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ルビナンス戦記  作者: たま。
第1章・転生篇
9/13

#6 パラシュートなしの降下もきっと良いものだぞ?

主人公ヒロの父シグライトと仲間達の話です。


――――ルビナンス聖暦3815年11月25日AM02:45

――――試作飛甲母艦「アマリス」作戦会議室



「………以上が、作戦概要だ。

何か質問は?」


一人の若い騎士が手を挙げる。


「生まれたお子さんは、男ですか女ですか?」

「…作戦の質問はあるかと聞いたんだが?

まぁ、良い。男だ」

「おお」


作戦前だというのに緊張らしきものがないこの騎士団は、シグライト=エルウイッシュが率いる新型機運用試験を主とする特別編成の騎士団だ。

他の騎士団に行けばエースや騎士団長になってもおかしくない者達の集まりでシグライト自らスカウトした。

現在、2機種の運用試験真っ最中で、1つは次期主力装甲機として決定している装甲機ベオウルフを様々なセッティングで試験をしている。

まだ聖アルゼルフ王国という国名だった時に、滅亡の危機から国を救ったとされる伝説的な魔甲機ベオウルフから名前を拝借したパワー重視の装甲機だ。

もう1つは各騎士団の団長専用として開発されている装甲機アルトリウスで運動試験の真っ最中だ。

こちらは、ベオウルフと違い試作機1機だけで試験が始まったばかりなのが窺える。

遺跡から発掘されアルゼルフ帝国繁栄の切っ掛けとなり、現在は皇帝専用として運用されている装甲騎インペラトールを参考に防御寄りの万能装甲機として開発している。


「シグライト様」


今度は30過ぎの騎士が手を挙げる。


「ん、何だ?言ってみろ」

「はっ。まだ国家機密段階のベオウルフお披露目して良いんすかね?」

「良くはないだろうな」

「それに、アルトリウスなんてシークレット中のシークレットじゃないすか?」

「……見付かった場合、味方だろうが敵だろうが始末しろと上は言っている」


ベオウルフは、一般人を除いて騎士団関係者なら誰でも知っている事だが、アルトリウスは、シグライトの騎士団と開発局の関係者しか知らない。

無闇に装甲機を開発していると他国を刺激する可能性があり、発表は極力控えられている。


「マジっすか!?」

「無茶苦茶ですね」

「ま、仕方ねぇだろ。俺達の存在を他国に知られる訳にはいかないんだしよ」

「そういう事だ。まぁ、偽装をするから最終手段だな」

「先程も言ったがセドを中心に情報収集の方を頼む」

「「「「「了解」」」」」

「解散!」


作戦会議室から6名の騎士が後にし、装甲機の整備の為に格納庫の方へ向かう。

会議室のあるフロアから下へ4階ほど下りると格納庫がある。

アマリスは、8m弱の装甲機を最大で12機格納できるスペースを持ち戦場での作戦司令室としての役割を持てるように様々な施設を入れた飛甲艦として現在試験運用中だ。

飛甲機が主力戦力であるイグライト王国では、すでに何隻も運用されている飛甲艦だが、アルゼルフ帝国ではこの艦が初となる。

将来的にアルゼルフ帝国の旗艦になる予定だ。


「いつも思うんですけど、何でいつも副団長じゃなくセドリックさんが中心なんですか?」

「だははは、ワシは力仕事専門だからな。情報収集は好かん!」


実際、装甲機での殲滅力だけなら右に出る者はいない。

生身での戦闘力も帝国内で上位10名の中に入る程だ。


「そこ笑うところじゃないと思うのですけど…」

「とはいえ、久々の生身で仕事っすなぁ」

「ロニー…分っていると思うが情報収集だからな。ナンパしに行く訳ではないぞ」

「分ってるっつうの!それに、セドは堅すぎなんだよ」

「そんなに女が好きなら、すぐそこに美人がいるじゃないですか…」

「うげぇ、エミリアの事言ってるのか?年増女にゃ興味ねぇよ」

「………私こそお断りだ。それと…だ・れ・が年増女だ?

…パラシュートなしの降下もきっと良いものだぞ?

