リヴァイアソサエティー
自信作です(笑)
最初だけ連続投稿です。来週から3日に一回の更新予定。
「ユナ、お前も今日で15歳だな。おめでとう」
夜の暗い部屋のロウソクが手伝って父親の声がいやに温かく聞こえる。
「なに急に、気味悪いからやめてよ」
体を少し引きながらも興味の色を見せる。
「ちょっと手だせ」
言われるがままに手を預ける。
急に手を握られる、驚いたがさっきから変だったので突っ込まない事にする。
手を名残りおしそうに放す。
「指、鳴らしてみろ」
「さっきからなに?」
「いいから!」
『なによ!!』
だが父親の初めて見せる切羽詰まったかのような悲しげなような顔をみたユナの苛立ちは吹き飛ぶ。そして言われるがままに指を鳴らす。
パチンッ
すると前触れもなく手の届く位置に大きな半透明のウィンドウが現れる。実体があるようで父親がおもむろにウィンドウに触り出す。
「これには生活に役立つ情報がたくさん載ってるからな」
「ちょっ、急になに?」
「あぁ、いやいや。すまん。実は15歳になるとみんな巣立ちをするんだ」
「本当急ね!」
「いや、別に強制じゃないぞ?母さんと父さんと一緒に暮らしたければそれでいいぞ」
遠回しに出てけと言われている気がする。
「わかったわよ!明日には出てく」
「おぉ、そうか?じゃあ明日行くときに声かけてくれよ。プレゼントがある」
「はあ・・」
いきなりの事に戸惑いながらも眠りにつく。
翌朝、眠たい目をこすりながら父のもとにおぼつかない足取りで向かう。
「おはよ・・」
「おぉ、起きれたのか!」
「一つ聞いていい?」
「なんだ?」
「子供が出てくときって親にとってはもっと重大な事と言うか」
言葉がみつからず話が途切れる。
「会おうと思えば毎日でも会えるしな」
「はぇ?」
「大丈夫、そんな事はしないから。それで本題に戻るぞ?」
頷きで返す。
「プレゼント。一応家宝だから大切にしてくれ」
そう言って手渡されたのは赤い宝玉のついたネックレスだった。
「これは?」
「フニアと言ってな、ユナのスキルに合わせた加護を与えてくれる」
「そうなんだ」
「スキルは努力で勝ち取るものだ」
「うん」
それから身支度をすませる。
「じゃあね」
「おぅ。あっ、あとウィンドウも高いんだから大切にな」
『これ売ってるんだ!』
家をでたが目的がない。ギルドに入るのが無難だが・・・。
取り敢えず力だめしだ。死にたくもないので少し戦い方を探ってみようと思い近くの草原兼父の練習場所に行ってみる。
物心つく前から昨日まで頻繁に父親に連れてこられ仕事をみせられた場所。
家からすぐの場所にあり周囲は木々で囲まれており、草原と呼べる部分には若緑色の草が一面に敷かれている。
ユナは水系の魔法なら扱えるので
だいたいの敵なら倒せるはずだ。
ダッダッダッダッ
重圧感のある足音が聞こえてくる。
さっそくモンスターのお出ましのようだ。
ユナの前方数10mのところに砂煙をあげながら少し滑って止まる。四足歩行の巨大な犬、父が戦って負けたので覚えている、「リスントウルフ」だ。
ウルフの代表と言えばこいつだ。特殊な能力はないがユナでは歯がたたない。
振り下ろされた前足をなんとか、サイドステップでかわす、が姿勢を崩し倒れてしまう。だがウルフはお構いなしに前足を振り下ろす。
『そんな、こんなに早く死ぬなんて』
キィーン
金属音、つむってしまった目をゆっくり開けるとそこにはユナと同じくらいの年齢の少年が片手の刃が半分程しかない太刀でウルフの片足を受け止めていた。
太刀は黒い煙りと共に完全な形になる。
少年は無言のまま刀でリスントウルフを跳ね返す。そのまま地を蹴りウルフを追いながら腹に刃を食い込ませる。
ウルフは吹き飛び動きを鈍らせる。だがまだ立ち上がろうとする、がなにかの圧を受けたように地面にひれ伏す。
「大丈夫かよ、びびりすぎだな」
「はっ、初めてだったのよ!でも、ありがと」
「あんたにとってここは危険だ街で話しを聞くよ。俺はチカゲ、あんたはユナだな?」
「なんで知ってんのよ」
「話はあとあと、行くぞ」
無言のまま歩き小さなお城と見間違える程立派な建物まで案内される。
「ギルド「リヴァイアソサエティー」、名前くらいは聞いたことあるだろ?」
「高レベルの戦闘依頼を主にこなすトップギルドでしょ?」
「んじゃ、中行くぞ」
「ちょ、ちょっと」
無理やり手を引かれる。大きめの扉が開くとそこにはパーティー会場のような雰囲気が建物全体に漂っていた、
日常風景のようだが。
