と二年の不良グループは、頭を下げに教室の外へ
それさえはばかられ、ただ遠くから見てるだけの一年。
「・・・なあ、正宗~・・」誠
「なんだ?」正宗
「今日、連れてってくれや・・やられたの俺だし・・」誠
「・・・ああ。」正宗
熱い憧れ。
熱い気持ち。
熱い友情。
たった、今日、先輩が校内にやって来たのが運命に感じる。
追いかけたい。
そしていつか、最前線へ。
東京の繁華街に根を張る悪党達へ。
そして白月地区へ・・・
正宗グループ4人で、昨日揉めた一年を探す。
どうせ、不良のたまり場なんていつも一緒だから、
揉めた場所で待ってれば、当然やってくる、相手グループ。
「タイマン勝ち抜きでいいか?」正宗
「くく・・いいぜ。三人づつ出し合って生き残った方が勝ちだ」白月一年
勝ってもお互い何も無い・・・あるのは少しの優越感・・
お互い分かってる・・どっちも、学校・学年じゃあエース級じゃない事を・・
だが、負ければ・・・お互い強烈な先輩からのヤキが待っている。
「俺と・・岸っ」正宗
「おおっ!まかせろ!」岸(正宗グループナンバー2)
「それと・・・頼むぞ・・誠っ」正宗
「しゃあ!クロキタぁ舐めるなやっ!」威嚇する誠
そして少し小声で話し合い・・
「・・なあ、俺、先鋒で行かさせてよ・・」誠
「・・ああ・・」正宗
「大丈夫か?誠ぉ?」岸
「・・・・・俺・・・今日で、不良・・やめるよ・・・」誠
「・・そっか・・・・一度くらい勝てよ・・」正宗
「負けたら、一度も喧嘩に勝てずに引退になるぞ・・・・勝てよ・・」岸
足を引っ張りたくない・・・
俺のせいで、ヤキくらった、正宗。
さらに他のグループにもバカにされる・・・
勝ちたい・・・あわよくば、三人すべて倒したい・・
一瞬でもいい・・
俺だって・・・
「うおおおおおお」誠
輝きたいから。