お試し期間終了
「ユナさん!」
『いやだ!死にたくない。強くなりたい・・、やるしかない』
「出でよ精霊獣、ウォーターウルフ!」
召喚されたウォーターウルフがリスントウルフを押し上げる。そして水をまとった鉤爪がりリスントウルフをなぎ倒す。
「すごい!ユナさん!」
「できたよ・・、チユナぁああ!」
嬉し泣きをしながらユナがチユナに抱きつく。
「ユナっ、頑張ったね!」
「うんっ」
太陽はだいぶ傾いている。爽やかな風が2人を優しく包み込んだ。
***
「そろそろ新たな力を、なぁ」
「はっ」
「そうだな、次は・・・」
***
「チカゲ!私やったよ!」
「本当かよ!すげぇじゃん」
「うんっ!」
ギルドで1人クエストボードに向き合っていたチカゲを席に座らせ話しをする。
「さっきなに見てたの?」
「金なくてさ、いいクエストないかなぁって。で植物採集だけで1万セリアだぜ!」
「私もついてく!報酬は1割でいいからさ」
「まぁ、話し相手が欲しかったしな。一緒に行こうぜ」
「やったぁ」
「その前に行きたいところがあるんだけど」
「いいよ!行こ」
夜の街、店の明かりが魅力的だ。
「チカゲ〜、どこ行くの?」
「黙ってついて来いよな」
「えぇ〜」
人ごみを縫うように進み2人は光り輝く店の前で止まる。
「魔石屋ミルカナ。一流の魔法石を取り揃えてる店なんだぜ」
「へ〜、なんで私をこんなところに?」
「ちょっと待ってて・・・。」
チカゲは店の中に入って行ってしまう。
「お待たせ。はい、これプレゼント」
手渡されたのは赤い魔石のついた指輪だった。
「俺もつけてるんだけどかっこいい目印にもなるしだいたいの位置確認もできるから」
「すごいっ、ありがと」
「どうする?もう帰っちゃう?」
「うん、私早く寝る方だから眠い」
「そっか、俺はもうちょっとふらつくけど1人で帰れる?」
「もちろん!」
「じゃあ、また明日。ギルドに荷物もってきてね、数日間は帰れないから」
「うん、今日はありがとう。じゃあね」
ユナを見送りチカゲは当てもなく街を歩く。
夜は昼とはちがった店が立ち並ぶ、若干飲食店が多い。
家族で食事をする者、単にショッピングを楽しむ者などで街は
ごった返している。
「こっちに来て」
突然、白いワンピースを着た女の子に手を引っ張られる。
「ちょっ、君は?」
「誰でもいい、でも私はあなたを知ってる」
そのまま人ごみをかき分けながら数分間走る。
ハァハァ
「ここ、私が1番好きな場所」
そこは丘の上の公園のような場所で、そこから街を一望できる。
「ここにはね、昔、不死鳥が住んでいたらしいの、今はここのどこかに封印されてるんだって」
「えっ・・・」
「私が誰だか知りたい?だったら進むべき道をちゃんと進んで。そうすれば私が会いに行く。」
「進むべき道ってなんだよ?!」
「不死鳥は人に命を授ける。火を極めし賢者にしか呼べないけどね」
「なんなんだよ!」
「じゃあね」
少女は闇に歩き去ろうとする
「まてよ、こんなとこまで来させて・・」
『うっ、動けない・・・』
正確には動けないのではなく何かに押し返されている気がする。
しばらくして威圧感が消える。
「あの子は・・」
***
翌日、必要最低限の荷物をカバンに詰めた2人がギルドで最終確認をしながら朝食をとっていた。
「なあ、ユナの友達に白いワンピースが似合う小さい女の子っている?」
「いないいない。小さい子の知り合いなんて親戚しかいないから」
「そうなんだ」
「どうして?」
「いや、なんとなく」
チカゲは朝から長話はしたくなかったので話さなかった。話してもユナには関係がない事だ。
食べ終わった2人はチユナに当分帰れない事を伝える。
そして朝の清々しい風を浴びながら目的地に向かう。
「依頼主にはもう話してあるから」
「へぇ〜、準備いいじゃん」
「俺はやるときはやるんだよ」
「あっそ、でどこ行くの?」
「離れ小島リリーピアス、安全な場所って聞いてる。そこで野草採集」
「簡単だね」
「うん」
潮の匂いがしてくる。遠くに船と広大な海がみえる。
「船で行くんだ!私初めて!」
「そうなんだ!吐くなよ?」
「大丈夫!」
直感で酔わないと断言したユナ初めての船に期待を膨らませる。が
期待はよく裏切られるものだ。
「どの船?」
「それだよ」
"それ"という言葉に違和感を持ちながらも視線の先をみる。
「えっ?ボート!?」
「大丈夫!スキル使えばこっちの方が速いからさ」
「本当?」
「大丈夫だって、乗ろ」
揺れるボートにバランスをとりながら乗る。
「じゃあユナ、よろしく」
「えっ、私?!」
「報酬半分あげるから」
「も〜、わかったよ!」
水系魔法を後方の水面に噴射しボートを進める。
大海原を小さなボートが走る。
「疲れたよぉ」
「・・・」
「寝てる?」
「寝てる」
「はぁ・・」
さっきからボートがまっすぐ進まない、壁にあたっているようだ。
しばらくすると島が見えて来るがそれがリリーピアスじゃない可能性の方が高いのでボートを止めチカゲに話しかける。
「島はどこ?」
チカゲはボートで横になったまま口を開く。
「見えてるだろ?」
「えっ?」
「空間歪で空間を歪めて線路を作ってた。このボートはその線路の上を走っていただけだ。あと俺の方が疲れた」
「ありがと」
上陸した2人は砂浜に寝転がる。
「何をすればいいの?」
「傷を癒す薬草をカゴいっぱい集めてこいだって」
「私、薬草わかんないよ・・・」
「大丈夫、依頼主から薬草のサンプルもらったから」
「ふぅーん」
「ちょっと休憩しよ」
「うん」
2人の意識は次第に薄れていった。
***
「チカゲ!起きて!」
「なんだよ・・」
「島が燃えてる!!」
「はぁ?・・。えぇええ!」
炎のなかから6つの人影があらわれる。
「我らは六道呪慶」
「六道呪慶って?」
「マスター格の力を持つ重罪を犯した犯罪者ばかりを集めた戦闘破壊集団。金と感性で動く危険な奴ら」