巨大なクエストボードと休憩用の席が沢山、カウンターでは有料で飲食物が買えるようで酒や食べ物がそこらじゅうに溢れている。
「マスター!」
チカゲが当てもなく叫ぶ。
すると上から人間が降りてくる、おそらくマスターと思われるがローブで体全体が隠れているので確認できない。
「チカゲ、その人は?」
意外にも声は幼く冷たい。
「オグマの娘、ユナです」
「それで?」
「オグマさんから娘をギルドに迎えてやって欲しいと」
「あぁ、聞いている。ユナ、よろしくな。世話役はチカゲに任せる」
「はあ〜、なんでだよ」
「えっ、どういう事??」
「ユナは今日からリヴァイアソサエティーの一員だ」
「そんなの聞いてないよ」
「父親に言えよな」
「そんな事言われたって・・」
「もう遅い!残念だったな」
「嬉しいけどさ」
『素直じゃねぇなぁ〜』
「取り敢えず説明だ、説明は・・」
「私、受付嬢のチユナです。このギルドをまとめるのはマスター「レイス」、彼の力は未知数ですが確実に強い。その力にはさまざまな力が惹きつけられ今やギルドを管理する「ウィルオウィプス」にも認められるギルドに成長しました。ここまではいいですか?」
「うん」
いきなりの展開で驚きを隠せない。
「次はスキルです、ユナさんは水系の魔法の一段階を使えるんですよね?目標は3種の攻撃系スキルを覚えてください。ちなみにスキルは一段階、二段階、確認されているなかで最高は三段階に進化します。チカゲは全部サニアだけどねぇ」
「うっせぇ!」
「では失礼します。」
何事もなかったかのように去って行く。
「あらためて、俺の自己紹介。名前はウルシ チカゲでスキルは全部サニアだが剣と炎を扱える、あと空間歪」
「私は・・」
「知ってるからいいわ、それより欲しいスキルとかある?」
「召喚系?とか」
「じゃあ聖域系のクエストに行くか・・。ちょいまち」
クエストボードに歩いて行きクエスト用紙を破り取る。
「俺がやるからユナは出来るだけ多くサポートして」
「わかったっ」
「今から行ける?」
「うん、もちろん」
「まじで?」
「まじで」
「いやさ、だっるい。まじ無理、家帰って逆立ちの練習しねぇーと」
「言い訳下手だね〜?てかなぜに逆立ち?」
「マイブゥ〜〜ムッ!」
グダグダトークはユナの呆れによって終わる。そしてチカゲとユナは聖域・アトランティスを目指す。
ギルドの北東に山がありそこを皆は聖域・アトランティスと呼ぶ。
依頼主の家はその西にあった。
コンコン
ドアをノックする、となかから招き入れる意を示した声が返ってくる。
ゆっくりドアを開けるとそこには温かな光を放つ暖炉がありその傍らに老いた男性がイスに腰掛けていた。
「クエストの件で来ました、リヴァイアソサエティーです」
「お待ちしてました、さぁどうぞ座ってくださいな」
男性の目線の先にはソファーが置いてあったが長居するつもりはなかったので無理やり話しを続ける。
「それで依頼内容は?」
「はい、聖域・アトランティスに保管されている賢者石を盗賊が盗むと予告状が来まして・・」
「守れと」
「はい。ですが盗賊は私の護衛でもなんとかなるのですが厄介なのはモンスターで万が一の事を考えて戦闘ギルドに依頼しました」
「りょーかい。で、いつ盗賊が来るの?」
「今夜です。」
「じゃあ、夕方からにでも護衛開始しますんで」
「ありがとうございます」
老人の家をあとにする。
夕方、太陽がオレンジの輝きを放ち景色により一層の感動を与える時、2人は山の頂上にある祠の前に居た。
「そう言えばもう一人、ちょー強いやつが来るから」
「誰それ?」
「サチヤっつースカしたやつでみんなには天才天才・・。俺のライバル」
「はぁ、そうなんだ」
「いつもはなぜか俺とそいつでやってたんだけどな」
「ごめんね」
「は?」
「2人の邪魔しちゃってさ」
「助けてやった恩を忘れたのかよ」
「ちゃ〜んと覚えてるよ、いつか返すからね」
「あっそ」
それにしても山の中で2人っきりと言うのは気まずいものだ。
「よぉ、サチヤ!こいつはユナ、オグマの娘だよ」
突然チカゲが喋りだす、驚きながらも視線の先を確認する。
「よろしく」
言葉を発したのはチカゲと同い年くらいの少年だった、ユナも挨拶を兼ねた自己紹介をすませる。
それからしばらく盗賊を待つが一向に現れない、がなにかが近づいてくるのを感じ三人は身構える。
周囲は太陽が沈んだため暗闇となっていた、月明かりが頼りとなる。
っ‼
ユナが咄嗟に口を開く。
「依頼主さん!こんなところで何をしてるんですか?!」
現れたのは依頼主本人だった。