私はやった事がないからな…お前が羨ましい」


エミリアと呼ばれた騎士は、額に青筋をたてながらロニーの顔面をアイアンクローで鷲づかみにしエレベータまで引き摺っていく。

彼女はこの世界では珍しいエルフの女性で、誰がどう見ても美人と評する。

シグライトが生まれる前からアルゼルフ帝国に所属し、シグライトの父で現在装甲機開発局の局長であり装甲機の生みの親であるライオット=エルウイッシュの護衛を勤めていた程の大ベテラン騎士だ。


「ぅいてててててて…ちょ、ま…。だ、誰か助けてくれぇ」


アイアンクローは、格納庫へ向かうエレベータ内でも引き続き行われている。

シグライト、セドリック、ロニーは、所謂幼馴染と言う間柄でライオットからの頼みでエミリアは3人の世話役になっていた。

その事からロニーを除いた2人はエミリアに逆らえない。

そして、ロニーにお仕置きをするエミリアの構図は毎度見る事が出来る光景だ。


「毎度毎度、懲りないですね」

「自業自得だ」

「すまない。私ではフォロー出来ない」

「だはは、ワシも混ぜて貰って良いか?」


他の4人には見慣れた光景のようで、ロニーを助けようとする者は誰一人いない。

内一人はそれに混ざろうとする筋肉バカもいるぐらいだ。


「混ざんな。助けろよ。いえ、助けて下さい副団長」

「仕方ねぇ。そろそろ放してやれ」

「チッ」


エミリアは、舌打ちと共にロニーの顔面を鷲づかみにしていた手を放す。

ロニーは、操り人形の糸が切れたように地面へ倒れた。

エレベーターが格納庫フロアに着くが、他の騎士は倒れたロニーを横目で見つつ何事もなかったかのように降りた。


「何をしている。また上にでも行くつもりか?」

「ぃっっ…って、あんたがやったんでしょうが!?」

「あんた?」


エミリアは、エレベーター内のパネルを操作し艦橋フロアのボタンを押した後閉じるを押して格納庫に向かう。


「ぇ、ちょ、まっ…」


当然、ロニーはそのまま艦橋フロアまでエレベーターで運ばれていった。



◆◆◆


「各自装備確認!」


副団長こと筋肉バカもといジャフリーの声が格納庫に響き渡る。


「帯剣!」

「「「「「確認」」」」」

「地図!」

「「「「「確認」」」」」

EPSエーテル・ポジショニング・システム

「「「「「確認」」」」」

「通信機」

「「「「「確認」」」」」

「パラシュート」

「「「「確認」」」」

「あれ、俺のパラシュートは?」

「よーし、全員大丈夫だな」

「え、ちょ?!」

「降下準備!」

「ふ、副団長!俺のパラシュート見当たらないんすけど?」

「さっき、エミリアがお前に渡すとか言って持っていったぞ」

「え…エミ…リア……姉ぇ…が…?」


ロニーはエミリアの姿を探すが、格納庫内には見当たらない。

エミリアならエレベーター内で言った事を言葉を実行する可能性があった事から必死に探した。

昔からエミリアのお仕置きはハード(というか鬼畜)で尽く有限実行されていた。

シグやセドが冗談で提案したお仕置きさえ実行するほどだ。

サバイバル訓練の際、水なしで荒野に放置された事があった。

装甲機の耐久テストで当時”鋼鉄の棺桶”と称されたゼルフィスの装甲と同程度の鉄板を持たされ銃の的になった事もある。

コクピットと同じ高さから突き落とされた事もある。

ロニーは、その時の恐怖が蘇る。

パラシュートなしの降下は洒落にならない。


格納庫からカタパルトへ向かうゲート隅にある出入り用扉が開いている事に気付く。


「間に合ってくれええぇぇぇ!」


扉を出るとロニーのパラシュートを片手で持ち、今にも落とそうとしているエミリアがいた。


「ちょちょちょ、待てぇぇぇ!」

「?」

「?…じゃねぇぇええ」


エミリアは持っていた手の指を1本2本と外していく。


「はわあぁぁ!ま、待って下さい。エミリアお姉様。お願いします。この通りです」


ロニーは必死に土下座を繰り返す。


「エミリア、冗談はそこまでだ」


副団長ジェフリーがエミリアを制止する。

それ以外のメンバーもすでにカタパルトに出ていた。


「それはそうね…」


ロニーがほっとしたのも束の間、エミリアはパラシュートを手放し慈悲も無く落下していく。


「うそん!?」


ロニーはパラシュートを追って飛び込み、その後に続いて他の者も降下していった。


「ロニーさんもエミリアさんも加減ってないんですかね?」

「有ったら毎度毎度繰り返さんだろ…」

「それもそうですね…」

しばらく続きます。

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