ケンカするほど仲がいい?
男子2人も同様の事を口にする。
「いや、皆さんの様子を見に来たんですよ」
「見にって」
チカゲの顔が疑問で歪む。
「モンスターは出ました?」
「まだですけど・・」
「そうですよねぇ!!私の護衛が一掃しましたからね!」
「は?」
「堕天使・ルシファー。私の最強の護衛にリヴァイアソサエティーをお引きだせと言われたもんでね」
老人の後ろから黒い体に白い翼が生えた堕天使・ルシファーが現れる。
「レイスを差し出せ」
「ばっかじゃねぇ〜の?!」
「無力は憎い、なぜ抗う?弱き者よ」
「正当な理由があれば別だがな」
「そこにある賢者石とレイスの持つ賢者石の力を利用し私が天使に舞い戻るためだ」
「自己中なやろうだな!」
「ならば、力ずくで吐かせるのみっ!」
「ユナは魔法で防御してろ!」
「あとは俺たちにまかせろ」
言い終わらないうちにルシファーの後ろ回し蹴りがサチヤに襲いかかる。
「確かに、雑魚は憎いな」
攻撃がルシファーの呻き声と共に止まる。
「俺の闇魔法は急激に物体を衰退させる。そして光は急激に活性化させる。要するに高速な変化は生物にとっては苦しみとなる」
「うわぁああ!」
地面に倒れる鈍い音がする。あまりにもあっけない戦いに声がでない。
「で?依頼主さんはどうするの?」
「っ!くそっ」
老人は異常なほどの身軽さで山を降りていってしまう。
「追わなくていいの?」
「あぁ、追ってもしょうがないだろ?」
「っにしてもユナの初クエストがこんなに薄っぺらい内容でいいのかよ?」
「そうだよ!私もスキル覚えたかったしさぁ」
「じゃあ、朝までモンスター狩り手伝ってやるよ」
「本当?!サチヤって優しいんだね!」
「チカゲと一緒にされては困る」
「てっめぇ!」
そのあと結局三人で朝までモンスター狩りをする事になった。
白い翼の犬や見習い天使などをユナを主力に倒していく。とどめをさすと加護ボーナスが高い、なのでスキル習得の近道となる。
「そろそろ終ろっか」
「もういいのかよ?」
「スキルは覚えたのか?」
「まだだけどみんな疲れてるでしょ?」
「逆に聞くがユナは疲れてるのか?」
「えっ?・・・疲れてない!」
「光の活性化だ」
「すげぇよな〜」
「スキル習得は同属性のモンスター1000体分の力がいる、だからあと半分だ」
「ほんっと、ありがとっ!」
朝日が昇る、それを拝みながらスキルを確認するためウィンドウを開く。
スキル欄にはユナの魔力増加を感知したようで精霊召喚が追加されていた。
「サチヤ、召喚系ってどうすれば発動できるの?」
「物体に手をついて魔力を手に集めて力量に合った精霊の名前を叫べばできるあとは思考で操作できる、精霊の名前は本を貸してやるから勉強しろ」
「てかさぁ、なんでサチヤってそんなに頭いいんだよ?!」
「ほっとけよ!」
「・・・、ちょっ、なんで切れてんだよ!」
「ねぇ、2人ともやめてよ」
「悪いが俺は先に帰らせてもらう」
そういうとサチヤは後ろを向き歩き去っていってしまう。
「なんなんだよ・・」
山を下りた2人はギルドに向かう、ユナの勉強をするのだ。
「ユナってサチヤの事どう思ってる?」
「どうって、好きだよ?友達として」
「そうなんだ・・、サチヤがいたらさ、教えてくれない?」
「うん、わかった」
「チユナ!次の説明頼む!」
「おっけー!」
遠くから声が返ってくる、すぐにチユナがこちらに走ってくる
「チユナさんに悪くない?」
「大丈夫大丈夫!あいつはこれが仕事だから」
「ユナさん、こんにちは!初仕事はどうでした?」
「楽勝!サチヤのおかげで・・」
「へ〜、朝は忙しいので説明始めていいですか?」
「ごめんなさい、お願いします」
「えっと、2つ目の説明は技について。ユナさんも水系の魔法を使えるみたいですけどただ水をかけるだけじゃ冷たいだけでダメージは無いです。ではどうするか、例えば水に殺傷力を与えてください、と言ってもわかんないですよね?なので同じスキルを扱う先輩に教えてもらうのがいいと思います」
「そうなんですか、でもまだここの人の事知らないしな・・」
「私でよければ、一応水と精霊は扱えますので」
「本当?嬉しい!」
「じゃあ、お昼を食べ終わったら私、カウンターにいますので来てください」
「はーい」
初めて食べるギルドでの昼食、たまに喋りかけられるが話は続かない。なのでチカゲと食べる選択肢しか残されていなかった。さすがに一人は寂しい。
「チカゲもなんか技使えるの?」
「まぁ、数十種類はな」
「えっ、すごいじゃん!」
「師匠に恵まれてたからだよ、その中にユナの父、オグマも居た」
「本当?そんな事話してくれなかった!」
「話す理由がなかったんだろ」
「そうかなぁ」
「ユナはさ、何を目指すの?」
「えっ?」
「目標だよ、なんてなく戦うとかつまらねぇじゃん?!」
「うん、でもそんな事考えた事もないな」
「俺はさ、地獄の奥深くに捕らわれた父親を助けたいんだ」
「えっ、それって」
「俺の親父は悪くない!黒幕が絶対いるはずなんだ!だから・・」
「チカゲ・・」
「急にごめんな。食い終わったみたいだしチユナのとこ行ってこいよ」
「うん」
静かに立ち上がり食器を持ってチユナのもとに向かう。
チユナは笑顔でユナを迎えたが笑う事ができない。
「チユナさん、チカゲになにがあったんですか?」
「私はわからないの、知ってるのはマスターだけとか・・」
「そうですか」
「なにかあったんですか?」
「チカゲがなにか思い悩んでいるみたいで」
「そういうときはほっといてあげてください。それより技の特訓!水系魔法と精霊召喚の技を一個ずつ教えるので今日中にマスターしてください」
「はいっ!」
「じゃあオグマさんの練習場所に行きましょう」
ユナが死にかけた草原、そこに2人は足を踏み入れる。
「まずは水系魔法からです。スライサーと言う技でマスターすれば大木一本を切断することもできます」
「あっ、それだったらできますよ!」
そういうと近くに生えていた木 数十本を水の刃で切断してみせる。
「おぉ、すごいですね!じゃあ今日は精霊召喚をマスターすれば終わりですね!じゃあ、ユナさんに合った精霊を・・・」
チユナが古びた分厚い本を開く。
「ウォーターウルフですかね、水系魔法で強化もできますしね。中級精霊族ですが頑張ってください、コツは魔力量と維持です。召喚の仕方はわかります?」
「それはサチヤから聞きました!」
「ではどんどんやってみてください、私が後ろからアドバイスしてくので」
地面に手をつく。
「じゃあ、出でよ精霊獣、ウォーターウルフ!」
魔力がユナの手に集まりそれが地面に華麗な術式を描く、が魔力が乱れ体が吹き飛ばされる。
「魔力量をあと15%増やして、魔力は一定に!」
「はい!」
意外にも魔力を一定にするのは難しく数時間の間、ほとんど休憩を挟まずに特訓は続けられた。
「もうちょっと!」
「ハァハァ、はい!」
特訓の成果が現れウォーターウルフの幻影が現れ始める。
「じゃあ、最後に」
「えっ?まだ・・」
「出でよ精霊獣、リスントウルフ!」
ユナが殺されかけた思い出のあるリスントウルフがチユナの召喚によって現れる。
「リスントウルフ!そこにいる少女を踏み潰しなさい」
リスントウルフが巨大な前足を振り上げユナを踏み潰そうとしてくる。
『もうだめだ、怖い・・・』